荒野の決闘

荒野の決闘(字幕版)

荒野の決闘(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

  プライムビデオではなくHDDに撮りためた映画の中にあったもの。多分BSプライムによるものだと思う。もうそういう映画が何10本もあり観ないまま消すやつもあったりする。まあだいたいがDVDでもっているとか何度も観た映画だったりする。

 『荒野の決闘』はもう何度も何度も繰り返し観ている。ジョン・フォードの西部劇の中でも一二を争うくらいに好きな映画だ。まあこういうのはその時々で変わることになる。DVDももちろん持っている。確かワンコインで変えるという廉価版を買ったのだと思う。その時のことと感想が記録にも残っている。

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『荒野の決闘』 - トムジィの日常雑記

 もう15年も前のことなのねと、ちょっとしみじみ。

 今回も基本的には同じような感想。ヘンリー・フォンダの朴訥した男を好演している。長身だがやさ男というイメージのフォンダはこの映画で、こういう抑えた男というイメージを確立させたのかもしれない。後にこのイメージは『真昼の決闘』のゲーリー・クーパーなどの演技にも多分影響を与えているかもしれない。

 ジョン・フォードが描く無口でやや生き方や感情を表現するのがへたな朴訥した男というのは、例えばジョン・ウェインの『静かなる男』などにもあるが、多分『荒野の決闘』のヘンリー・フォンダによって確立されたイメージかもしれない。

 ジョン・フォードはこの映画の撮影を得意のモニュメント・バレーで行った。詩情あふれるカットが多く、ある意味でジョン・フォードの西部劇と詩情というスタイルもまたこの映画で確立されたのかもしれない。

 ドク・ホリデーを演じるビクター・マチュアはまだキャリアが浅く、この映画でスターダムに駆け上がることになる。ただし多くの人が指摘するように、結核を病むインテリなガンマンというドクの役柄に、肉体派俳優の彼はミス・キャストというのは割と納得できる。この映画のリメイクである『OK牧場の決闘』でドクを演じたのは確かカーク・ダグラスだったが、こっちの方がなんとなく病んだヤクザなガンマンの雰囲気が出ていたように思う。

 女優陣ではドク・ホリデーの情婦チワワを演じるのリンダ・ダーネルは当時人気のあった女優で確か二番目にクレジットされている。それに対してクレメンタイン・カーターを演じたキャシー・タウンズは実質的にはこの映画がデビューのようだ。元々は『ヴォーグ』のカバー・モデルだったらしく均整のとれたプロポーションで、身長187センチと長身のヘンリー・フォンダと並んで背の低さを感じさせない。おそらく170センチ以上、当時としてはかなり長身のモデルさんだったのではと適当に思っている。

 アープ兄弟はワイアット、モーガンバージル、ジェームズの四兄弟で、映画ではヘンリー・フォンダのワイアットが長兄のように描かれていて、モーガン・アープ役のワード・ボンドとちょっとつり合いがとれない。というかワード・ボンドの方が長兄のようにもみえる。このへんはかなり史実とは異なっているようだ。実際のところアープ兄弟は、バージル、ワイアット、モーガン、ジェームスという順になっている。

 この映画の詩情を支えているテーマの一つはこの映画が喪失劇だということ。ワイアット・アープも4兄弟のうち2人の弟を亡くす。敵役のオールドマン・クラントンは4人の息子を死なせる。ドク・ホリデーは愛人を自ら手術するも結果として死なせてしまう。ドク・ホリデーを追ってきた東部の恋人クレメンタインは、かっての恋人がヤクザな結核病みになっていることを知り、最後には彼の死と直面する。それぞれが愛する者を失う喪失劇。

 以前にも書いたことだが、この映画のラストシーンは映画史上にも残る名シーンだと思う。去っていく男を見送る女。バックに広がるモニュメント・バレーの風景。モノクロの画面は絵画のようでもあり抒情性を漂わせている。こうしたシチュエーションは『シェーン』、『第三の男』などと同じく映画史に残るものだとおもう。


My Darling Clementine (1946) Final Scene