東京富士美術館~常設展示

 つい先日も国立新美術館で開催されている「メトロポリタン美術館展」のルネサンスから近代までの西洋絵画500年の名品、傑作に堪能してきた。そのときに思ったことだが、国内にいても我々は例えば上野西洋美術館やここ八王子の東京富士美術館で気軽に西洋絵画の名品に触れることができる。この美術館だと例えば家から車で30分足らずで、けっこうひんぱんに行ける。そのためなんとなく有難みが薄れている部分もなきにしもだけど、今回、短時間にぐるっと回っただけだが、ここの収蔵品の素晴らしさ改めて思った。

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ザクセン選帝侯ヨハン・フリードリヒ豪胆公の肖像」
(ルーカス・クラーナハ- 父)  1533年

 メトロポリタン美術館展でもクラーナハは1点出品があったが、こちらはクラーナハが宮廷画家として仕えていたフリードリヒ豪胆公の肖像画。画面の左には1533年の年記が記されている。

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コンスタンティヌスの結婚」(ペーテル・ハウルルーベンス) 1622年

 本作は「コンスタンス大帝の生涯」をテーマとした大きなタペストリー連作のための下絵の一つだという。この頃、ルーベンスは大作に取り組む場合、スケッチや下絵と最終的な仕上げのみを手掛け、それ以外は工房の弟子たちにまかせたと富士美HPの解説にある。下絵とは思えないほどしっかりとした作品のようにも見える。

 

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「煙草を吸う男」(ジョルジュ・ド・ラ・トゥール) 1646年

 作品の希少性もありこの富士美の収蔵品の中でも目玉的作品。闇の中に光るロウソクに照らされて浮かび上がる人物を描き「夜の画家」と称されるラ・トゥールメトロポリタン美術館展ではいかがわしい占い師を明るい色彩で描いた作品が出展されていたが、さながらそれは「夜の画家」に対して「昼の画家」のような感じだった。とはいえ我々がもっぱらラ・トゥールから想起するのはこちらの方である。

 

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「犬を抱く少女」(ホーファルト・フリンク) 1630年代後半

 上野で開催されている「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」に1点「赤い外套を着たレンブラント」の出品があったフリンクである。フリンク自身レンブラントの工房で助手として働いていただけに、全体のタッチはレンブラントのそれとよく似ている。何度もこの絵を観ているせいか、フリンクというとすぐに思い浮かべるのがこれだ。

 

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「ジャン=オクターヴ・ド・ヴィラール侯爵」(イササント・リゴー)1715年頃

 イアサント・リゴー(1659年-1743年)はルイ14世付きの宮廷画家として有名。ロココ肖像画史上最も美脚な肖像画ルイ14世」の肖像画もこの人。

 

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「アントワーヌ・ド・ラ・ロックの肖像」(ヴァトー) 1718年頃

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「田園の気晴らし」(ブーシェ) 1743年

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「豊穣の恵み」(フラゴナール) 1773-76年

 ロココはヴァトー、ブーシェフラゴナールと雅宴画系は全部揃っている。

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「ユスーポス公爵夫人」  「フランス王妃マリー・アントワネットの肖像」
エリザーベト=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン)

 メトロポリタン美術館展にも出展されていた女流画家。マリー・アントワネットとは宮廷画家以上の交友関係があったという。フランス革命が勃発し、マリー・アントワネットが逮捕されたときには、命からがら脱出しベルギーなどで逃亡生活を送った。女流画家としては当時もっとも成功した一人で、夫は有力画商ルブラン。一人娘をもうけたが1819年に亡くし、晩年は孤独だった。小さな娘を抱いた自画像を残しているが、相当な美貌の持ち主で、それも人気になった理由の一つかもしれない。

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ユピテルテティス」(ドミニク・アングル)1807-1825年頃

 フランス新古典主義の巨匠アングルの代表作で「ユピテルテティス」(グラネ美術館所蔵)は 327 cm × 260 cmと大作である。本作はその同構図の縮小版でおそらく大作のための習作かと思われている。

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「書斎のドン・キホーテ」(ウジェーヌ・ドラクロワ) 1824年

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「散歩」(エドゥワール・マネ) 1880年

 個人的にはマネの国内にある作品の中でもベストではないかと思っている。黒のドレスの表現、背景の草木の筆触、印象派の技法に沿って描かれている。以前、富士美の学芸員が説明の中で、この作品をこの美術館の人気三大娘の一つと称していたような気がする。あとの二つはたしかルージュロンの「鏡の前の装い」、ルノワールの「赤い服の女」だったような気がする。

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ヴェネツィア、大運河」(ブーダン) 1895年

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「読書する女」(ルノワール) 1900年頃

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「海辺の船」(モネ)1881年

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「春、朝、曇り、エラニー」(ピサロ) 1900年