太洋社自主廃業

【新文化】 - 太洋社、自主廃業へ 8日に説明会
 ついに太洋社の破綻が明になった。すでに昨年来、深刻な経営危機を迎えていたし、チェーン店を中心に有力な取引書店が帳合変更していた。今年になっても、秒読み段階といわれ、いつ発表になるかといわれていた。さらに先週になって、2/5日発表、2/8日債権者説明会という日程までが実しやかに噂されるようになっていた。
 なので今日についていえば、いつ発表になるかと気にしていたのだが、夕方近くになって出版社に順次FAXが届くようになり、破綻が明らかになった。
 しかし出版業界の低迷は深刻な状態に陥っている。昨年6月の栗田に次いでの太洋社である。さらにいえば一昨年、業界2位の大阪屋が経営危機に陥り、楽天大日本印刷グループ、講談社小学館等大手出版社のてこ入れにより、ようやく一息ついた状態であった。そこに業界四位の栗田の破綻、そして五位の太洋社の破綻である。これまで送品機能だけでなく、書店や版元に対しての金融機能を果たしていた取次の業務が成り立たなくなってきたのである。
 自分自身のことでいえば、大学を卒業して最初に勤めたのが大学内書店。それから神田村の専門書取次に勤め、出版社を数社経験して今の会社に勤めたのが40になる直前だった。本の流通に関わる仕事はたいてい経験してきた。そういう身からすると、今年還暦を迎える、キャリアの終末期にあって、自らが過ごしてきた業界が衰退しつつあることが何かとてつもなく淋しいものに感じられた。
 さらにいえば今の仕事にしろ、出版社での仕事にしろ、太洋社には商品を卸してきたし、何人もの人と関わってきた。そうした人々の顔や声が思い出されるにつけ、今回の破綻について悲しく切ない気分になる。
 「本が死なない」そう小さくつぶやくしかないような気分だ。