SOMP美術館「スイス プチ・パレ美術館展」

【スイス プチ・パレ美術館展】 | SOMPO美術館

 家族以外とはあまり美術館巡りしないのだが、たまたま友人と新宿で会うことになったので一緒に行って来た。

 この展覧会は4月に静岡市美術館で観ている。かなり質の高い企画展だったのでもう一度観たいと思っていた。感想的なことについてはそのときに書き尽くしている。自分的には上半期のベスト1くらいに評価の高い展覧会だった。

静岡市美術館「花ひらくフランス絵画」 (4月23日) - トムジィの日常雑記

マレヴナ(マリー・ボロビエフ)~静岡市美術館「スイス プチ・パレ展」補遺 - トムジィの日常雑記

スタンラン~~静岡市美術館「スイス プチ・パレ展」補遺 - トムジィの日常雑記

 本企画展は6章立てになっている。

1.印象派

2.新印象派

3.ナビ派とポン=タヴァン派

4.新印象派からフォーヴィスムまで

5.フォーヴィスムからキュビスムまで

6.ポスト印象派からエコール・ド・パリ

 ほぼフランス近代絵画史を巡るオーソドックスな章立てなのだが、前回にも記したが「印象派にあってもモネやピサロシスレーはなく、ナビ派でもボナール、セリュジェがない。新印象派にスーラ、シニャックがなく、フォーヴにマティスもない。そしてキュヴィスムにも当然のごとくピカソやブラックもない」展覧会だ。それでいて魅せる。それがスイスプチ・パレ美術館を開設した実業家オスカー・ゲーズの目利きの力でもあると思う。

 オスカー・ゲーズが蒐集を始めたのは第二次世界大戦以後のことであり、すでに大家であったピカソマティス、ボナールの絵は高騰していた。そこでゲーズは大家ではない中堅どころの画家を中心にして蒐集を始めたらしい。さらにはゲーズは抽象画を嫌っていたため、コレクションから除外されているという。戦後に蒐集を始め、フランス絵画中心のコレクションでありながら、ル・コルビジェやフェルナン・レジェ、あるいは未来派の作品が抜けているのはそういう部分があるのかもしれない。もっともレジェはキュビスムの時代が長いので、コレクションされているが今回出品がなかっただけかもしれない。

 気に入った作品はほぼ前回と同様である。最も心に残ったのはこの2点。

「帽子を被った女の肖像」(ルイ・ヴァルタ) 1895年

「室内の裸婦」(アンリ・マンギャン) 1905年

 いずれもフォーヴィスムの章に展示してあった作品。前回も書いたことだが、ルイ・ヴァルタはドイツ表現派風、そしてアンリ・マンギャンはマティス風だ。心に残り続けるという点ではヴァルタ一択かもしれないし、マンギャンの作品はどこか凡庸な気もするが、個人的にどちらか一枚となると多分、マンギャンを選ぶかもしれない。美しい絵だし、部屋に飾る一枚という点では最適なようにも思える。

 

「窓辺にて」 (アリール・ロジェ) 1899年

 この静謐、スタティスティックな点描画をどこかで見かけたことがある。思い出すと2015年に東京都美術館で観た「新印象派展」だった。あの企画展は自分にとって印象深い展覧会だ。それこそ点描派といえばスーラとシニャックくらいの知識しかなかった自分に、アンリ=エドモン・クロス、マクシミリアン・リュス、テオ・ファン・レイセルベルヘなど今回も出品されている画家を始めて観る機会を作ってくれた。

 あの展覧会ではスーラ亡き後の点描画のスターとなったアンリ=エドモン・クロスの作品が多数出品されていった。その年代ごとの作品をたどることによって、点描が次第に大きくなり、その色彩感覚がフォーヴへと収斂されていくことがよく判るようになっていた。そして展覧会の最後を締めくくるのは点描画のマティスでありドランだった。

 

 今回の企画展「スイス プチ・パレ美術館展」は10月10日までのロングラン開催である。機会があればもう一回くらいは行ってみたいと思う。