まぼろし博覧会 (2月26日)

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 伊豆で子どもが喜びそうなところでチョイス。前から気になっていたB級テーマパークである。「入って5分で精神崩壊」するとか「カオスな博物館」などとネットで取り上げられるところでもある。国道135号線沿いにあり前から気にはなっていた。

まぼろし博覧会 | 静岡県伊東市ニューカルチャーの聖地

まぼろし博覧会 - Wikipedia

 もっともいちおう出版業界の片隅にいたので、このテーマパークを運営しているのが出版社データハウスの鵜飼義嗣氏であることくらいはなんとなく知っていた。あのデータハウスである。

データハウス - Wikipedia

 自分たち80年代から90年代にかけて書店だの取次だの、出版社だので仕事をしていた人間にとって、データハウスはある種の出版社の象徴的存在だった。二番煎じ、柳の下のドジョウ商法、安直なデータ本、エログロナンセンス、ドラッグだの犯罪ものだの、ようは何でもアリだ。こき下ろしているのではない。それはある種の出版文化の急先鋒という程度の意味合いだ。

 当時話題になったのは、1992年に飛鳥新社が出したミリオンセラー『磯野家の謎』のすぐ後に、データハウスは「サザエさんの秘密』を出した。この本はまさに便乗商法で企画から刊行まで1ヶ月半だったらしい。

 『磯野家の謎』は200万部を超えるミリオンセラーになったが、二番煎じの『サザエさんの秘密』も50万部くらいは売れたという話を当時聞いたことがある。『磯野家の謎』を出した飛鳥新社は税金対策から翌年、夕刊紙で「ゲンダイ」「フジ」に追随するようなタブロイド紙の『日刊アスカ』を出して大ゴケし諸々内紛を起こす。それに対してデータハウスは特に内紛もなく、その後は秘密本をシリーズ化、さらには鬼畜本シイリーズ、東大理Ⅲ合格者のインタビュー集『東大理III 合格の秘訣』、『ハッカーの学校』シリーズなどコンスタントにヒット作を出している。

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 そして社長の鵜飼はデータハウスを続けながら、伊豆でこの「まぼろし博覧会」、「怪しい少年少女博物館」、「ネコの博物館」というB級テーマパークを企画運営する他、超ミニのセーラ服姿に女装した名誉館長セーラちゃんとしてまぼろし博覧会で出迎えをしているという。

 そしていきなり入り口付近にいらっしゃった。

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 こちらは車椅子で来ていたので、館長はきちんと館内の説明をしてくれ、館内には階段、段差がけっこうあるという。そこで入り口付近に車椅子を置かしてもらい妻は杖と私が手をひいていくことにする。

 そのときに横にいた子どもに、この方は出版社の社長さんをされていたんだと説明すると、館長(セーラちゃん)は真顔で「まだ社長は続けています。ただ今は出版はかなり厳しいので出版活動はお休みしていますね」と話してくれた。そして「そちらも業界の方ですか」と聞かれたので、「ええまあ、もうリタイアしちゃいましたけど」と答えた。

 引用した東経オンラインの記事にあるように、2011年の東日本大震災以降一気に本が売れなくなったということらしい。

「さっきの話の続きのようになるけど、やっぱり生活に余裕がないと本は買わないですよね。水やインスタントラーメンも買えないのに、誰が本を買うかって話です。生命を保つことで精いっぱいなんですね。

地震以降、世の中が無駄遣いはしないという流れになって、売れてた本も全部売れなくなりましたね」

 それ以降、鵜飼氏は軸足を伊豆での怪しげなB級テーマパークの企画運営に移してい


るようだ。特に聞かなかったが、そのB級テーマパークもコロナの影響で相当厳しい状況にあるのかもしれない。

 まあそういう予備知識をもとにカオスの園に入ってみる。

 まずは入園料を払う窓口に通じる階段の両側からしてカオスが始まる。

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 そして大仏殿に入るのだが、その手前になぜかデータハウスの書籍が販売されている。なんとなく懐かしさを覚えるのは、基本こういうサブカル的な安直本、けっして嫌いじゃないからかもしれない。

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 そして謎の大仏殿。

 もともとは閉園した熱帯植物園「伊豆グリーンパーク」を購入して作ったテーマパークなので温室を再利用している。

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 なぜかかっての社会党代議士、上田哲の選挙ポスターがある。訳がわからない。

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 そして「昭和の時代を通り抜け」というコーナーでは懐かしさ半分、怪しげさ半分。映画のポスターあり、レコードシングルのジャケットあり、ストリップ劇場のポスターありとカオスが増していく。

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 藤田まこと白木みのる、そして懐かしい東京ぼん太。相手役が松原智恵子というのが嬉しい。

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 さらに怪しげなマネキンによる昭和の生活風景。

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 オート三輪ダイハツミゼット。

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 ちょっとアザとさを感じつつも微妙に反応してしまうヘルメットと学生運動風景。黄色は民青だっただろうか。

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 という訳で正味1時間半くらい滞在しただろうか。怪しさ、ノスタルジックなカオスを満喫させてもらった。子どももけっこう楽しんでいたようで、次は友だち連れてくるといってた。自分たちは次は・・・・・・、多分ないと思う。まあこの手は一回くればいいかとも。まあ伊豆にはこれからも何度も行くとは思うので、ちょっと時間が余ったとか、美術館とかが閉館してたとかそういう時に緩い気持ちで来ることはひょっとしたらあるかもしれない。

 ちなみこれも後で調べたことだが、我らが(いつから我らになったか)名誉館長セーラちゃんこと鵜飼義嗣氏の年齢は多分74歳くらいだとか。ほとんど後期高齢者入り目前のバリバリ段階世代であのスタイルである。出版人としては多分成功者の部類だと思うし、ああいうサービス精神満点での女装趣味、そういうバイタリティ精神は、高尚でない出版業界のなんでもアリ感を体現してきたからこそだと思う。文化や教養も出版の一つの柱ではあるけど、それとは真逆な文化や秩序の破壊、そういうカウンターカルチャー、それも観念的ではなくあくまで実利と比例した活動というのも、やっぱり出版の一側面だと思ったりもする。

 B級カオス的テーマパークでなんとなくサブカル出版文化を思ったりしてみている。