初島周遊 (9月15日)

 ここのところ伊豆旅行に来ると必ず妻が初島へ行きたいという。二十代の頃に一度行ったことがあり、楽しかったのだそうな。自分は多分一度もない。熱海と伊東の間くらいにある小さな島である。熱海港から定期船が出ている。前回、伊東に泊まったときに最終日に行ってみたのだが、土曜日ということもあり熱海港に近接した駐車場が満車で断念した。今回はそのリベンジということに。とはいえ盛り上がっているのは妻のみで、自分は正直どうでもいい。

 今回の旅行、妻はやや風邪気味である。なのでできれば大人しくしていようと思っていたのだが、朝になると妻はほとんど治ったみたいなことを言っている。絶対違うとは思うのだが。

 

 宿を出たのはかなりゆっくりで10時をだいぶ回っていて、熱海港には11時20分くらいだったか。伊東と熱海、お隣りというイメージなのだが、実は車でもけっこうある。伊東の宿を目指して車を走らせているときに、熱海まで来るともう少しみたいに思うのだが、それからけっこう時間がかかり、夕食の時間ギリギリになるなんてことが何度もある。

 定期船乗り場に一番近い駐車場はウィークデイということもあり、まだ数台分空いていた。次の定期船は12時ジャストに出る。窓口で運賃往復2800円也を支払い待機。船を待つ観光客は圧倒的に若い人が多く、自分らのような高齢系は少なめ。あと例の外国人も割と少ない。「首都圏から一番近い離島、初島」というキャッチコピーのとおりで、若い者に訴求するようなリゾート観光地ということのようだ。

 妻は二十代のころ、ここでゴーカートに乗ったりして遊んだということらしいのだが、ホームページやパンフレットにはそういう遊具施設はなさそう。まあかれこれ40年近く前のことだから。

 

 定期船は快適。正味20分と少しの乗船時間だが客室内で寛ぐなり、甲板に出て景色を楽しむなり。船から見る熱海の町並みはこんな感じである。

 

 中央やや右上の白いコンクリ部分はひょっとして例の土石流事故の跡だろうか。しかし山から斜面上の狭いスペースに、よくもこう建物が林立しているものだと、ちょっと感心したくなる。

 フェリーや遊覧船といえばカモメへのえさやり。どなたかがカッパエビセンをあげているのだろうか、カモメはどこまでもついてくる。

 

初島

 定期船は、イルドバカンスプレミアム号とイルドバカンスⅢ世号という二つの船が就航している。プレミアム号の方がやや新しいようで、こちらは甲板から客室まで行くのに段差がない。行きはプレミアム号、帰りはⅢ世号だったが、Ⅲ世号だと客室には4人係で車椅子を持ち上げて段差を超えるようになっている。なんか申し訳ないので、妻は車椅子を下りて介助させながら段差を越えて客室に入るようにした。

 

 あとプレミアム号には下船の時にリフトで船から降りられるようになっていた。

イルドバカンスプレミアム号

下船用リフト

 ちょうど昼過ぎということで食事を。食堂街が軒を連ねているのだが、ウィークデイとはいえ昼時なのでけっこう混んでいる。まあだいたい手前の店から満席、混雑と続いていき、奥に行くほど空いていく感じ。なんの予備知識もないので、とりあえずやや奥の方にある店に入る。頼んだのはイカ丼と海苔丼。

海苔丼

イカ

 海苔丼、イカ丼ともに初島の名物らしい。海苔丼は岩ノリと明日葉のかき揚げが載っている。イカ丼はズケのイカ。味の方はまあ普通というかなんというか。多分、海鮮ものは近所のどん丸の方がイケるかも。まあご当地、名物に美味いものはなしというかなんというか。まあ観光地だし、それぞれ1200円という値段は比較的割安。そう思って食べればけっしてマズいという訳でもなく普通に食べることができます。まあ感涙するほどの美味さということはなし。旅行するとたいていの場合、宿でけっこう美味いもの食べているので、食に関しては感激することはあまりなかったり。

 あとでしらべると食堂街の中でも、けっこう評判の店もあるようで、レビューがたくさんあがっているところもある。まあそういうお店はおそらく混んでいるところだったのだろうと思う。でも多分、美味しいところは値段もそこそこで同じ丼も300~500円くらいは高目だったり。

 

 そして島内の遊歩道を時計回りに進む。最初は海沿いに平坦な道を進む。所々にかわいい的なモニュメントなものも散見。記念撮影するなど、割と余裕に周遊している。

イカトイレ

レモンポスト

 

 しかし平坦だったのは最初だけで、そこからは苦行の連続。

 地図の平面上の感覚だと、海沿いの遊歩道は平坦な道が続いているように思いがちなのだが、実はけっこうアップダウンがあったりする。さらに途中から島の真ん中あたりに行くことになるのだが、ここからはかなりハードな坂道や階段も続く。

 アジアンガーデンから島の中央部のレジャー施設サルトビや灯台に行くには長い階段を行くことになるのだけど、これを実は見逃していました。一度フェリー乗り場まで戻って民宿街から中央部に行くことも考えてけれど、民宿街のあたりもかなり急な坂道が続いている。断念しようかと思ったけれど、せっかくだからとまず自分が車椅子を担いで上まで行き、引き返してから手すりをつかまって登る妻を見守り、一部は手をひいてゆっくり登りました。

 引き返すには遠すぎるし、かといってこの階段はかなりしんどい。まああちこち行っている経験から正直にいわせてもらうと、初島周遊は車椅子では多分無理というのが結論。

 

 それから中央部に。サルトビは別料金でアスレチック遊具で遊べるようだが、もはやそんな元気もなし。灯台も解放されていて上まで行けるけどこれも別料金。そのまま遊歩道を下ったり、上ったりして定期船乗船場まで戻りましたが、もうクタクタ。

 自分はもう汗まみれで、着ているポロシャツはもう汗でびしょ濡れ。絞ればけっこう汗が出る状態。それどころか履いている綿のショートパンツもかなり濡れている。みると尻の部分もびっしょり濡れている。これって、あの、その、漏らしたときのような状態。もうそのくらい汗かきまくっている。

 とりあえず自販機で買った水飲んで、あとは船を待つ間は壁を背にして立ってました。なんかもう授業中に漏らして立たされている悲しい少年的心象風景のオッサン。

 かくして初島はというと、さして観光するでもなく、ただ暑い中歩きまわるだけで終わった感。妻は久々だったので、それでもけっこう満足しているみたいんで、「また来ようね」と言っているけど、多分、多分、今世ではもう来ることないと思う。少なくとも暑い時期は。

 初島周遊は一周約4キロ。若い人たちだと、ところどころに遊ぶ施設もあるし、日帰り温泉施設などもあるので、それなりに楽しめる。多少は磯遊びなんかも出来るので、家族連れだと一日遊べるかもしれない。でも高齢で、車椅子での観光だと、ちと微妙かもしれないなと思う。

 定期船を待つ間に近くのスーパーにアイスを買いに行く。そこは漁協が運営しているスーパーらしいけど、かなりというか、なんというか、鄙びた感が半端ない。アイスも冷蔵ケースの下の方に少しあるだけ。レジにいるのは、どうみても漁師50年やって引退しました。今は小遣い稼ぎに店番やっています的なおじいさんが一人店番している。

 アイス買うときに、「車椅子を押して島を一周したら汗だくになりました」みたいな話をしたら、「車椅子ではちょっと無理だよ」とおじいさんに同情されてしまった。

 初島周遊はなんか久々の苦行だった。まあいいか。