小沢一郎不起訴へ

http://www.asahi.com/national/update/0204/TKY201002040326.html
結局、大山鳴動して鼠一匹みたいな結果になってしまった。鳩山の政治資金についてもそうだが、結局のところ秘書の逮捕で終了か。
どだい今回の政治資金疑惑についてはややもすれば無理目の捜査という部分もあるにはあった。けっこういろいろと識者の間でも検察の暴走という論もあったよう思う。例えば週刊誌でも週間朝日は完全に検察批判の論説をとっていた。それ以外の読売、現代、ポスト、文春、新潮は軒並み小沢に批判的だったけど。
もともと政治資金規正法の収支報告書への記載ミスだけのことであり、犯罪としては形式犯に近く、逮捕までする必要性があったのかという話さえある。そこから、検察官僚の民主党政権への反発や、官僚VS民主党政権みたいな引っ張り方にまで発展する論説さえもでているわけだ。
確かにそういう部分もある。小沢がなぜそれほど叩かれなくてはならないのかと。でもそれでも小沢に同情できないのはなぜか、まずはあの悪党面。あれで小沢は相当損している。あれでは同情を買えない。さらにいえば、小沢ならなんとなく悪いことやっていそうと思わせる雰囲気だな。
しかしだ、なぜ政治資金、小沢の事務所の話をそのまま信用するとしても、寄付等によって集めた政治資金や国民の血税である政党助成金で、なぜ不動産を購入しなければならないのか。おまけに政治資金管理団体には法人格がないので、代表者の名義にしなければならない。百歩譲っても名義が小沢本人ではなく、別の誰かであればまだ納得できる。でもそうでない以上、政治資金で個人資産を増やしているといわれてもしょうがないではないか。さらに政治団体の代表として購入したということで税金面でも優遇されている。
もちろん政治には金がかかる。集めた政治資金を換金可能な不動産として、選挙などで多額の金が必要な時に用立てるという方法は、政治手法としてはありなのかもしれない。でも一方では国民の血税で私服を肥やし、さらには税対策までばっちり行っているというのは、誰でも納得できないのではないか。
政治には金がかかる、それが政治腐敗を呼ぶ。政治改革を訴えて、自民党を飛び出し、細川連立政権のもとで小選挙区制や現在の政治資金規正法に至る道筋をつけたのは小沢一郎張本人ではなかったのか。それがある意味、法の抜け穴探しては金を蓄えている、ようにしか見えないのである。今の小沢一郎に対しては同情の余地はないと私は思っている。
もう一つ、小沢の手法に対して反発するのは、現在の民主党の党運営である。選挙で自分の影響下にある議員を増やし、数の力でヘゲモニーを握る。反対者にはポストなど様々な面での冷や飯を食わせる。自らは具体的な発言を示さず、側近を意のままにつかった党支配を行っている。
意思決定を徹底的なトップダウンで行い、党内での議論や、ボトムアップ型の政策決定を行わせない。議員立法などは総て、個々の議員のスタンドプレーであるとして排していく。一元的な組織運営は効率的でもあり、政治的な近道まっしぐらという意味では、これもまた一つの方法論かもしれない。しかしだ、この国は少なくとも形式的には民主主義国家なのである。今、小沢が推し進めている民主党の党運営は、まるで前世紀の共産主義国家の一党独裁の党運営に近いのではないか。
世間でよくいわれる小沢ガールズのような子飼い議員たちの存在は、それこそナチスドイツの親衛隊、毛沢東時代の紅衛兵みたいなものではないのか。小沢一郎に対する無批判の妄信、少しでも小沢に批判的な者に対するヒステリックなまでの反応などなど。
これが小沢がもともとやりたかった自らの影響化にある議員の数を土台とした権力基盤の構築、そのうえでの恐怖支配ということであるとしたら、この男は実は相当に肝っ玉の小さい男なのかもしれない。本当のリーダーは、自らへの批判を行う者をも包み込むような器の大きさがあるはずだ。でも小沢がやり方は常に排除の論理でしかない。だからこそ彼のこれまでの道筋は排除するか、彼が排除されるか。ずっとそんな風にやってきていないだろうか。
政権交代は私にとってもある種の悲願ではあった。自由民主党の一党支配がいつか崩れ去り、政権交代によって権力の集中や、腐敗が改善される。それが成熟化した民主主義国家のあり方であると思ってきた。昨年の総選挙で民主党のが大勝利を収めたことでいよいよ日本の政治も一里塚を越えたのではと思った。
しかしあまりにも大勝利を収めたことでその目算が様々に狂った。大きな議席数を手に入れたことで小沢はもともとの本性をむき出したのかもしれない。彼が今やろうとしているのは、健全な野党になる可能性もあるはずの自民党の解体である。その先にあるのは自民党の一党支配に変わる小沢民主党による永続的な一党支配じゃないのか。
新聞等でも今、民主党内の小沢派による圧制が様々に伝えられる。小沢派議員による監視下で自由な議論がほとんど出てきていない状態だ。こうなると夏の参院選ではとにかく民主党に勝たせてはいけない。今回の不起訴で小沢は、小沢にとってはある意味免罪符を得たも同然である。民主党内で影響力を行使しながら、参院選に全力を傾けることになるだろう。だからこそ、とにかく参院選ではとにかく民主党に勝たせない。
本来であれば首相と政権党の幹事長の秘書が起訴されるという、政治不信を助長させる状況が生まれているのである。自民党時代には戻りたくない、かといってせっかく政権交代してできた民主党政権は政治資金問題で疑惑を抱えている。こういう政治状況を打破するために第三極の受け皿が必要なんだと思う。かっての新自由クラブ新党日本のような存在かもしれない。いっそのこと参院選の前に民主党内の反小沢派は党を割ってでて、自民党内の改革派、例えば河野の息子あたりと合体して新しい党を作ってはどうだろうか。とにかく小沢一郎の悪党面はもう見飽きた。ここ10数年なんだかんだといいながら日本政治のフロントで暗躍してきた彼だけど、そろそろ幕引きとなってもいいのではないかと、まあそんなことを思う。
岡田、前原、仙石、野田、枝野などなど。機は熟してきているかもしれないよ。そろそろ小沢に引導渡して政権交代以後の新しい政治風土を築くことを考えてもいいんじゃないか。などとちょっとだけ夢想してみたりもする。