昨晩から映画を立て続けに観ている。みんないつ取ったかも覚えていないBSプレミアムのやつ。まずはというと『エンド・オブ・ホワイトハウス』。
これは多分観るの二回目だとおもう。TSUTAYAでDVD借りてきたのかな。ホワイトハウスが北朝鮮テロリストに襲撃され、わずか20分足らずで制圧される。大統領、副大統領、国防長官等がホワイトハウスの地下にあるシェルターで人質になってしまう。そこに以前、不慮の事故で大統領夫人を死なせてしまった元シークレット・サービスの主人公が1人救出に向かう。
まずは荒唐無稽な設定で、そこに超人的な主人公が奮闘する。戦場となったホワイトハウスを舞台にしたダイ・ハードみたいな映画なのだが、割と細部が良くできていて面白い。大統領と副大統領が人質になったため全権を委ねられた黒人の下院議長役を名優モーガン・フリーマンが演じていてこのへんもリアル感がある。
そういや昔、大統領の不慮の事故、副大統領が重病で責務を放棄のため、急遽黒人の下院議長が大統領代理となるという映画を観た覚えがある。『ザ・マン/大統領の椅子』だったとおもう。
二期にわたるオバマ大統領の治世を知っている我々からすれば、アメリカの大統領が黒人であっても別に驚くことはないけど、1970年代にあってはこれはガラスの天井どころじゃなく、およそリアリティがない政治的シチュエーションだったのだと思う。そこにあって、けっこう重厚な映画に仕上がっていたように記憶している。初の黒人大統領役を演じたのは名優。この人はスター・ウォーズのダースベイダーの声の人でもある。
この映画でアメリカ大統領の継承順序を覚えたような気がする。大統領、副大統領、その次は下院議長となる。そうなると、今、トランプとペンスに何かあるとわずかな在任期間でもナンシー・ペロシが大統領になるということかと、今それに思いついた。
話を「エンド・オブ・ホワイトハウス』に戻そう。アメリカ国内が敵国に襲撃されるというシチュエーションがまずリアリティがない。多分、こんな風にやられることはまずない。と、これは20世紀までの常識だったのだが、2001年の9.11で軽く吹っ飛んでしまった。9.11以降はアメリカへの先制攻撃はあり得る現実となった。
しかしアメリカを攻撃する敵国というのがまずない。なぜなら攻撃したとたんに世界戦争が勃発することが必須だから。20世紀まではアメリカの仮想敵国は基本的にソ連だったが、ソ連がアメリカに侵攻するという設定の映画はまずなかったと思う。アメリカが攻撃に遭うという設定をアメリカ人が受容するはずもなかったから。
しいていえばジョン・ミリアスの『若き勇者たち』くらいか。あれはソ連とキューバの連合軍がアメリカに侵攻し、田舎の高校生たちがゲリラ戦を展開するという内容だった。ゴリゴリのタカ派、反共主義者ジョン・ミリアスが作った反共宣伝映画というレッテル張りにあったが、自分はこの映画けっこう好き。アメリカが占領されるというあり得ないシチュエーションの中、極限状況に置かれた高校生たちの姿がリアルに描かれる青春映画だったと思っている。ミリアスの作品では『ビッグ・ウェンズデイ』と同じくらいに好きな作品だ。
この映画は1984年製作、この時代はレーガン大統領の時期であり、ソ連とは緊張関係にあった時代だ。だからこそこうした反共映画が許容されたのだとは思う。しかし、ソ連、キューバ、ニカラグアの連合軍がアメリカに侵攻、それに対してアメリカ、カナダ、中国が立ち向かい、ワシントン、北京は核攻撃を受けて壊滅とか、ほとんどあり得ないシチュエーションが今だったら笑えるところだ。
当時、国力で圧倒的に劣っていた中国は、アメリカにとっては割と親和性があったということだ。基本、アメリカ国内の田舎町が舞台なので、国際関係の話は出てこないけど、ロンヤス関係にあった日本はまったくお呼びでないのは言うまでもない。
20世紀後半、アメリカにとっての敵は基本ソ連だった。それがベルリンの壁、ソ連邦の崩壊により、アメリカ一強となった世界政治の図式では、明確なアメリカの敵はなくなってしまった。それに代わる国際テロ組織、60年代、70年代であればスペクターだのスラッシュやケーオスなんかがあった訳だけど、21世紀はだいたい首尾一貫して中東関係だったように思う。20世紀の末期からはイランだったし、それがイラクとなり、アルカイダだのISだのとなる。
その一角にこの映画あたりから北朝鮮が加わったということだ。とはいえ、トランプが金正恩と二度も会い、和解モードを振りまいた今となってはこのシチュエーションも難しくなるかもしれない。
なんだかわからないが『エンド・オブ・ホワイトハウス』をアメリカの仮想敵国の変遷の流れで観るとより面白さが増すとか。嘘ですけど。
基本的にこの映画は、ダイ・ハード好きな人には概ね暖かく受け入れられると思う。自分がそうだったか。