映画『ブラック アンド ブルー』 | オフィシャルサイト| ソニー・ピクチャーズ | 10.14(水)デジタル先行配信 11/11(水)ブルーレイ&DVD発売
昨晩、NetflixかAmazonプライムのどちらかで観た。って、記憶がやや曖昧だが多分前者だと思う。まったく期待せずに観てみたのだが、思いの他面白く観れた。B級アクションものだが、なかなかよく出来ている。ストーリー的な破綻もなく、ダレ場もない。とにかくグイグイと観る者を引き込んでいく。108分という比較的短いということもあり一気に観ることができる。
主役のナオミ・ハリスは『パイレーツ・オブ・カリビアン』や007シリーズなどにも出演しているイギリスの女性。年齢は45歳、この映画の時点では42歳くらいだろうか。映画の婦人警官は軍隊を退役してから婦人警官になったばかりという設定なのでおそらく30歳前後だろうか。とはいえ年齢を感じさせないし、タフなアクションシーンもそつなくこなしている。
2019年の映画で、パトロール中に麻薬課の刑事が麻薬の売人を射殺する現場を偶然目撃した婦人警官アリシアが、口封じのため仲間である警官から追われる。パトロール中の警官はビデオカメラを胸に付けているため、殺人の一部始終が録画されている。麻薬課の刑事はそのビデオカメラを狙って警察組織をあげてアリシアを追跡する。アリシアが逃げ込むのはスラム街。そこでは警官の青い服は憎悪の対象であり、警官からもスラム街のギャングからもアリシアは狙われ絶体絶命の状態に。
この映画の舞台はニューオリンズで、2005年のハリケーン・カトリーナの災害で市内の8割が水没した。その後の復興はめざましいものがあるが、復興から置き去りにされた貧困層はスラム街で荒んだ生活を送っている。そこでは暴力と麻薬が氾濫している。
主人公のアリシアはもともとこのニューオリンズのスラム街の出身。彼女はそこから抜け出し従軍してアフガンに二度出兵している。そして新米警官として生まれ故郷に帰ってきたという設定。過酷なアフガンに二度出兵していることから彼女が相当にタフな兵士であることがわかる。
映画は冒頭から、ジョギングしている彼女がいきなりパトロール中の白人警官から手荒い尋問を受ける。問答無用で銃を突き付けられ、後ろ手にされちょっとでも抵抗すれば発砲されるような尋問である。彼女の身分証明から、彼女はブルー、警官であることがわかり一見落着となるのだが、白人警官たちは謝りもせず気をつけろの一言で行ってしまう。ブラック・ライブズ・マターそのままである。
ただしニューオリンズのスラム街では、白人警官は常に危険と隣り合わせであり、ヤバ目の黒人たちはみな銃を隠し持っている。そういう黒人、白人警官のピリピリ感があふれている。
途中でスラム街のギャングに拉致されるシーンでのギャングのボスがちょっとキャラ立ちし過ぎているようにも思う。類型的だし、警官の言うことを簡単に信じたりと、それでスラム街仕切れるのかとちと心配になるくらいに男気のある奴っぽい。結局、そのへんが裏目に出るが、まあそういう類型的な人物もご愛敬かもしれない。
いろいろ考えずにとりあず1時間半と少しテレビ画面に釘づけになる。そういう意味ではかなりポイント高い映画だとは思った。まあ少しだけ社会的背景を考えるとすれば、アメリカのブラック・ライブズ・マター問題はその根が深い。そしてつまりところはマイケル・ムーアが「ボウリング・フォー・コロンバイン」で活写してみせた恐怖の連鎖なんだろうと思う。
さらにいうと2005年のハリケーン・カトリーナの災害が、いまだに社会に影を落としていること、スラム社会や黒人貧困層の問題などが復興から置き去りにされていることなどもわかった。それを思うと少なくとも福島にスラム街が形成されていない(多分)、日本はまだ相当にマシなほうなのかもしれない。