姫路市立美術館 (10月8日)

 姫路城の後、近接した姫路公園内にある姫路市立美術館へ行った。

 私的にはこちら行くのが目的、それは9月に、同館が所蔵するマティスの絵が松方コレクション作品の可能性があるという朝日新聞の記事を読んで、機会があれば行ってみたいと思ったから。

姫路のマティス「松方コレクション」か - トムジィの日常雑記

 姫路市立美術館は赤レンガ造りの雰囲気のある建物で、もともとは姫路陸軍兵器支廠の倉庫として建築され、戦後一時期は姫路市役所として利用されていた。1983年に再生利用され美術館となったという。

姫路市立美術館 - Wikipedia

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姫路市立美術館:トップページ

 メインの企画展として現在は、グラフィック・デザイナーにして現代アート作家の日比野克彦の展覧会を行っている。日比野は若い時からけっこう好きで、作品を目にする機会も多かったし、興味もあるのだが、今回は時間の関係でパスすることにする。

 とにかく姫路城でかなり時間を費やしたため、美術館での滞在時間は30分程度。すぐに京都に向かわないと、予約している健保の保養所の食事に間に合わなくなる。ということで元々目的としていた西洋近代美術のコレクションのみを駆け足で観ることにした。

國富奎三コレクション室について | 姫路市立美術館

 地方の金満医師が蒐集したコレクションを市の美術館に寄贈し、これを常設展示しているというもの。

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 その展示作品は40点弱だが素晴らしい作品ばかりだった。

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『湖』(コロー)

 縦長の作品が多いコローにしては珍しい横長の作品。この作品も松方コレクションから売り立てられたもののようで、図録には「『第三回松方氏蒐集絵画展覧会』において《風景》と題されて出品された」という記載がある。

 

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『花咲くプラムの木』(ピサロ

 美しい絵である。1889年の作品で一時期傾倒したスーラらの点描法から少しずつ本来の印象派的な筆致に戻りつつある、そんな時期の作品のように思える。この絵は以前にもどこかで観た記憶がある。図録によると「メアリー・カサット展」(横浜美術館)2016年という貸し出し記録が掲載されている。この企画展展は観ているので図録を引っ張りだすと、119Pに掲載されていて姫路市立美術館所蔵とある。なるほどと思った。

 

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『ル・プティ=ジュヌヴィリエにて、日の入り』(モネ)

 1874年の作品。この年は第一回印象派展が開催された年で、印象派という呼称の起源となるモネの『印象、日の出』が出品されている。いわば『印象、日の出』と同時期制作されたまさに印象派の出発点となるような作品といえるかもしれない。

 この絵はモネ作品の中でもかなりポイント高いと自分は思った。鑑賞のベストポイントは5メート以上離れた方がいいかもしれない。この会場ではそこまで距離はとれないが、対面の壁ぎりぎりのところから観ていると、飽きずに何時間でもいられるような気がしてくる。

 

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『川沿いの村』(ヴラマンク

 1913年の作品。ヴラマンクにしては激しい色彩も、また重苦しい雰囲気もない。全体としてセザンヌの画風の影響が強い。そしてどことなく浮世絵的な構図を感じさせられる。

 

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『赤い服を着た女』(アンリ・ルバスク

 ポスト印象派、親密派の範疇に入る画家。個人的には東京富士美術館の何度か観た『ヴァイオリンのあるマルト・ルバスクの肖像』という自分の娘を描いた作品がけっこう気に入っている。このモデルの雰囲気もちょっと似ているので、ひょっとしたら娘のマルト・ルバスクをモデルにしているのかもしれない。

 

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『ニース郊外の風景』(マティス

 そして目玉というか目的の作品である。1918年製作で、すでにフォーヴィズムの旗手として活躍している時期だが、この作品の色遣いは抑えめで印象派的な雰囲気もある。数メートル離れると雰囲気が変わってくるような感じで、美しい作品だ。600キロ以上も離れた姫路まで来た甲斐があったとしんみり思っりもした。

 

 駆け足の鑑賞だったが、このコレクション展示は十分楽しめた。地方の金満家がそのコレクションを惜しげもなく自治体に寄贈し、常設展示され市民が日常的鑑賞できる。なんとも素晴らしいことなのだが、このコレクションの寄贈主、調べるとよからぬ不祥事を起こした医師でもあるようだ。

 ネットでこの人の名前と事件、逮捕などというワードで検索してみると、目を覆いたくなるような事件の情報、主に掲示板関係のものがヒットする。2004年のことなので、事実なのかどうかその詳細はわからないが、未成年少女へのわいせつ事件で起訴され示談にて不起訴となっているという事件のようだ。

 蒐集したコレクションに罪はないのだが、もしそれが事実だとしたら、展示作品の価値がなんとなく気持ち的に減じてしまうような気がする。それはちょっと残念なことである。