久々、上野に来た。
今年になってからまだ一度も西洋美術館に来ていない。常設展示でのんびり、ぼーっと過ごそうと思っていたのだが、行ってみるとこういう表示が。
館内整備のため全館休館:2019年1月21日(月)~2月18日(月)
三週間近くお休みなのである。調べず来たこちらが100パーセント悪いのだが、三連休でそれなりに人で賑わう上野公園である。もう少し商売っ気出そうよ西美の皆さんと思いつつ、やっぱり親方日の丸は違うと悪意がうつふつとしてくる。
そうなると、選択肢は東美かトーハクかとなる。上野の森の日にち指定のフェルメールはもう終了してたはずだし、そうなると上野の森美術館は初手からやっていない。東美は「奇想の系譜展」でトーハクは王羲之の企画展だという。書道も根強いものがあるが、奇想の系譜は人気の若冲と国芳。東美は多分混んでいるだろうなと思いながらも行ってみることにした。
思ったとおりめちゃ混みでした。行ったのが3時過ぎだったので、ピークは過ぎているかなと淡い期待もあったのだが、とんでもない状態だった。
混んだ展覧会となると、車椅子のカミさんを一人にする訳にもいかなくなる。通常、混んだ展覧会だと、監視員が促して前列で絵の前で止まることを注意し、移動しながら見るようにするのだが、今回の東美はあまりそれをやっていない。
観覧者はというと、音声ガイドを聴きながら鑑賞する人が多く、ガイドが終わるまで絵の前から動かない。さらには絵よりも解説テキストをじっくり読むような人もいるので、渋滞となる。まあ致し方ないことなのだが、けっこうなストレスとなったりもする。
自分一人なら後方から絵を観つつ進むことができるのだけど、車椅子のカミさんはそういう訳にもいかない。渋滞していればずっと待っていなければならない。後ろで押している自分もだんだんと意識が散漫な風に流れていく。
「奇想の系譜展」は美術史の大家辻惟雄がまだ30代の時に出版した、『奇想の系譜・江戸のアヴァンギャルド』を元にしている。それまで江戸時代の絵画にあっては傍流扱いであった画家たちを用いる題材のユニークさ、卓抜な異彩を放つ表現からスポットライトをあてたもので、以降も版を重ねている。
そこで取り上げられた伊藤若冲、曾我蕭白、狩野山雪、岩佐又兵衛、長沢芦雪、歌川国芳に、白隠慧鶴、鈴木其一を加えた8人の作品を一挙展示したのが今回の展覧会だ。
若冲と国芳は最近人気なので、それなりには知っている。曾我蕭白はボストン美術館展で異彩を放っていた。さらにいえば狩野山雪は去年トーハクで観た「名作誕生」で富士と三保松原の絵が印象深い。岩佐又兵衛はというとやっぱり「洛中洛外図屏風」あたり。他の画家についていえば、ほとんど観たことがない。
しかし、眺めていくうちになんていうんだろう、引き込まれるというのは本当だなと思えてくる。さらにいえばこれらの絵が、後の近代絵画の作品に影響を与えているように思えるものもあった。例えばこれ。
木立の雰囲気は下村観山にものになんとなく似ているような気がする。もちろんそれは観山が影響されたのではないかとまあ勝手に思ってみる。
そのほか面白いと思った作品をいくつか