東京国立近代美術館-「ニッポンの名作130年」

 所用で午後お茶の水に出る。用件終了後時間があったので、竹橋まで歩き東京国立近代美術館(MOMAT)に行く。

 ウィークデイでも企画展「隈研吾展」は盛況のようで、当日券は終了とのアナウンスをしている。まあもとより隈研吾は興味ない。建築系は今一つというか、そこまで興味広がらない。昔、勤めていた会社の社長が「建築はもともと人文系だったのに、日本では理科系の技術に堕してしまった」みたいなことおっしゃっておられた。多分、建築系の話で、自分は文科系だから建築わからないみたいなことを言ったことへの反論だったのだろうけど。まあいわれてみれば、建築物は芸術作品でもあるのでおっしゃるとおりではある。もっともニワカなアート趣味の自分には、本当建築までは視野というか、スパンが広がらない。歳も歳だし、そこまでいかないだろうなという淋しい述懐。

 という訳で常設展示「ニッポンの名作130年」である。MOMATが誇る名作、8点の重要文化財を含む作品約250点の一挙公開的な展示もいよいよ9月26日までである。前期展示、後期展示で4階ハイライトや3階10室日本画の大幅展示替え等もあったが、すでに3回足を運び今日で4回目である。

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 前期展示、後期展示それぞれ2回観に行ったことになる。なので土田麦僊の『湯女』、小林古径『唐蜀黍』も安田靫彦『黄瀬川陣』、下村観山『木の間の秋』も堪能した。3回10室でも竹内栖鳳『『飼われたる猿と兎』、加山又造『春秋波濤』、『千羽鶴』も良かった。また6室でお安井曾太郎梅原龍三郎の並列展示も良かった。

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『春秋波濤』(加山又造

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奥入瀬の渓流』(安井曾太郎


 日本画は劣化の問題もあり長期展示が難しい。これらの名作ともしばらくお別れかなと思うとちょっと淋しいところでもある。還暦過ぎの身ではいつなにがあるかわからないし、これが見納めになる可能性だってある。名画の鑑賞は一期一会みたいな部分あるからなあともっともらしいことを思ったりもする。

 洋画ももちろん劣化もあるのだろうけど長期展示は可能だ。今年、MOMATには多分6回くらい行ってる。そうなると毎回観ている原田直次郎『騎龍観音』、和田三造『南風』などは少し食傷気味になる。重文だとしてもだ。

 「ニッポンの名作130年」の出品から外れた作品もちょっと気になったりする。そういえばMOMATで鏑木清方はしばらく観ていない。そのせいか美人画系、伊東深水山川秀峰なんかもとんとご無沙汰なような気がしている。画風や画題の趣向が面白い小倉遊亀『浴女その一』とか太田聴雨『星をみる女性』などもしばらく観ていない。まあ10月から始まる常設展ではしばらくご無沙汰の作品との遭遇も楽しみかもしれないけど。

 

 今回、気に入ったというかようやく作品と画家名が一致してきた作品。

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『作品』(今井俊満

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『朝のオートルート』(菅井汲)

 抽象画は正直理解不能な部分がある。何を意味するかとかそのへんの想像力や知識が欠如してる部分がある。でもこういうのってどうとでも取れる部分もあるし、美的価値というか面白味を感じるかどうかではないかと思ったりもする。

 自分は中学生の時にポロックの『秋のリズム』を画集かなにかで観て面白いと思った。なにかオーケストラのようだと思った。しかも調和のとれたウィーンフィルみたいなそれではなく、不協和音を奏でるオーケストラみたいなイメージだ。大学生くらいの時にフェリーニの『オーケストラ・リハーサル』を観て、不調和、混沌とするオーケストラみたいなものの映像化みたいなものを感じた。まああれはちょっとマンガチックではあったけど。

 でもカオスに陥ったオーケストラのイメージがポロックの絵から感じた。多分そういう部分で面白いと思った。それについては今でも同じような感じ方だ。まあ適当に絵から受ける印象、イメージみたいな部分、それを面白く感じるかどうか、それが抽象画の醍醐味なのかもしれないとそんなことを思っている。具象ではどうして受け取るイメージは描かれる具象物の文脈に制限されてしまうだろうから。

 そういう意味でいうと、まだまったく言語化できないけれど今井俊満も菅井汲も、なにか面白味を感じるようになってきた。二人の作品はけっこう地方の近代美術館に収蔵されている。そういう作品に触れると、「おっ、菅井汲」みたいな感じになってきてもいる。まあそんな訳で、ちょっとずつ抽象現代絵画もお勉強中である。