前立腺生検術の結果

 一週間前に受けた前立腺生検術の結果を聞いていた。

 事の発端はガン腫瘍マーカーのPSAの直近数値が5~6で推移していたのが、一気に8に跳ね上がったため。医者曰く「ガンでないことを証明するための検査」ですということだったのだが、「ガンの確率は37%」という微妙のご宣託をあって、正直この一週間はちょっとドキドキ状態だった。

 まあ前立腺ガン自体は、転移がなければ適切な治療を受ければ10年生存率は98%くらいということで、それって普通の成人病よりも確率的にかなりいいのではないかとも思っていた。まあ転移がないという前提ではある。

 なので万が一、ガンという診断があっても、これはもう腹を括って医師の勧める適切な治療を受けるしかないとは思っていた。ここからはかってな想像ではあるけど、もしガンがあるとなるとおそらく総合病院で転移があるかどうかの検査を受ける。なければそのままその総合病院で治療を受けるか、今の医院に戻って治療を受けるかのどちらか。今の医院の先生は大学病院で教授だったらしいし、日帰りでの前立腺手術とかもやっているようなので、腕は確かなんだろうと思う。

 そしてもし転移があるとなると、これはもう総合病院での手術や放射線治療とかそういうことなんだろう。前立腺ガンは初期段階ではほとんど症状がなく痛みとかもないらしい。ただし骨に転移しやすく、もしそうなるとかなり痛みを伴うということらしいのである。痛みと常時つきあいながら放射線治療は想像するだけでかなりシンドイ。多分、治療費もかさむだろうし、それ以前に障害をもつ妻を抱えてガン治療なんて出来るのかとか諸々思い悩む。

 予約は4時で、いつものように採尿をしてからしばし待つ。呼ばれて診察室に入ってからもなかなか医師は来ないまま15分くらい待たされる。すぐ前に21インチモニターがあり、そこには自分のカルテが映し出されている。机の上には今とったばかりの尿検査の結果らしいPSA数値や蛋白、糖の結果を示す紙も置いてある。そして生検術の結果を記されたA4の紙もあるのだけど、結果の部分は英語と記号みたいなものがあるので、よくわかりません。

 ようやく医師が入ってきてから、すぐに「良かったですね、ガンではないようです」とあっさり説明してくれて終了。ただしPSAの数値が高いのは前立腺肥大症が進行している可能性があるということで、一ヶ月後にこれも以前やったことがある尿流量測定をやることになるとのこと。これって尿を溜めるだけ溜めてきて、排尿時の勢い、量とかを計るものである。

 数値的には前立腺肥大が進行しているのかもしれないけど、排尿障害みたいなものはあまり自覚がない。泌尿器科に通院すると必ず「夜、何回尿意で起きます」みたいなことを聞かれる。でも、自分の場合はほとんど起きないし、もし起きても1回くらいなんで、あんまり自覚がない。

 医師から言わせると、64歳は前立腺肥大症になるにはやや早いということもあるらしい。とはいえPSAの数値は5を超えるとガンが疑われる訳で、なんらかの病気が進行していることは間違いないのだろう。まあこれも加齢に伴う病気とのつきあいの一つなんだろう。とりあえずガンではなかったということで、素直に喜んでおこうと思う。

 帰宅すると妻がもうデイケアから帰っていたので結果を話した。それから二人で近所の小料理屋に行ってちょっとだけ飲んだ。妻はほぼ毎日ビール飲んでいるけど、自分は多分10日ぶりのアルコールだったか。最近はビールをほとんど飲まないので多分一月ぶりくらいにビールを飲んだのだが、苦みのある麦っぽい味がした。これって大昔に感じたビールの味だなと思った。

 店を出たのは8時少し前。それから妻の車椅子を押して少し散歩した。

 帰宅後、医師からもらった生検術の結果用紙を眺める。診断および所見欄にはこう書いてあった。

Prostate.     biopsy

-Benign prostatic tissue

#1-6.Left base,mid,apex(lateral and medial):no tumor,mild inflammation

#7-12.Right base,mid,apex(lateral and medial):no tumor,mild inflammation

No malignancy is seen.

No mailgnancy is seen.  「悪性は見られない」

 とりあえず「ほっ」である。