介護保険調査

市役所からの介護保険認定調査がある。この訪問による認定調査を受けるのは何度目だろうか。基本的には6ヶ月に一度なのだが、昨年は一度もなかったような気もする。もっともすでに何度も調査を受けているので失念してしまっただけかもしれない。
ダイアリーの記録では2010年の12月に受けたことになっている。
介護保険認定調査 - トムジィの日常雑記
その前は確か8月だったか。
介護保険再認定調査 - トムジィの日常雑記
そうか8月は区分変更の申し立てによる再調査でその前は6月にも調査を受けている。
介護保険面談 - トムジィの日常雑記
こうやってみるといろいろあったんだな。調査員の方が認知症の老人を日頃相手にしているからなんだろうが、大きな声でゆっくりと「私のことがわかりますか」みたいな言い方をする。それに妙に抵抗を感じていたりもする。
毎回、毎回、介護度を下げられて、区分変更の申し立てをしてを繰り返してきていることなどなど。
改めて介護度についておさらいしてみる。このへんもだんだんあやふやになってきているから。妻が発症して国リハでの6ヶ月の入院生活をしている頃は、けっこうこのへんの学習もしたものだった。それだけ切実な問題ではあったのだが、すでに発症してから丸7年を経過している。ある意味、妻の障害を日常的なものとして受け入れてしまっているからなのかもしれないな。

<要介護度認定の目安>
要支援1 社会的支援を要する状態
日常生活上の基本動作は、ほぼ自分で行うことが可能だが、現在の状態が悪化することで、要介護状態にならないように支援が必要な人。
要支援2 社会的支援を要する状態
要支援1の状態から、日常生活上の基本動作を行う能力がわずかに低下した状態にある人。
要介護1 部分的な介護を要する状態 
排泄や食事はほぼ1人でできるが、立ち上がりや歩行が不安定。身だしなみや居室の掃除など、身のまわりの動作に一部介助や見守りが必要。
要介護2 軽度の介護を要する状態 
排泄や入浴などの動作に、一部介助や見守りが必要。立ち上がりや歩行に支えを必要とする。身だしなみや居室の掃除など、身のまわりの動作全般に一部介助や見守りが必要。
要介護3 中等度の介護を要する状態
要介護4 重度の介護を要する状態
排泄や入浴の動作全てに介助が必要。立ち上がり、歩行が1人ではできない。身だしなみや居室の掃除など、身のまわりのこと全てに介助が必要。 多くの問題行動や、全般的な理解の低下がみられる。
要介護5 最重度の介護を要する状態
意思の伝達が困難で、生活の全般において全面的に介助が必要。多くの問題行動や、全般的な理解の低下がみられる。

この区分は確か平成18年に改定されたものだったか。妻は確か入院中に最初の認定を受けたときは、介護度4でその後に3に下がったんだと記憶している。あるいは最初から3だったか。ただし障害者が普通自宅で生活をするとなると完全なバリアフリーなど望むべくもなく、狭い家の中ではほとんど車椅子などを使うこともできない。なので最初から国リハでのリハビリ訓練も壁や手すりを使ったつかまり立ちやつたい歩き、さらに4点杖での歩行が中心だった。
入院当初、他の患者さんが長い廊下の両側の手すりを使ってゆっくりとつたい歩きをするのを車椅子に妻を乗せながら見ていて、あんな風につたい歩きができるようになればどれだけいいかとしみじみ思ったものだ。でもあの患者さんたちは、妻に比べてたぶん症状が軽いのだとも思った。
実際、妻の病状は脳梗塞の中でもかなり重い部類だった。国際医療センターから国リハに転院の相談にきたときにも、国リハの医師は妻のCT写真ををみながら、「これは重症だな。だいたいこんな状態で動かせるのか」と言った。医療センターの医師からは早く転院してリハビリをと言われていたのでその旨を話すと、「脳外の先生はみんなそう言うんだよ」と軽くいなされた。
今でもよく覚えているが、妻の脳梗塞は脳の右半分の三分の二、さらに前頭葉にも及ぶかなり大きな梗塞巣だった。発症して二日目には脳圧があがり頭蓋骨を切除する開頭減圧の手術も受けた。一番最初に対応してくれた神経内科の医師は、やはりCT写真をみながら、「よくて車椅子、自立歩行は期待しないほうがいい」と告げた。
それからすれば今の妻の状況はみちがえるほど改善されている。家の中ではほぼつたい歩きでの移動もできる。トイレもほとんど自立しているし、屋外でも短い距離は4点歩行も可能だ。とはいえ高次脳機能障害もあり、障害の程度でいえば1種1級、これがすべてなのだ。
それでも介護保険機械的な介護認定にかかると、要介護度3の場合あてはまる部分とあてはまらない部分がある。
「排泄や入浴、立ち上がり、歩行が1人ではできない。」
排泄、立ち上がり、歩行は一人でできる。入浴は一人でできない。
「身だしなみや居室の掃除など、身のまわりの動作が1人ではできない。」
身だしなみ、身のまわりの動作でいえば、着替えとかは国リハで徹底的に訓練したのでだいたいはできる。ただもちろん居室の掃除などはできない。
「いくつかの問題行動や、理解の低下がみられる。」
これは高次脳機能障害による注意障害等があるのであてはまる。
介護保険によるサービスは基本的に高齢者を対象としている。40代で障害者となった妻が受けるサービスはけっこう限定されている。機能維持のためのリハビリ等もデイケアなど限られており、利用できる施設も地域によっては本当に少ないのが実情だったりもする。
そういう意味では、介護度が下がろうがたいして利用できるものもないのだから別にいいのではということもいえる。実際、ケアマネによっては介護度下がっても今受けているサービスには足りるからいいでしょ、みたいなことをおっしゃった方もいたりもする。
こちらとしては、将来受けるかもしれないサービスの保険という意味もあり、やはり介護度を下げられるのはたいへん抵抗もある。本音的には介護保険サービスではなく、もっと障害者へのサービスの部分での社会資源が充実してもらえればというところもあるのだが、こればっかりはどうにもならないところだし。もっとも景気低迷の世の中では、自己責任論、自助自立論がどんどん振り回されていく風潮である。サービス受けたいなら自分で金払えばみたいなことだろうし、ある程度それも覚悟している部分もある。
介護保険に関しては、他に受けるサービスがない、特定疾患による公的サービスはすべて2号被保険者として介護保険で受けるようにという国の決め事によっているのでいたしかたなくというのが、こちらの立ち位置ではあるのだが。
認定調査では、最近減っているとはいえ排泄介助だの、トイレでの失敗のことなども毎回話さなければならない。そういう話となると、それこそ思い出す度に泣きそうになる。なのでどちらかというと憂鬱。介護調査をする市の職員や、たぶん下請けでやっている人たちも、仕事とはいえ基本的には福祉に携わる人なんで、まあまあそういうことに理解もあり、けっこう同情してくれる部分もある。その同情も実はけっこうつらかったりもするのである。まあ難しいところだ。