ブルーサンダー

 『ブルーサンダー』、これもまた録画してあったやつを観た。

ブルーサンダー (字幕版)

ブルーサンダー (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

  空からの警備を行うロス市警航空ヘリ部隊の話。これはもう文句なく娯楽映画の第一級作品、メチャクチャ面白い。面白い映画のエッセンスが全部詰まっている。まずは警官役をロイ・シャイダーが演じている。もうこの人はミスターデカみたいな感じで、警官役がはまり役みたい。『ジョーズ』もそうだったし、『セブン・アップス』なんかもあったな。さらにいえばヘリコプター題材となった映画ははずれがない。ピーター・ハイアムズの『カプリコン1』もそうだったし。って、このへんは今思いついた。

 ヘリでの警備を行っている航空ヘリ部隊に州政府と陸軍が開発したジェットヘリが試験的に導入される。これは来るべきロスアンゼルス・オリンピックの警部のため。しかし州政府、FBI、陸軍の一部は、この新型ヘリの効果を有効化させるため、ロスのヒスパニック地区で暴動を扇動させ、その鎮圧のために新型ヘリを活用しようとする陰謀を企てる。偶然その陰謀を目撃した主人公は、ジェットヘリを盗み出して孤高の戦いを望む。てなわけで、ストーリー的にはけっこう荒唐無稽というか、まああり得ない設定なのだが、例によって細部のリアリティがうまいこと描かれているので、すんなりとストーリーにはいっていける。

 まず主人公のヘリコプター操縦士がベトナム帰りで、戦争での心の傷を負っているというのが最初のリアリティ。この映画の製作は1983年でベトナム戦争の影響がアメリカ社会にまだ大きく影を落としていた時代でもある。そしてロスオリンピックは翌年の1984年。うまいこと時代的背景を切り取っていて、なるほど現実感がある。

 映画の中でもジェットヘリ導入が、オリンピックのテロ対策の一環であることが語られる。ミュンヘンのようなテロは絶対に起こしてはならないみたいな台詞も出てくる。11年前の1972年ミュンヘン・オリンピックのテロ事件はまだリアリティがあるある時代だし、オリンピックにおけるテロ対策は治安を担う警察にとっては優先課題だったということだ。

 さらにいえば、通常警備任務の時にヘリで覗きまがいの行為を日常的に行っているというのが、州と陸軍の暴動を扇動させるという密儀を録音するというところに繋がっていたりしてけっこう映画としてうまく消化されている。最後のヘリコプターの宙返りなんかもそうだし。

 役者では主役のロイ・シャイダーは当然のごとく好演している。脇を固めるロイ・シェイダーの上司役の部長を演じているのはあのタフでガサツさを体現をしたようなウォーレン・ウォーツ。ウォーツといえばサム・ペキンパー映画の常連だが、なんとこの映画が彼の遺作なんだとか。

 さらに敵役の陸軍の大佐を演じるのがこれもまた懐かしいマルコム・マクドウェルである。『時計じかけのオレンジ』以来、怪優っぽいイメージもあるが、名脇役として沢山のキャリアを積んだ俳優さんだ。

 この映画でロイ・シャイダーの奥さん役で好演しているのがキャンディ・クラーク。

f:id:tomzt:20200628160536j:plain

 ちょっとシャーリー・マクレーンみたいな雰囲気のある気の良いお姉さんっぽいイメージの人。この映画で彼女の荒っぽい運転、一方通行を無視する運転が最後のカーチェイスでえらく活きていて面白かった。

 この人はどういう人かと調べるとなんとあの『アメリカン・グラフティ』であのダメなチャールズ・マーティン・スミスと付き合ってくれる可愛い、コニー・フランシスみたいな雰囲気のやっぱり気の良い女の子役を演じていた。

f:id:tomzt:20200628160540j:plain

 あの女の子はいい感じで印象深く残っていると思ったのだが、当時の評価も高かったようで、アカデミー助演女優賞にノミネートされている。なんとなく気の良い女性というのが、このへんからずっとキャンディ・クラークには印象づけられているのかもしれないけど、もとより内面性から醸し出される雰囲気なのかもとか思ったりもする。この女優さんは割と好きである。