特別展「創立100周年記念 青梅信用金庫所蔵美術展」 - 東京都青梅市公式ホームページ
青梅信用金庫は青梅市に本店を置き東京多摩地域から埼玉県南西部で事業展開を行っている信用金庫である。この信用金庫が日本画の有数のコレクションを有していることは一部では有名らしい。コレクションの収集は昭和30年代に地元在住の大家川合玉堂の作品収集から開始され、その後も竹内栖鳳、横山大観、前田青邨、川端龍子、平山郁夫、加山又造など日本の近現代美術史を形成した画家たちの作品を体系的に収集しているという。
このコレクションは本展で定期的に展示されたり、多くの美術館の企画展に貸し出されているが、まとまった形で展示されることはあまりなく、これまでには2012年に一度青梅市制60周年特別展が開かれているのみという。今回の企画展は9年ぶりの大型展示企画展で展示点数は46点。特に収集の発端となった川合玉堂作品は12点にのぼる。
地方都市の市立美術館でこれだけの点数による企画展はなかなかできる者ではないと思う。青梅市立美術館は以前、玉堂美術館の帰りに寄ったことがあった。所蔵している玉堂の4曲の『赤壁』が観れるかと思っていったのだが、そのときは宮本十久一の回顧展が行われていた。
地方都市の公設・公益美術館が名画を収蔵する条件には、その地の企業や所縁のある篤志家からのコレクションの寄贈や寄託があると思う。三重県美術館はイオンだし、山形美術館は吉野石膏などが有名だ。そういう点で青梅市立美術館にとって青梅信用金庫のコレクションは重要な存在なんだと思う。
今回の企画展は6部構成となっている。
1.秋の音図会
2.山を描く 富士を中心に
3.青梅ゆかりの画家 川合玉堂
4.水辺の風景
5.花の競艶
6.逸品の数々
やはり気になったのは川合玉堂の作品。
近景と遠景の描き分け、近景の強調など、川合玉堂はけっこう浮世絵版画の構図を研究したのかなと適当に思っている。特に広重の雰囲気に似ているとはあえていわなけど、風景の写し取り方や空気間などにそんなものを感じる。
墨の濃淡による樹木の表現、揺れるような葦の表現など美しい絵で心に残る作品だと思う。ほぼ同じ構図で月がやや中央よりにある絵がたしか玉堂美術館で展示してあったように記憶している。
「杜鵑」(ほととぎす)はどこにいるのか。山の左側の点が飛び行く杜鵑なのだ。低く垂れこめた雲の間に連なる山々、孤高に飛ぶ鳥。これも心に残る作品だ。やはり大観はもっていくなと改めて思ったりする。
川端龍子の美しい絵である。龍子は大掛かりな大作はもちろん素晴らしいのだが、こうした作品でも美しさと緊張感の同居させている。ちなみ入場の際に記念品としてマスクケースを進呈いただいたのだが、その絵柄がこの絵だった。
マスクケースはこんな感じで内側に青梅信用金庫のロゴが入っているがたいへんお洒落。多分、青梅信用金庫が作ったものだろうけど小粋というか良い趣味で、企業のイメージアップに貢献しているかもしれない。青梅に住んでいたら口座作ったかもしれない。


肩を寄せ合いひそひそ話を交わす若い女性。深水は同じ図柄で日本髪に結った若い芸妓によるものも描いている。名都美術館所蔵で高崎タワー美術館で観ている。日本画の芸妓のそれは鏑木清方や上村松園の雰囲気もあるが、この洋髪の絵のはモダン風味があり伊東深水のオリジナリティが高いように思う。
大作『春秋波濤』や『千羽鶴』に通じる奇想というか、現代の琳派と称された加山又造のエッセンスが凝縮されているような絵だ。
川合玉堂のコレクションの素晴らしさ、さらに大観、龍子、加山又造の作品。会期は11月7日までなのでもう1~2回を行ってみたいと思っている。
会場を後にしたのは3時半頃。玉堂作品の心地よさもあり、ちょっと足を伸ばして御岳の玉堂美術館に足を伸ばしてみた。青梅市立美術館からは車で20分程度。5時閉館で4時半までに入ればなんとかなる。
ここでも玉堂作品につつまれて短い間だったがゆったりとした時間を過ごした。館内に入ったとたん、そして庭に入ったとたん、なにか時間が急にゆっくりとしてくるのを感じる。

