安倍元首相の死について

 7月8日は朝普通に起きてゴミ出しをした。それから西洋美術史のビデオ講義を受けていた。11時少し前に少し眠くなったので横になった。勉強のようなものをしているとすぐに眠くなる。昔からか、歳のせいか。

 昼過ぎに子どもからラインで連絡があった。以下こんな会話をした。

安倍元総理が撃たれた

今、ニュースみてる

ちょっとビックリしてる

安倍さんが撃たれたのは立場とかやってきたことの顛末だから仕方ないかもしれないけど、普通に銃撃事件とか人が倒れてるのを見るのは怖いね

いや、それはちょっとどうだろう。結局、民主主義が定着していない国では、暴力が解決手段になる。彼は選挙や司法で裁かれるべきだったんだと思う。

日本は民主主義が定着しきれていないんじゃない?

選挙でも司法でも裁かれなかったから撃たれたんでしょ

そうだと思う。戦前戦後ずっと

これまでずっと長いものに巻かれる傾向で平和ボケしてたけど、政治は国民の善意に

託されていること多い気がする。今回の事件は安倍さんだけじゃなくて、これまでの政治家が民主主義を定着することをサボってきたツケみたいな気がする

選挙じゃ何も変わらない。だから暴力に走る。よくないことだけど、何も変わらない政治、社会に加担してきた部分が親の自分らにはあるかもしれない

選挙に出る政治家が無能揃いだったら無能を選ぶしかないから、どうしようもない気もする。有能な人が立候補したくなかったら、同じく立候補したくない側の自分なんかは仕方ないと思ってしまう

 そんなやりとりだったか。

 そういえばその前日だったか、イギリスのボリス・ジョンソンが辞意を表明したことがSNS上でもニュースとして伝わってきた。コロナ禍でのパーティや閣僚の不祥事において虚偽説明をしたことで党内外の批判にさらされ、国民からも退陣を求める声が相次いでいた。自分は明け方そのことについてこんな内容のツィートをしている。

誰もが思うことだろうけど、首相が不祥事と虚偽で即辞めざるを得ない国と、国会で118回嘘ついてもそのことが問われない国と、どちらが健全かどうか。
#ジョンソンと安倍晋三

 それから6~7時間の後にボリス・ジョンソンと比較した安倍晋三が暗殺された。子どもとのやりとりでも言ったことだが、民主主義が定着していない国では暴力がその解決策となる。日本は戦前もそうだったし、戦後でも政治家を襲うテロ事件は多数起きている。少々古い話だが、自分がその時に思ったのは右翼少年が立会演説会で演説中の社会党院長を襲った事件のことだった。刺殺されたのは浅沼稲次郎、襲ったのは17歳の右翼少年山口二矢だった。山口はその後、裁判を受ける前に拘留中だった鑑別所内で自死し、一部右翼から神聖視されている。

 安倍氏を襲った暴漢がどういう男でどんな背景があるのか。左よりの人物で安倍氏の行状に批判的だった人間だったのか。幕末のテロリストたちのように天誅を叫び実行したのか。そんなことを漠然と考えていたのだが、じょじょに明らかになってきたのは、犯人は家族を統一教会によって無茶苦茶にされ、統一教会と関係の深い安倍氏を襲ったということだった。しかも男は元自衛官でもある。

 元自衛隊統一教会、これで安倍氏の死によって悲嘆にくれ、怒りの矛先を安倍氏を批判してきた側(左派やリベラル層)に向けようとしていた安倍氏の信奉者が拍子抜けしてしまったのではないだろうか。

 ずっと心肺停止のまま容体不明だったが夕方になって安倍氏の死が発表された。ほぼ即死状態だったという。そして少しずつ明らかになっていく事実。安倍氏を暗殺するために使った武器は粗製銃で、鉄パイプの二本固定し、中に火薬と小さな鉄球や釘などを詰めたもので、二発発射し、一発は不発。二発目が見事に安倍氏を貫いたのだという。銃は構造上ではピストルや散弾銃というより火縄銃のような単純なもの、人によってはお手軽な大砲のような構造だったという。

 そして安倍氏に命中した銃弾(鉄球?)は体内で跳弾して安倍氏の動脈を傷つけ、心臓に命中して大出血を起こした。救命治療中に100パックという凄い量の輸血も行われたという。

 そして第一期1年、第二期8年という最長政権を率いた政治家は亡くなった。しかし自分にとっての彼は、国会軽視が甚だしく、桜を見る会を巡っては118回の虚偽答弁を行い、森友、加計学園問題などに禍根を残した政治家でしかない。地球儀を俯瞰する外交というが実績は乏しく、アメリカに尾を振ることに才長けた男だった。

 そもそも公文書の改竄などを官僚が積極的に行うことは近代民主国家にあってはありえない。それも官僚の人事権を握ったこの男のもとで起こったことだ。さらに国の根幹を為す統計数字すらが改竄され、当初影響はないとされていたがGDPにも影響していることも判明している。この男は自らの名を冠した経済政策の成果を誇らしくうたいあげた。曰く、イザナギ景気を超す戦後最長の緩やかな景気回復。

 しかし実態はというと突出した異次元の金融緩和による市中の金余りと、それらを株式市場につぎ込むことによって生まれた官製市況による株高だけである。今頃になって賃金がまったく上がっていないのはずっと続く不況のせいとされ、最長の景気回復という言葉はいつのまにか霧散してしまった。

 そして一番思うこと。安倍政治の最大の罪は、官僚のモラルを崩壊させたことと、統計数字の改竄だということだ。それまではなんとなく、官僚にはどこかで信頼寄せる部分あったし、有能な彼らが国を切り盛りしていると思う部分があった。そして国の出す数字に間違いはないだろうと考えていた。なにかで引用するとなれば白書類に頼る、それが当然とのことだと思っていた。そういう国への信頼、信用が瓦解してしまった。要は日本という国が信じられなくなった。それを導いたのが長きわたって政権運営を行って来た男、非業の死を遂げた人物の責めに帰することはいうまでもない。

 

 そして選挙は、元首相の死によって、それ以前から与党有利が伝えられていたが、これに同情票も加わり、自民党の圧勝で終わった。選挙の結果が出たときにあるツィートが目にはいった。それは若い世代が自民党に投票していることについて分析したものだった。

 それを引用して思ったことはこんなことだ。

結局、そういう教育制度を進める自民党に安定多数を与えてきた親の世代の問題なんだと思う。自分も含め50代〜60代の責任大きい。反省してるよ。いい過ぎかもしれんが、子どもたちを、肉屋を支持する豚みたいにしたかもしれないと思うと。