『セッション』を観る

 『ラ・ラ・ランド』が話題になっているし、映画としての評価も高いらしい。オープニングアクトの高速道路でのダンス・ナンバーなどは予告編からもワクワク感が高まる。
 ということでデミアン・チャゼル監督の前作『セッション』のDVDを観た。以前面白いという話をいろんな人から聞いていたので、入手住みだったのだが、なんとなく観そびれていた。深夜に睡魔と闘いながら観たので、あんまりのめり込んでということではなかったが、まずまず面白いし音楽を映像に溶け込ます才能を感じた。
 しかしちょっとした微妙感も感じた。まずなによりもジャズで何も「巨人の星」やらなくてもみたいな感じかな。ジャズの世界に熱血ドラマや熱血上昇志向はどうも似合わないような気がする。もちろんあの世界ももって生まれた才能と日々切磋琢磨なのかもしれない。この映画でも主題の一つとして取り入れられている、チャーリー・パーカーのシンバル事件。新人がクラブのジャムセッションに飛び入りで参加するも、演奏が今一つだとドラムのシンバルを投げつけられそこで失格となる。若手ジャズメンはどうしたらシンバルを投げつけられないようにと懸命に演奏する。ああいう象徴的なシーンにあるような過激な選別が行われる実力の世界なのだ。
 とはいえジャズメンのどれだけ人より速く、高く、エモーショナルに、そして誰もやったことがないような演奏をするかという努力、それをいかに簡単かつ余裕をもってやらなくてはいけないのがプロミュージシャンなのだと思う。
 この映画は音楽学院を舞台にしているため、生徒の熱血練習が繰り返されるが、クラシックならともかくジャズとなるとどうもそれが違和感を感じてしまうのだ。さらにいえばラストのドラムソロは感動的だけど、なんかそれでもシンバル飛んできそうな気がしてしまう。凄い演奏だがお前にはジャズ心がないぜみたいな。まあジャズを映像化するのはなんとも難しいなというのが率直な感想。
 とはいえこの『セッション』という映画嫌いじゃない。さらにいうとこの映画の中でドラムのスターとして主人公が神格化するバディ・リッチについて実はほとんど聴いたことがないのも、この映画に今一つ乗り切れないというか、感情移入できない部分かもしれない。リッチのアルバムは1枚くらいもってるかどうか、あとパーカー、ガレスピーと一緒にやってるのを1枚くらいか。
 バディ・リッチはビッグ・バンド・ジャズのジャンルで超絶技巧の人としてつとに有名ではあるのだが、自分にとってジャズ・ドラムというとアート・ブレイキーマックス・ローチエルビン・ジョーンズあたりがスターなのでようはすれ違いなのかもしれない。