リアン・ラ・ハヴァス

10日ちょっと前の朝日の夕刊の文化欄に紹介されていて気になった歌い手である。
全文引用する。

リアン・ラ・ハヴァス
■評:歌と演奏 並外れた呼吸感
 ギリシャ人の父親、ジャマイカ人の母親を持ち、ロンドンで生まれ育った24歳。昨年、デビューアルバムを発表したばかりの女性歌手がリアン・ラ・ハヴァスだ。英本国では大きな話題を集めているが、正直なところ、CDだけではその魅力は計り難かった。だが、ユーチューブなどにアップされているライブ映像をチェックするうちに、来日公演への期待が急速に膨らんだ。彼女が類い稀(まれ)なライブミュージシャンであることが窺(うかが)い知れたからだ。
 エレキギターをつまびきながら、ロック、R&B、ラテンなど様々な要素を孕(はら)みつつ、どこにも属さない感じの自作曲を歌い綴(つづ)る。ギターの弾き方も自己流っぽいが、歌との呼吸感がとてつもない。来日公演は5人編成のバンドを従えたものだったが、ソロでの弾き語りも多く取り交ぜ、そこでもバンド演奏と同等のグルーブを感じさせるのに驚いた(19日、東京・六本木のビルボードライブ東京)。
 ボーカルは派手に歌い上げるよりも、細やかなリズムやフロウ(流れ)を重視したスタイル。そこはジル・スコットなどに影響を受けたヒップホップ世代らしいが、生楽器主体のライブミュージックにそれを生かしているところがフレッシュに感じさせる要因だろう。曲が終わるごとに、客席では「可愛い」という声が乱れ飛んでいたが、一方で、若さに似合わないバンドリーダーとしての統率力も感じさせた。誰一人、無駄な音を出さず、全員がリアン・ラ・ハヴァスの音楽を歌うように、ソウルフルに演奏する。
 比べるなら、ロバート・ジョンソンか、プリンスか。少女っぽさすら残した新人女性歌手にそんなことを思うのは、並大抵の驚きではない。今年最大の発見にして、もちろん、最高のコンサートだった。(高橋健太郎・音楽評論家)
9月30日夕刊3面

なんというか聴いてみたくなるレビューである。イギリスでデビューして24歳でギリシャとジャマイカのハーフ。なんかこのバックボーンだけでなんとなくそそられる。イギリスのミュージック・シーンから出てくる新人は質が高いと私などは普通にそう思っている。それはビートルズからの伝統みたいなものともいえるし、単なる個人的な思いかもしれない。でも、女性ボーカリスト一つとっても、近年みたいな言い方になるけど、エイミー・ワインハウスだろ、アデルだろ。なんか抜きん出たタレントが出現してくる。
朝日のこの高橋健太郎氏のレビューもなんかそういうものを予感させるものがあると個人的に感じた。で、早速Youtubeをあたってみる。すぐにヒットする。それがこれだ。

いや驚いた。凄い才能である。ところどころに父親の血筋かギリシア風というか、オリエンタルな節回しもあるが基本はブルージー。見た目は確かにプリンス風かもしれないけど、音楽的にはそれはないな。ましてロバート・ジョンソンもないだろう。どちらかといえば、目をつぶって聴いているとなんとなくソリッドなスティーヴィー・ワンダーみたいに聴こえる部分もある。そのくらいポップな部分も持っているという意味合いだ。
アコースティック・ギター1本で歌い上げる詩情豊かな曲調と雰囲気は若い頃のジャニス・イアンを彷彿とさせる部分もある(あくまで雰囲気)。歌唱とか声質は全然違うけど、かれこれ30年近く前にトレーシー・チャップマンを聴いたときのような激しい衝撃を受けた。ある意味、アラ還近くになっても、いい意味で自分にこういうものを受け止める感受性みたいなものの残存があるのがちょっと嬉しいかもしれない。
ビルボードライブ東京もやるな〜とつくづく思う。この先物買いは過ごすぎる。メイリー・トッドといい、かなり先を読めるスタッフが何人もいるのだろうな。単なるオールド・ネームのドサ回りだけじゃなくて、こういう生きのいい新人をワンナイトのためによべる。本当に凄いと思う。
てなことで個人的に彼女、リアン・ラ・ハヴァスに嵌っている訳である。早速アマゾンでアルバムをポチッとしてみたりもした。届くのが楽しみである。

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