木曜はカミさんのデイサービスがお休みの日。勤めていた時にも昼飯を外食することが多かった。今日はどうせどこかへ連れてけとなるので、近場の美術館はどこかないかと物色。前から行きたいと思っていたのが、青梅の玉堂美術館。
玉堂美術館 Web :: 東京の奥多摩(青梅)にある美術館:: 日本画の川合玉堂作品を展示しております
川合玉堂は近代日本画の大家でもある。墨による線描と仄かで鮮やかな色彩による風景画を得意とした人である。日本画における風景画は、中国のある種の理想郷を描いた山水画の影響から発展したといわれる。それをより日常的で身近な風景として表出させたのが川合玉堂とは、解説書等に書かれている。
しかし川合玉堂の風景画は日常的な写実ではなく、そこには多分失われつつある日本人の原風景みたいなものが投影されている。それは神仙思想に基づく山水画とは別種のやはり理想郷であるのかもしれない。代表作ともいうべき『行く春』をMOMATで観た時にはある種の感嘆のような思いがよぎった。渓谷を行く小舟と風に舞う桜の花びら、これもまたかってあったかもしれない日本の風景である。『行く春』は、毎年春の時期にMOMATで展示されるので、自分は楽しみにしている。
さて玉堂美術館である。川合玉堂は40代前後から奥多摩や秩父の渓谷を取材し、晩年は青梅市御岳で過ごした。その所縁の地に美術館をという遺族や後援者、全国のファンの寄付によって1961年に出来たのがこの美術館である。設計は数寄屋造りの大家である吉田五十八である。この名前には聞き覚えがあったのは、岩波茂雄の熱海の別荘惜櫟荘の設計者だったからか。
また石庭の意匠が込められて美しく、建物と同様に渓谷の自然と調和している。
館内は二室に分かれていて一室には玉堂の掛け軸を中心に20点ほどの作品が展示されている。また別室では企画展として玉堂の内弟子だった菊池良璽の作品が展示してあり、さらにその奥には玉堂の画室が再現されている。
展示作品はみな美しく郷愁を誘うものが多い。そのなかで川合玉堂にしては珍しく人物像を描いたものがあった。なんでも息子の嫁を描いたものだとか。
美術館の目の前は渓谷の美しい川の流れとその対岸には旅館宿が点在している。静かで微かに水の音が聞こえるある種の別世界ようで、ひとときの間贅沢な時間を過ごすことができる。