淡路島を後にして姫路へと向かう。
目的は二つ。一つは姫路市立美術館に行くということ。これは私の希望。もう一つは姫路城に行くこと。これは妻の希望である。
妻は一種一級の片麻痺だが、懸命なリハビリの結果短い距離で手摺などがあればなんとか自立歩行ができる。発症当時、救急搬送された国立病院の医師から「良くて車椅子。寝たきりの可能性が高い」と言われたことからすればよくぞここまで回復したとは思っている。でもその後、同じく国立のリハビリ専門病院の医師からは、「梗塞巣が大きい。障害は固定されているので改善の余地はなし」とも言われた。医者って、けっこう患者の希望を打ち砕くような冷徹なことを明言するなとは思った。
でもその医師からはその後熱心にリハビリ治療を続けていただき、通常3ヶ月の入院期間を、途中最初に入院した病院での手術で一時転院した後に再度受け入れていただき、都合6ヶ月という異例の長期リハビリ治療を受けることができた。その結果が短い距離の歩行、OTの成果で衣服を自分で着たり脱いだり、簡単な料理が作れたりなどで今に至る訳だ。
そうなると妻は好奇心を発揮し、いろいろなところへ行きたがりとなった。その結果、城好き、吊り橋好きなどなど。まあ介護する方も応分の負担はあるにしろ、出来るだけのサポートはしてきた。
姫路城は実は以前にも一度チャレンジしている。その時も様々な難儀を超えて大天守までたどりつき、天守内でも急な階段を1階上まで登っている。
あれから13年、少しはバリアフリーが進んでいるかと思いきや、大改修を経ても基本歴史的遺物のためモダンなバリアフリーはほとんど進展がないようだ。
「経験豊かな3名程度の介助者」、「介助者が1名では危険です」。なんかハードルが上がっている感じがする。そういえば前回も坂道を登るときに、親切な方々に何度か手助けをしていただいたと自分の記録にもある。13年前よりも確実に老いた自分一人ではかなり難しいかとも思ったが、とりあえず行けるところまでというつもりで行くことにした。行くにあたっては幾つかのサイト情報を参考にした。
姫路ユニバーサルツーリズム 認定特定非営利活動法人 コムサロン21 事務局
そして駐車場については13年前は大手前公園地下駐車場に止めたのだが、そこから城へはけっこう歩くのと、出来れば城見学の後で美術館に行きたいということもあり、美術館に一番近い姫山駐車場に止めることにした。
まずは駐車場付近からの美しい姫路城のお姿。
姫路城の大天守に行くには基本的には西の丸のルートから行く。ただしここは階段が続いていて車椅子で行くのは無理。入り口で案内をしてくれているボランティアさんから、大天守の下まで階段なしで行けるのは出口コースの方といわれた。さらに一名、やや高齢(多分自分と同じ年齢)の方がサポートをしてくれて、急な坂道の部分で車椅子を引き上げてくれた。とはいえそれでもけっこう後ろで押す自分の負担は大きく、平坦な備前丸附近に来た時は息が上がっていた。13年の歳月ってやっぱり諸々あるんだなと実感する。サポートの方が車椅子引っ張って一気に行くので、自分としては休み休み行きたいところだったというのもある。
個々の場所でいうと入り口付近のS字型の坂の部分、道路いっぱいに使て登りたいところだったのだけど、ちょうど遠足に来ていた小学生の集団と一緒になったので、蛇行登りが出来なかった。その後も天守内でもこの集団を先に行かせたりとか諸々あった。でも、子どもたちはよく挨拶してくるし、それに答えていくと「こんにちは」「こんにちは」「こんにちは」と連呼し続けるみたいになる。なんとなくイントネーションが関西化していくのが自分でもわかる。まあ子どもたち元気があってなにより。
難所の部分ユニバーサルマップの赤三角の③④⑤のあたり。帰りは自分一人で後ろ向きになってゆっくり降りたけれど、登りは介助者一人は姫路市のいうようにかなり難儀かもしれない。まあ転倒とかそのへんを考えるとサポート一名は必須かもしれない。
平坦な備前丸を抜けるとそこからは階段になる。階段脇に車椅子を置かしてもらい、手すりをつかって登る。それから大天守内に。大天守は6階まであり前回は2階までだったが今回は。まあある程度、妻のリベンジは果たされた。
しかし城巡りは車椅子押してる側はけっこうシンドイ部分がある。13年前も次はないなと思ったけど、今回は間違いなく次はないと思っている。