マイケル・チェのぶっちゃけ話 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
Netflixでアメリカのスタンダップコメディのコンテンツが見ることができる。ようするに漫談なんだが、向こうのやつは1時間くらいぶっ通しで喋りまくる。ネタは時事ネタ、差別、セックス、ドラッグなどなど、けっこうヤバイものも多い。
半可通的な知識でいえば元々寄席というか、小劇場やナイトクラブ、酒場での幕間をつなぐ芸みたいなものだったとか。適当な推測だけど、娯楽の少なかった開拓時代に各地を巡回する芸人たちには様々なものがあった。売れない舞台役者が酒場でシェイクスピアの一節を語ったりするのは、確か『荒野の決闘』の中にもあった。詩の朗読をする物もいたし、それこそ最近観た『この茫漠たる荒野で』では、トム・ハンクス演じる芸人(?)は新聞記事を読んで解説するだけを生業にしていた。 そういった芸の一つにスタンダップコメディもあったのかもしれない。
最初にスタンダップコメディという言葉を知ったのは多分、レニー・ブルースだったと思う。50年代から60年代、アメリカで政治、宗教、人種差別、セックス、同性愛、麻薬などそれまで公にはタブーとされていたテーマで過激なトークを繰り広げ人気を得た芸人である。その過激さから当局から規制、弾圧を加えられ、最終的には麻薬中毒死した。
ボブ・フォッシーが監督し、ダスティ・ホフマンがレニーを演じた『レニー・ブルース』が話題になった。全編モノクロのこの映画で自分はレニー・ブルースやスタンダップコメデイについて知った。
その後はというと、例の『サタデー・ナイト・ライブ』出身のコメディアンがだいたいスタンダップコメディ出身ということもあり、その舞台の一部とかがテレビなどで放映されたのを観たりした。チェビー・チェイス、ビル・マーレーなどなど。映画俳優として大スターとなったエディ・マーフィーも元々はスタンダップコメディ出身だし、そのマシンガン・トークと黒人差別を逆手にとった挑発的なギャグは、その後のある種のロールモデルになっているように思ったりもする。
ということで割とスタンダップコメディは好きな方なので、Netflixで今アメリカで人気のある芸人たちのショーを観ることが出来るのはけっこう楽しいし、有難いと思う。ある意味、それは今のアメリカを理解するうえでもけっこう重要かもしれない。まあそこまで仰々しく考えなくても、普通にショーとして楽しめる。最も語学力がないので、基本字幕に頼って楽しむだけではあるのだが。
前置きが長くなったけど、マイケル・チェについてもNetflixのコメディラインナップの中で知った。まあこれは偶然チョイスしたのだけどけっこう当たりだったか。マイケル・チェは『サタデー・ナイト・ライブ』のアンカーを務めるライター、コメディアンのようだ。
『サタデー・ナイト・ライブ』出身のコメディアンは、もともとコメディアンだった人もいればライター、いわゆる放送作家や脚本家からコメディアンに転身した人もいる。マイケル・チェは後者のようでライターとして番組に参加したようだ。ちなみにチェというのは、父親がチェ・ゲバラから名付けたという話がある。
今回の『マイケル・チェのぶっちゃけ話』は今年オークランドで行われたライブを収録したもの。コロナ、ワクチンなど旬なネタを独自の皮肉たっぷりなギャグで切っていく。彼の話はエディ・マーフィーのようなマシンガン・トークとはちょっと異なる感じで、モノローグ風でもある。観客への投げかけあり、自分で思いついた、つぶやいたネタに自分で苦笑したりもあるが、一瞬黙って間を作ったりとか、いろいろだ。
風貌はヒップホップ・スター風でちょっと強面の黒人だが、話にはどことなくインテリジェンスを感じさせる。まあ見てもらわないとその面白さは伝わらないと思うけど、その一部というか、コロナやワクチンについてのトークの一部をざっと引用してみる。
<ワクチンについて>
俺の母親はワクチン接種を怖がっている。それも当然だ。
接種した隣人が3日後に死んだ・・・・・。
車に轢かれてね。
ワクチンは不幸を呼ぶ。
俺は打ったけどまだ疑っている。疑うよな? それとも安心した?
疑うヤツはバカだっていう風潮もある。でも何が怪しいって、ワクチンは無料だ。
ちょっと信じがたい。
アメリカで薬が無料なんて。
いつからだ?
3千ドルなら適正価格だ。
金持ちの黒人が生き延びる。
でもタダだぞ。絶対にワナだ。俺は公営住宅で育ったから、政府が無料配布する物が分かる。たいていB級品だ。
配給チーズを食べたことは? だからワクチンを信用できない。接種の時かかりつけ医に頼んだ。
「有料のにしてくれ」
「何だって?」と医者が言うから、
「本物をくれ、無料のB級品はゴメンだ。3千ドルのワクチンがいい。どれも同じならリアーナと同じものを。彼女VIPだ」
科学を信用しろ?
科学には詳しくない。信じるのは歴史だ。正しい物は有料だと歴史が証明してる。
<ロックダウンと暴動>
コロナ禍の最初の三カ月家に籠った。
抗議も略奪もしない。
何かすべきだと思ったけど、略奪もしなかった。
恥ずかしくて孫にも話せない。黒人が輝く時に何もしなかった。セルマの後進*1について祖父に聞くと、「その夏はヤバイ流感がはやってな。感染予防のため家にいた」
ジイさんは最低の黒人野郎だ(ニガー)。ダメ黒人だ。抗議活動はTVで見てた。黒人男性であることが誇らしかった。黒人が一丸となって大暴れだぞ、誇るべき光景だろ?
白人の友だちに電話した。「どうだ コリン」
自慢せずにはいられない。嬉しくて誇らしかった。
それも、1月6日までだ。連邦議会の襲撃、真の略奪を見たよ。
マジですごかった、ぶったまげたよ。いや マジですさまじい略奪で参った。
黒人が略奪したのはせいぜい量販店。でもあいつらはグッチのベルトどころか、憲法を狙ったんだぞ。
あれは思いつかなかった。TVを見ながらやり直したいと思った。
「Supermarket Sweep」*2でキャビアに一直線。
天才的だ。
*1:1965年にマーティン・ルーサー・キング牧師の指導の元、黒人の選挙権を求めてアラバマ州セルマから州都モントゴメリーまで市民が大行進を行った
*2:※スーパーマーケットを舞台にした一種の買物ゲーム