最近観た映画とか

 通信教育のレポートやらテストやらで、すっかりご無沙汰というか、あまり映画とか観ていないのだが、それでも現実逃避的に深夜につらつら観てもいる。たいていは古い映画だが、ここ1~2ヶ月に観たものを幾つか。

きみに読む物語

 ベタなメロドラマである。この映画は12年くらい前に観ている。

きみに読む物語 - トムジィの日常雑記

 監督のニック・カサヴェテスのことや両親のジョン・カサヴェテスジーナ・ローランズのことなんかに言及しているが、若き主役のライアン・ゴズリングレイチェル・マクアダムスのことには全然触れていない。その後の月日のなかでゴズリングは「ラ・ラ・ランド」などでトップスターの座に駆け上がっている。相手役のレイチェルも順調にキャリアを積み重ねていて、2015年の「スポットライト 世紀のスクープ」ではアカデミー賞助演女優賞にノミネートされている。あの記者役はけっこう印象的だった。

 映画自体を観た感想は12年前とほとんど変わっていない。繰り返すがベタなメロドラマである。途中からほとんどネタバレしている。それもすべて計算ずくというところも。老人ホームで物語を読み聞かせる老紳士役を演じたジェームズ・ガーナーは、B級西部劇のスターでもあるジェームズ・ガーナーは、我々の世代からするとB級西部劇のスターという印象が強く、ちょっと違和感あったのだが、今回観た限りでいえば、ひょうひょうとした演技は好演といってよいかもしれない。調べると2014年に86歳で亡くなっているが、2004年のこの映画が遺作のようである。

「42~世界を変えた男~」

 けっこう以前から気になっていた映画。チャドウィック・ポーズマンの出世作。自分が彼を知ったのは、割と最近でのことで「マ・レイニーのブラックボトム」で。まあ観た時にはすでに亡くなっていた。熱量のある演技が鬼気迫るみたいな感じだったけど、もうあの時には末期がんで余命状態だったようだ。

 この映画は2013年の作品。メジャー・リーグで黒人選手のパイオニアになったジャッキー・ロビンソンを描いたもの。今ではメジャー・リーグ、メジャーが一般的だけど、自分のような古い世代だとどうしても大リーグという呼び名に慣れている。「巨人の星」の魔球大リーグボールの大リーグね。

 その大リーグだけど、日本で一般的になったのはやっぱり野茂や松井が活躍してからだと思うけど、自分が観てたのはもっと昔のこと。多分70年代のことだと思う。しかし、音楽でも映画でも野球でも、なんかみんな70年代が一番見たり聴いたりしていたような気がする。それ以降、あまりアップデートしてない。

 よく観ていた頃はやっぱりNHKBS放送の深夜枠とかが多かったか。さらにいうとスポーツ・コラムみたいのけっこうよく読んでいた。ロジャー・エンジェルとかそのへん。多分、アメリカのコラムニストの本よく読んでたり、雑誌「ナンバー」が「スポーツ・イラステッド」と提携してたとか、そういうところの影響だろうか。なので当時の大リーグ事情にはわりと精通してただろうか。

 選手でもキャットフィッシュ・ハンター、トム・シーバー、ケント・テカルビーとかなんとなく名前が出てくる。あとビリー・マーチンヤンキーススパーキー・アンダーソンのレッズとか。当時のヤンキースはなんかやたらと強かったような記憶がある。レジー・ジャクソン、マンソン、ネトルズ、チャンプリス、ピネラなどなど。

 そういう時代でもジャッキー・ロビンソンはすでにレジェンドみたいな存在だった。ロビンソンは1947年にメジャー昇格して1956年に引退、実働10年ということらしい。ウィキペディア等を見てみると、首位打者1回、盗塁王2回。

通算打率   311

ホームラン  137

盗塁     197

安打      1518

ジャッキー・ロビンソン - Wikipedia

 成績だけを見ると長距離打者ではないし、どちらかというと走攻守揃った玄人受けするタイプだったようだ。しかし成績だけを比較するとイチローがどれだけ凄い選手かということがわかるような。

 黒人選手のパイオニアということで、忍耐力、精神面がやたらとタフな選手だったのだと思う。そのへんが単なる技術やパワーだけのスポーツ選手と違うということなんでしょう。

 映画はというと、正攻法の野球映画、スポーツ映画だと思う。最近はあまりないけど、かっては野球映画ってけっこう沢山あって、大スター俳優が野球選手を演じていたように思う。ジェームス・スチュワートの「蘇る熱球」、ゲイリー・クーパの「打撃王」などを記憶している。それらに比べると「42~」は正攻法だがユーモアに欠ける部分がある。まあ人種差別がメインテーマになるだけに、それは致し方ないかとは思う。

 映画としては判りやすいキャラ化が図られていて、ジャッキー・ロビンソンは不屈の闘志で差別に耐え抜く、チーム内、他チームの差別主義者も類型的な差別主義者たちとして描かれている。いわばジャッキー・ロビンソンという、アメリカにおいては誰もが知る偉人のお話を、判りやすく描いた映画という感じでもある。そういう意味では可もなく不可もなくというところだろうか。

 黒人選手をメジャーに起用しようとするドジャースのオーナー、ブランチ・リッキーを演じるのは、多分そうだろうな、そうだろうなと思って観ていたら案の定ハリソン・フォードだった。黒人選手の起用は、興行面、好選手を安く投入できるという計算が図られていたのだろうけど、そういう部分の生臭さをフォードがうまいこと演じていた。ボーズマンの熱演してたけど、自分的にはハリソン・フォードがもっていった感があるなと思った。

グッドフェローズ

 レイ・リオッタが亡くなったと聞いて、なんとなく代表作はこれかなと思って観た。もちろん以前にも観ているが、同じマフィアを描いた映画という点でいえば、「ゴッドファーザー」、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」とかに比べると、重厚感がない。主人公の独白によりエピソードを繋げていく軽快な演出は、多分スコセッシ的には、「ゴッドファーザー」の対極を狙ったのかもしれない。ただし、なんとなくダイジェスト版を観ているような印象を与える。

 まあまあ面白く観れたけど、やはりマフィアものは「ゴッドファーザー」が一番だということを再確認するような映画だ。その「ゴッドファーザー」もⅡまでだけど。どうでもいいが、いわれるまで「フィールド・オブ・ドリームス」のシューレス・ジョーを彼が演じているとのに気がつかなかった。あの映画はいい映画だったし、多分レイ・リオッタのベストアクトかもしれない。

ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった(字幕版)

 ザ・バンドを扱ったドキュメンタリーだが、ベースになっているのがロビー・ロバートソンの回想録『ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春』をベースにしている。なのでこの映画はロビー・ロバートソンによるロビー・ロバートソンのためのロビー・ロバートソンのザ・バンドという映画である。

 確かにロビー・ロバートソンがザ・バンドの中心メンバーであることは認めるが、それにしても他のメンバーの描き方が酷い。ガース・ハドソン、リチャード・エマニュエル、リック・ダンコはその他大勢扱い。唯一リヴォン・ヘルムは才能あるスターとして描かれるが、薬中で晩節を汚すみたいな描かれ方だ。とにかくロビー・ロバートソン以外は全員ジャンキーみたいに描かれている。これはちょっとないなと。

 実際のバンドの軌跡はどうかというと、ロビーがライブ活動の停止と解散の方向を主張し、それに対してリヴォン・ヘルムはライブの続行を主張。「ラスト・ワルツ」の解散ライブ以降もロビー以外のメンバーはザ・バンドの活動を続けた。しかしそのへんのことはこの映画には描かれない。

 別に他のメンバーの肩を持つ訳ではないが、ザ・バンドがロビー・ロバートソンの一枚看板だった訳ではないし、ボーカルという点でいえばリヴォン・ヘルムの存在が大きかったと思う。個人的にはリック・ダンコが好きだったし。

 もっとも後期のアルバムでは曲作りはほとんどすべてがロビー・ロバトソンだった訳で、ロビーからすれば他のメンバー薬でラリっているときに自分一人が曲作り、アルバム作りに苦闘していたという言い分もある訳である。そのへんがこの映画でも多く語らられている。

 1990年代のどこかで、リック・ダンコとリヴォン・ヘルムはリンゴ・スター・オールスターズのメンバーとして来日した時に観ている。懐かしい「ラスト・ワルツ」からの名曲、確か「ウェイト」をやっていたか。リンゴの他にもジョー・ウォルシュニルス・ロフグレンドクター・ジョン、クレランス・クレモンズ、ビリー・プレストンという錚々たるメンバーだった。ああいう音楽を聴いていると、リヴォン・ヘルムがバンドのライブ活動を続けたかった理由も判るし、ロビーなしでも良かったのではないかと思ったりもする。実際のところロビーレス・バンドはけっこう長きに渡って断続的に活動していた訳だし。

 ロビー・ロバートソンが才能溢れミュージシャンであり、希代のギタリストであることは認める。でもザ・バンドはけっしてロビー・ロバートソン・アンド・ザ・バンドではなかったと思う。そういう思いもあるので、今回のドキュメンタリーはあまり楽しめなかったかもしれない。

ロビー・ロバートソン   1943~    78歳

リヴォン・ヘルム     1940-2012 71歳没

リック・ダンコ                      1942-1999    56歳没

ガース・ハドソン                   1937~          84歳

リチャード・エマニュエル     1943-1986    42歳没

 死人に口なしではないし、ロビー・ロバートソンの一人勝ちという訳でもない。ビートルズの遺産はポールが一人占めしている感もなきにしもだが、それでもジョンやジョージはレジェンドとして燦然と輝いている。ロビー・ロバートソンはけっして嫌いじゃないけど、やっぱり彼はポール・マッカートニーとは違うし、ザ・バンドはメンバー5人のグループ・サウンドだったと思ったりもする。