2022年の物故者

 このシリーズも3年目になる。

2021年の物故者 - トムジィの日常雑記

2020年の物故者 - トムジィの日常雑記

 自分が歳を重ねるごとに、自分の見知った著名人がどんどんと亡くなっていく。自分にできることは個人的な記録として記憶し、書き留めておくことくらいだ。いずれ自分も何もかも忘れてしまい、そう遠くない時期に彼らの側にいくことになる。

 朝日新聞12月31日、19面「2022年亡くなった方々」よりチョイスした。

 1月 1日 池明観チ・ミョングァン)(97)

雑誌『世界』に連載された「韓国からの通信」の著者、「T・K生」だった。当時の「世界」編集長安江良助の依頼で、当時軍事政権下にあった韓国から持ち出された資料や関係者の証言、聞き取りをもとにアンカーとして原稿をまとめた。

 1月 7日 シドニー・ポワチエ(94)

黒人初のアカデミー賞主演男優賞(「野のユリ」)受賞者。白人が認める良き黒人のイメージを体現した俳優だった。

シドニー・ポワチエ死去 - トムジィの日常雑記

 1月 9日 海部俊樹(91)

元首相。小沢一郎が「御輿は軽くてパー」と揶揄した張本人である。日和見的な部分もあったが、彼の政権下で選挙改革や湾岸戦争停戦後に掃海艇を派遣した。三木派の自民党内にあってはハト派の政治家だった。

 1月10日 水島新司(82)

球漫画のパイオニア。「ドカベン」「野球狂の歌」「「あぶさん」など。長期連載で1試合を長く延々と続けた。ある意味究極のマンネリズムの人だったか。

 1月12日 ロニー・スペクター(78)

ロニー・スペクター死去 - トムジィの日常雑記

 2月 1日 石原慎太郎(89)

東京都知事環境庁長官、運輸相などを歴任したタカ派の論客。芥川賞作家で「太陽の季節」は一大ブームとなった。参院選に最初に出馬したときは300万票くらいとったのだろうか。ある意味タレント議員の走り。晩年はタカの重鎮のような存在になったが、基本は軽量級。大人然とした弟に比べると、頻繁に瞬きを繰り返すところなどいかにも小物っぽい印象だった。

三島由紀夫に叱られ、タカ派若手集団青嵐会結成に参加したが、多分田中角栄にチョロチョロするなと叱られるようなチンピラ議員だった。本人にとっても日本にとっても悲劇だったのは、この男を叱るような重量級の保守政治家がみんな死んでしまったことかもしれない。尖閣問題はこの人が都知事の時に東京都が購入するなんてスタンドプレーをしなければ、存在しなかったかもしれない。国益を顧みない男だった。

 2月17日 松鶴家千とせ(84)

「わかるかな、。わかんねぇだろうなぁ」

 2月20日  西郷輝彦(75)

橋幸夫舟木一夫とともに元祖御三家だったアイドル。一番ポップス寄りの曲が多かったか。俳優に転向してから一番印象的だったのは、NHK大河の「独眼竜政宗」だったか。

 3月 3日 西村京太郎(91)

鉄道もののトラベルミステリー。とにかく売れた。自分が書店員となった80年代頃、まさに破竹の勢いだった。

 3月14日 宝田明(87)

往年の東宝の二枚目俳優。加山雄三がトップになる以前はこの人が若手二枚目男優の頂点だったか。その後「ゴジラ」をはじめ特撮映画にも多数出演。舞台ではミュージカルスターとしても活躍。当たり役は「マイ・フェア・レディ」のヒギンズ教授。

 3月17日 佐藤忠男(91)

映画評論の草分け的存在。定時制高校に通いながら工場労働者として勤務する傍ら雑誌『映画評論』に映画評を投稿。鶴見俊輔の絶賛を受けるなどして上京。『映画評論』や『思想の科学』の編集の傍ら、映画評論を確立した。この人の評論はよく読んだし、様々に影響を受けた。いわゆる映画の見方はこの人の評論から学んだところ大きい。

 3月27日 野田知佑(84)

ツーリングカヌーの第一人者にしてエッセイストとしても活躍した。『本の雑誌』に集うライターの一人であり、椎名誠らとも交友があった。80年代のどこかで勤めていた出版社が、この人のエッセイを出版したことがある。この人の本がよく売れていた頃で、多分所刷りは2万だったと思う。今ではちょっと信じられない部数だ。

 3月28日 菊池信義(78)

装丁家の第一人者。ある時期、装丁といえば平野甲賀かこの人みたいなところがあった。あと思い出すのは和田誠桂川潤、ちょっと古いけど田村義也などなど。みんな死んでしまった。

 3月30日 宮崎学(76)

グリコ・森永事件のキツネ目男に似ているとして重要参考人扱いされた。代表作『突破もの』は友人が「これ面白いぞ」と持ってきた。一気読みしたが実際メチャクチャ面白かった。早稲田大学時代、共産党の武闘派組織のキャップを務め、核マルなどと内ゲバに明け暮れていたとか。

 3月31日 山本圭(81)

ドラマ、のちに映画にもなった「若者たち」を覚えている。インテリな優男風な役柄が多かっただろうか。

 4月 1日 見田宗介(84)

社会学者。『現代社会の理論』など著作多数。一方で真木悠介ペンネームでも執筆している。書店にいる時に『気流の鳴る音』を品出ししようとした時に、これ見田宗介が書いてるんだぞと教えてくれたのは、同僚だったか先輩だったか。

 4月 5日 白川義員(87)

山岳風景を得意とした写真家。マッド・アマノがこの人の写真にコラージュしたパロディ作に対して訴訟を起こした所謂パロディ裁判では、この人が勝訴したんだったか。

 4月 6日 藤子不二雄(A)(88)

藤子不二雄の片割れ。「忍者ハットリくん」「怪物くん」「笑ゥせぇるすまん」などブラックな笑いを得意とした。個人的には明るい笑いの「おばQ」「パーマン」などの藤子不二雄(B)の方が好きだったかも。もう二人とも逝ってしまったんだね。

 5月 1日 イビチャ・オシム(80)

ジーコの後の代表監督。ユーゴスラヴィアの代表監督としては実績があったけど、日本ではどうだったのだろう。彼が監督を務めたジェフは確かに面白いチームだったし、運動量豊富な選手をよく使った。でもその後のジェフの低迷、日本代表でもさほど実績があった訳ではないが、その語録が売れて知将というイメージが定着していた。

 5月 3日 渡辺裕之(66)

二枚目俳優。CM「ファイト・一発!」の人。当初死因は発表されなかったが、縊死であることが判った。心を病んでいたという。

 5月 8日 金芝河(キム・ジハ)(81)

韓国の詩人。朴正熙独裁政権下に弾圧され投獄していた。7年に及ぶ獄中生活の後釈放され、以後も詩作、執筆活動を行う。思想的には進歩派というより中道だったようで、晩年は自らを投獄した朴正熙の娘朴槿恵を支持したとも。時代は変わり人も変わる。

 5月10日 早乙女勝元(90)

作家、東京大空襲を記録することに生涯を捧げた人。

 5月11日 上島竜平(61)

お笑い「ダチョウ倶楽部」のメンバー。軽妙な笑いの人だったが、定着したイメージから脱っすることの出来ないことに悩んでいたのか。この人も自死である。

 5月17日 ヴァンゲリス(79)

シンセサイザーを用いた印象的な作曲。映画音楽では「炎のランナー」「ブレードランナー」が忘れることができない。

 5月23日 武者小路公秀(92)

国際政治学者。その名前からもわかる通り家柄、血筋が日本のエスタブリッシュメント的で縁戚にも著名人多数。ただし保守的かというと、反米、反権力の人で、かっては北朝鮮にも親和的だった。

 6月 1日 田沼武能(93)

著名な写真家。この人の写真集を売っていた時期もある。

6月24日 小田嶋隆(65)

同い年のコラムニスト。若い頃はコンピューター系雑誌のテクニカルライターをしていた。この人の書くものには全幅の信頼を寄せていた。

小田嶋隆死去 - トムジィの日常雑記

 7月 2日 ピーター・ブルック(97)

シェイクスピアの現代的解釈という点ではこの人がトップだった時代があった。

 7月 4日 山本コウタロー(73)

ソルティ・シュガーのメンバー、「走れコータロー」が大ヒット。その後はラジオのDJなどでも活躍。武蔵野タンポポ団やウィークエンドでも活動し、「岬めぐり」もヒットした。その後は環境問題に取り組み大学教員になった。

 7月 6日 ジェームズ・カーン(82)

7月の訃報 - トムジィの日常雑記

 7月 8日 安倍晋三(67)

選挙演説中に暗殺される。テロは許しがたいと思う反面、天はその所行を見ているんだなと思ったりもする。この人の暗殺がなければ、自民党政権統一教会の癒着も可視化されなかっただろう。

安倍元首相の死について - トムジィの日常雑記

 7月25日 島田陽子(69)

70年代の日本を代表する美人女優。80年代にハリウッドに進出したあたりからおかしくなった。その後、内田裕也と付き合ったあたりから完全に潮目が変わった。内田には相当金銭的にもつぎ込んだとも。それでも内田の妻樹木希林は内田との離婚を拒み続けたとか。内田裕也も罪作りというか。内田裕也なんかに引っかからなければ、もう少し良いキャリアを築けたかもしれない。島田陽子内田裕也樹木希林、みんな鬼籍に入ってしまった。

 8月 5日 三宅一生(84)

日本を代表するデザイナー、世界の「イッセイミヤケ」だった。

 8月 8日 オリビア・ニュートン・ジョン(73)

オーストラリア出身。美人歌手としても有名。その透き通るような歌声は誰からも愛された。ヒット曲「そよ風の誘惑 (Have You Never Been Mellow)」は良く聴いた。この人の白眉はなんといっても「フィジカル」か。それまでの清純派路線からいきなりセクシー路線にチェンジ。MTV全盛時代にヒットチャートを席捲した。映画は大コケしたけれど、ジーン・ケリーと共演した「ザナドゥ」はけっこう気に入っている。ELOの音楽も気に入っている。

 8月 23日 古谷一行(78)

金田一耕助が当たり役。ただそのイメージが定着してしまったのは役者としては損だったかもしれない。

 8月24日 稲森和夫(90)

京セラ、KDDIの創業者。戦後輩出した経営者の中でももっとも成功した人の一人。

 8月27日 三遊亭金翁(93)

金翁といってもピンとこなかったが、四代目三遊亭金馬といえば、あああの噺家ねとなる。明るいイメージのある人だったか。

 8月30日 ミハイル・ゴルバチョフ(91)

この人がいなければ、ソ連と東欧社会主義国はもう少し延命しただろうか。ベルリンの壁が崩れるのももう少し先だったか。逆にこの人がいなければ、社会主義国の崩壊はもっと血なまぐさいものになったかもしれない。しかしソ連ベルリンの壁崩壊以後、資本主義は好き勝手状態になってしまった。その結果が世界レベルでの冨の不均衡、富裕層の拡大と労働者の低賃金化、社会の閉塞状況に繋がっている。

 9月 8日 エリザベス女王(96)

1952年に25歳で即位し、70年余りの在位。考えてみれば夫のフィリップは前年の4月に死んでいる。

 9月13日 ジャン=リュック・ゴダール(91)

ヌーベル・ヴァーグの旗手。多作を誇るが実をいうとあまり作品観ていない。個人的にはトリフォーやジャック・ドゥミの方が好きかもしれない。彼が死んで映画を観直してみるかというと、そういう気にもならない。その死は本人の希望による安楽死とも伝えられている。

 9月24日 ファラオ・サンダース(81)

ファラオ・サンダース死去 - トムジィの日常雑記

 9月25日 池永正明(76)

西鉄の元投手。1970年、野球賭博に絡む「黒い霧事件」に連座して永久追放される。稲生の後をつぐ才能あふれた投手だったが、24歳で永久追放された彼が復権するのは35年後のことだった。

 9月28日 武村正義(88)

滋賀県知事、新党さきがけ代表として非自民連立の細川政権誕生に貢献した。政権内では小沢一郎と暗闘を繰り広げたという話もある。

 9月30日 三遊亭円楽(72)

六代目円楽なんだが、円楽というとどうしても五代目の印象が強い。逆にこの人は二つ目時代からの楽太郎のイメージが強かった。二枚目で陽気、それでいて毒のあるジョークを混ぜる芸風だったが、いつまでも若手の印象も強かった。晩年はガンに侵され闘病が話題になることが多かった。

10月 1日 アントニオ猪木(79)

身体を酷使するプロレスラーという点ではここまで長生きするとは思わなかったかも。アントンハイセルの事業、参議院北朝鮮訪問など、リングを降りると山師のような別の側面がクローズアップされた。晩年は病気のためか見る影もないくらいにやせ細っていた。弱弱しい猪木を見るのはかってのファンとしては忍びないものがあった。

アントニオ猪木とプロレス少年だった頃 - トムジィの日常雑記

10月11日 アンジェラ・ランズベリー(96)

ナイル殺人事件」「クリスタル殺人事件」などで、おばあちゃん役に出演。そのイメージが強いがもともとは美人女優だった人。なんかこうよく出てくるおばちゃん、おばあちゃんはみんなアンジェラ・ランズベリーみたいなイメージがあった。

10月19日 仲本工事(81)

ドリフはもう加藤茶高木ブーしか残っていないのかと思うと淋しいものがある。この人は学習院出身の異色というのがなんとなく覚えている。

10月25日 清水信次(96)

ライフコーポレーションの元会長。消費税が導入される頃、流通代表としてよくテレビに出演され、消費税反対を主張していたことを覚えている。

10月28日 ジェリー・リー・ルイス(87)

50年代のロックンローラー。ピアノを弾きながら踊ったり、足で鍵盤叩いたりというパフォーマンをなんとなく覚えている。22歳のときに13歳の少女と結婚したスキャンダルは、プレスリーの軍隊への入隊とともにロックンロールが一時下火になるきっかけとなったとか。

11月 2日 松井直(96)

福音館の編集者、経営者でもあり、「ぐりとぐら」などの多数の児童書を送り出した。福音館といえば松井直みたいな感じだったか。

11月11日 村田兆治(72)

マサカリ投法、伝家の宝刀フォークボールで一世を風靡した。彼が活躍した頃までけっこうプロ野球をよく観ていたような記憶がある。

11月12日 大森一樹(70)

同世代の映画監督。当時の映画監督は助監督を経てなるのが普通だったが、大森一樹は自主映画の監督からそのままメジャーデビューした。「ヒポクラテスたち」の清新かつ浮遊するような軽妙な感覚を忘れることができない。その後は東宝でメジャー監督としてキャリアを重ねた。

11月28日 渡辺徹(61)

太陽にほえろ!」でデビューした二枚目俳優。榊原郁恵との鴛鴦夫婦ぶりも有名だったが、30代くらいから急激に太ってしまった。結局あれがずっと続いたうえでの病死なんだろうな。

11月30日 江沢民(96)

中国の国家主席天安門事件以後に党総書記になり経済発展路線を推進。強権政治と経済発展により生活向上。民主化とは無縁の人だったし、その後の中国共産党の路線を推進した人でもあったわけだ。

12月10日 佐藤蛾次郎(78)

男はつらいよ」シリーズで寅さんの弟分役。銀座でスナックをやっていて、よく店にも出ていたという。昔、上司と新橋で飲んでいて、上司は飲み屋の店主に気に入られて一緒に飲みにいこうということになり、連れていかれたのが蛾次郎の店だったとか。あんとき一緒に行っとけばよかったかな。

12月21日 高見知佳(60)

EPOが書いた「くちびるヌード」がヒットしたアイドル。夏の参院選に立憲推薦の無所属で立候補して落選。その頃からガンに蝕まれていたのだろうか。選挙はけっこう心身に影響与えるストレスの連続だったんだろうか。 

12月28日 磯崎新(91)

ポストモダン建築の代表みたいな人。ロス観光のとき市内バスツアーに参加したら、ロサンゼルス現代美術館が磯崎新の設計って説明してたっけ。個人的には群馬県立近代美術館の雰囲気は最高だと思う。

12月29日 ペレ(82)

偉大なサッカー選手、スーパースター。彼の後のスーパースターの系譜は、クライフ、ベッケンバウアープラティニマラドーナと続く。そして今はキャリアの末期とはいえ、クリスチャーノ・ロナウド、メッシと続く。

12月30日 矢崎泰久(89)

ジャーナリスト、元雑誌『話の特集』編集長、プロデューサー。

矢崎泰久が死んだ (2023年1月1日) - トムジィの日常雑記