この時期になるとテレビでもさかんに「紅葉が見頃」とやりだす。それを見ると妻が、「ここがキレイ」、「ここが見頃」、「あそこに行きたい」と言い出す。
今は日光がちょうど最盛期らしい。2、3年前にそんな話題につられて、日帰りで日光に行ってみたら見事に終わっていて、いろは坂の両脇には大量の枯葉が落ちていた。紅葉の間を流れ落ちる華厳の滝の淋しいものだった。妻曰く「テレビでやったらすぐに行かないと」と言うのだが、さすがにそういう訳にもいかないだろう。
栃木や群馬の山の方は今が見頃だということだが、埼玉はどうだろうか。つい最近まで30度近くあり、Tシャツでもいいくらいの陽気が続いていたので、たいていの場所はまだ青々としている。山の方はどうだろう。埼玉で一番山深いというと、秩父あたりだろうか。
ネットで調べていると、奥秩父に滝沢ダムがある。ダムが堰き止めた人造湖はもみじ湖と命名されている。国道140号線沿いで、ここを過ぎると雁坂トンネルで甲府で行く。さすがにあのへんまで行けば山はけっこう色づいているのでは。なんといっても奥秩父だし、もみじ湖なんだから。おまけにここには埼玉では珍しいループ橋もあるという。
ということでいっちょう行ってみるかとなった。
住んでいるディープ埼玉から秩父を目指すとなると、まず国道299号線で西武線沿いを進み正丸峠のトンネルを抜けてから芦ヶ久保、秩父市街を目指す。そこから140号線を山に向けて進むという。秩父湖や三峰神社、厳寒期に氷柱が見れる三十槌の氷柱などへ行くときに通る。地図上でも滝沢ダムはけっこう奥の方で三峰神社や秩父湖のさらに先の方にある。車でも秩父市街から50分くらい走る山奥である。これはまあ紅葉を期待するのが人情というものだ。
まずはダムの手前に二つの橋梁道路、ループ橋が見えてくる。あとでダム側が撮ったのだがこんな感じだ。
空は青いが山は赤くないね。ループ橋は滝沢ダムループ橋、正式には雷電廿六木橋(らいでんとどろきばし)という。かなりスケールの大きな橋だが、一般的なループ橋のようにくるくると何重にも螺旋を重ねるのではなく、大きく二重になっている。
そして橋の先のトンネルを抜けると滝沢ダムに到着。
でも人造湖(もみじ湖)も周囲の山も青い。青々している。駐車場になんとなくアリバイ的に紅葉が植えてあり、そこだけは色づいているのだけど。
でもダムも勇壮だし、もみじ湖も美しいことは美しい。
そしてこのダムもエレベーターでダム下に降りることができる。ダム自体は132メートルあり、エレベーターは120メートルくらいあるらしい。一番下のB2階まで降りると、なぜか10段くらいの階段があり、そこからダム堤下に長い通路がある。
その通路の先には長い長い階段がある。そこを登らないとダム下の公園に出ることができない。
ダメじゃん。
とてもとても車椅子の人間には難しい。幸い階段には車椅子用のリフトがある。でもこれはとても大がかりで、まずは備え付けの電話で管理事務所に連絡。すると係の人がやってきてリフトをセッティングして、付き添って上部に運んでくれる。介助の自分は登るときには先に上に登る。下るときにはやはり先に下る。リフト操作中は他の人は脇を通ることはできない。たぶん5分程度は昇降に時間がかかる。その間、車椅子の人が占有する形になる。
注意書きによると、リフトは土日は利用できないのだとか。それはそうだろう。これでは大渋滞になる。なんでこんな設計になったのだろう。エレベーターの出口、堤下の通路、公園出口を面一にすれば良かったはずなのにね。
せっかく来たので連絡して係の人に来てもらいリフトを利用させていただいた。まあウィークデイでえらく空いていたこともある。電話して5分くらいで係の人は来てくれた。若い男性でとても親切に対応していただいた。これは有難かったけれど、なんというか申し訳ないというか。おまけにダム下公園を回る間は、ずっと待機していただくのである。それを思うとゆっくりダム下見学をするみたいな気分にはなれない。早くも戻らなくてはという感じ。
リフトを上がるとダム下公園への出口にはお約束の張り紙が。
そして見上げるダム。
さらに見上げると遠くにループ橋も。
ダム下公園には吊橋もかかっていたので、大急ぎで渡って戻ってくる。吊り橋好きの妻は、いつもなら車椅子を降りて手摺につかまりながらゆっくり渡ったりするのだが、そんな時間もない。賞味5分かそこらで入り口に戻って再びリフトに載せていただき階下に降り通路を渡ってエレベーターに。
ダム上に戻ってから見下ろすと、このダムの高さを改めて知る。
ダムとその周囲の環境はたいへん美しく、そこそこに楽しめるところではありました。ループ橋も含めて一度は行ってみる価値はあると。でもこのもみじ湖はちょっとどうなんだろうと。この周囲が美しく色づくことがあるのかどうか。11月下旬あたりに行ってみると景色はだいぶ違うのかもしれないけれど、今シーズンまた行くのはちょっと。というかたぶん次はないかもしれない。雁坂トンネルを通って甲府に行くとか、甲府から帰ってくるときにちょっと寄るみたいのが正解かもしれない。
でもこれまで何度か雁坂トンネルを通って秩父に入るというのはやっているから、このダム脇やらループ橋も通っているはずだけど。たいてい暗くなりかけてだろうから、運転に集中していたのかもしれない。夜の山道、ダム脇なんていうのは、あまり気持ちの良いところではないから。
ちなみこの滝沢ダム、建設計画が決まったのが1969年、水没世帯との補償交渉などが長引き、着工したのが30年後の1999年。完成したのが2011年という長い歳月を経ている。そして出来たのは東日本大震災のあった年だったわけで、まあ割と最近。新しいダムであることはまちがいないようです。
奥秩父の紅葉が結局見ることができず仕舞。仕方なく秩父のミューズパークの銀杏並木でも見て帰ろうと行ってみることに。でもこっちの銀杏はもう見頃は過ぎて、だいぶ散っている感じでした。物事はこちらの思っているようには進んでいないなと。
ついでに秩父といえば味噌豚丼かわらじかつ丼。知っている店をいくつか回ったけど、たいていの店は3時くらいで終わっていて、早めの夕食対応みたいなところはないみたい。それではと、以前行ったことのある小鹿野の精肉店がやっているというわらじかつの店と焼肉が食べることができる店に行ってみると、木曜日は定休日ということで、あえなく撃沈。
まあそういう日もあるさ。