介護認定調査

 兄の要介護認定調査の立会いで朝からまた兄の家に行く。兄は介護保険証は持っているが介護認定は受けていない。なので介護保険でのサービスは現段階では受けられない。高齢者にせよ、身障者にせよ、今、福祉で受けられるサービスの基本は介護保険サービスなのであり、介護認定は必須となる。なのでこれはどうしても避けられないし、出来ればもっと早くにやるべきだったのだが、福祉は基本申請主義だから、待ってても「ハイ、それでは今度介護認定にお伺いします」ということにはならない。
 4日に市役所に行ったときにいろいろと福祉サービスのことを聞いてきて、介護認定調査の申し込みをしてきた。その結果が今日だった。調査に来たのは市役所の職員で男性の方だった。介護認定調査はすでに妻の立会いでもう何度も受けている。トータルするともう両手くらいの回数になるかもしれない。妻が身障者になって10年を経過しているのだから、まあ当然といってしまえば当然なのであるけど。これまでの調査はほとんどが女性の方で、役所の職員と役所から委託された施設系の職員の方が半々だったか。質問事項は多岐にわたるが、基本的に日常生活で自立できているかどうか、身体の可動状況はどうか、認知機能はどうかとかいったことが聞かれる。その質問項目を元にコンピュータにかけて判定を行うという仕組みになっている。
 ただし身体に障害とかがあっても普通に答えているとだいたいにおいて、「出来る」「可能」みたいな回答になっていく。なので介護度は低くなる。質問で汲み取れない現実的に状況はかなりの部分が捨象される。妻の場合も最初に受けたときはリハビリテーション病院に入院しているときだったので、質問にもたいてい「出来ない」「わからない」だったので、認定は介護度4あたりだったか。その後自宅で生活するようになると、様々不便はありつつも起居動作やリハビリで身に着けた着替えやトイレとかそうした日常行動で「出来る」が多くなると、介護度は下げられる。しばらくは介護度3だったが、5年くらいたってからだろうか介護度は2に下げられた。そうするとその都度異議申し立てをして介護度を3に戻してもらうようにしている。ある意味戦っているともいえるかもしれない。
 こちらの理屈はといえば、脳梗塞発祥のときから重度といわれ方麻痺、高次脳機能障害と診断された。上肢、下肢機能は全廃となり、専門医からは改善の見込みはなしと宣告された。救急病院からリハビリ病院に移すときに、リハビリ病院の神経内科の専門医はこれだけ広範囲で重度の脳梗塞患者を転院させるのは早過ぎるのではとまで言われた。
 なので改善の見込みが医学的にないものを福祉行政の都合で介護度を下げたり、上げたりは納得できないというのが、こちらの言い分だった。介護保険サービスは超高齢化社会の影響で需要にサービスが追いつかない状態に陥っている。当然、行政はサービスを受けるための敷居を高くしよう、高くしようとする。調査において少しでも「出来る」が増えると、介護度は下がり、受けるサービスが制限されるようになる。
 兄の場合、66歳という年齢ではあるが、曲りなりにも一人暮らしをしている。たいていのことは「出来る」ということになる。問題となるのは週三回の人工透析と心臓に爆弾を抱えているということだけなのだ。いくら一人暮らしをさせていると、部屋がゴミ屋敷と化すとか、金銭感覚に乏しく、あればあるだけ使ってしまうとか、そういった性格上のことや社会的適合性については介護保険の範囲外ということになってしまう。調査の職員は「これから入院の予定もあるとのことですが、入院中の調査ですともっと介護度が高くなるのような調査になることが多いのですが」と話してくれた。多分、要介護度はあまり期待できないということなのだろう。こちらとしては、すでに二度も救急を呼ぶようなことが続いている。一人で暮らしていくのは難しい状態にあり、生活も乱れるだけなので、少しでも介護サービスを受けて身体的生活的な援助が受けられればということを切々と語るくらいしかできなかった。
 多分、想定としてはおそらく要支援程度だとは思う。それでも認定が決まったら、次は地域包括支援センターに相談に行きうけられるサービスのことを聞くことあたりかとも思った。週に1〜2回ヘルパーとかにきてもらえればと淡い期待もしている。そしてごの次の段階としては、兄を受け入れてもらえそうな老人ホームとかそういった施設を探すことも検討しなければならない。