B.J.トーマス死去

 

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 朝日新聞の訃報欄にあった。

B・J・トーマスさん死去:朝日新聞デジタル

 60年代半ばからキャリアを出発させ、長くカントリー系のシンガーとして活躍した人である。

B・J・トーマス - Wikipedia

 この人を知る多くの者と同様、自分もこのB.J.トーマスといえば映画『明日に向かって撃て』の主題歌「雨にぬれても」だ。

 かって横浜桜木町紅葉坂にあった勤労者青年センター(名称は裏覚え)にあった音楽室で、レコードをリクエストすると解説しながらかけてくれるというイベントめいたことが月に何回か行われていた。その中で『明日に向かって撃て』のサントラがかかり、この曲を聴いたことをよく覚えている。音楽室は演奏とかも出来る音響に配慮した部屋で大きなステレオセットもあった。そこで聴くレコードは自宅で聴くのとは全然違っていた。そして多分、同じ頃に映画を観たような気がする。

 『明日に向かって撃て!』は、日本では1970年2月公開だった。主題歌の「雨にぬれても」は同年にアメリカのビルボードで1位になっている。70年は自分は中学2年くらい、そして勤労者青年センターに行き始めたのは高校生になってからだ。そこには大きな学習室があり、そこで学校帰りに受験勉強をするのが日課だった。

 そういうことでいうと多分、映画よりもまず「雨にぬれても」を先に聴いたのではないかと思う。中学2年から3年、ラジオで深夜放送やヒットチャートを聞いてばかりいたからだ。そしてこの曲の哀愁感がありながら軽いテンポに痺れた。多分、自分がバート・バカラックサウンドに最初に触れたのはこの曲だったと思う。

 そして「雨にぬれても」のシングル盤を買ってそれこそ擦り切れるくらいに聴いた。

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 聴きながら歌詞カードを見て一緒に口ずさんだ。それもあってか50年近くたっても今でもこの曲がかかると一緒にフルコーラス歌える。

 そして映画を観て、この曲がどこでかかるのかと少し気にしていたところで例の自転車のシーンである。高校生の自分はちょっとやられたっていう感じだったか。なので、この映画の新感覚の西部劇というのがすっとオチるものがあった。


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 『明日に向かって撃て!』は長く自分の中ではベスト5に入る大好きな映画だった。劇場でも名画座で何度も繰り返し観た。でもここ10年くらいは一度も観ていない。DVDも持っているが買ってから一度くらいしか観ていないかもしれない。理由はといえば、自分の中に今、この映画を受けつけるだけの感性が残されているかどうか、昔のようにしみじみと感動とするような気持ちがあるのかどうか、不安になるからだ。

 映画、特に青春映画とかは、10代、20代の時にみた感動をもう一度とはいかないものがけっこうある。40代を超えてから観直すと、なんでこんな映画に熱狂したのかと愕然とするようなものもけっこうある。それもあってか、観直せない映画というのが実は何本かある。この映画もそうだし、同じジョージ・ロイ・ヒルの『リトル・ロマンス』、スチュアート・ハグマンの『いちご白書をもう一度』、ロバート・マリガン『おもいでの夏』、相米信二『翔んだカップル』なんかがそうだ。

 ニューシネマ系の映画では、『スケアクロ』、『真夜中のカウボーイ』なんかが観ることができない。多分、がっかりするか途中で投げ出しそうな気がしてしまう。

 もっとも青春映画でもピーター・イェーツの『ヤング・ゼネレーション』なんかは10数年ぶりに観直してもけっこう面白く観ることができたりもするから、意外と見直しても楽しめるのかもしれないけど。

 話を戻そう「雨にぬれても」だ。この曲でバカラックサウンドに触れ魅了された。多分、親に買ってもらった初めてのLPレコードはバカラックのベスト盤2枚組だった。これも本当に擦り切れるくらいによく聴いた。今でも持っているし、同内容のCDも持っている。このアルバムのA面1曲目がインストルメンタルの「雨にぬれても」だ。

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 このオーケストラ・アレンジによる曲も大好きだし、とにかくバカラックサウンドが凝縮されていると思う。B.J.トーマスの歌に痺れ、このアルバムに接したことで自分は15~16歳にしていっぱしのバカラック・ファンになったんだと思う。


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 B.J.トーマス78歳、死因は肺ガンだという。彼の若い時のスリムな体形とか、晩年の頬のこけたポートレイトとかを見るとなんとなく納得してしまう。キャリア的に頂点はおそらくデビューしてから10年かそこらだったかもしれないけど、「雨にぬれても」1曲でずっと心に残るシンガーであり続けたとは思う。

 ご冥福を祈ります。