日光周遊ー行軍(?) (1月1日)

 日光美術館の後、すぐに宿に戻ろうかとも思ったがせっかくなのでそのまま散歩に出る。といっても東照宮はめちゃ込みだろうからと日光駅の方まで行ってみることにした。いちおうメインストリートで土産物屋なども並ぶところだけど、ほとんど歩いたことがない。若い頃、健保の宿に会社の有志でよく泊まりに行った頃には、夜、酒を買いに行ったりしたことはあったけど記憶は曖昧。

 今思うと、宿に戻ることをあまり考えていなかったけど、日光美術館から神橋の交差点、それから日光駅まではほとんどがダラダラと続く緩い坂道を下る。ということは帰りはそのダラダラ坂を上ることになる。まあ一人なら別に問題はないし、日頃7~8キロのウォーキングだか散歩だかはよくやっているから大丈夫だとは思う。でも当然のごとくというか、妻の車椅子を押してである。車椅子ではゆるい坂を上るのは短い距離なら問題ないけど、それがずっと続くとなるとけっこうきつい。途中から帰ることを考えて暗鬱たる気分になる。

 天気は快晴なのだが、風が強くほとんど強風みたいな感じで前夜の雪がときどき風に舞うようで、行き交う観光客もみんな寒そうにしている。その中で通行人の間を縫うようにして車椅子を押して進む。とにかく風が強くて観光どころの騒ぎではない。

 日光美術館から東武日光駅までは後で距離を測ったらだいたい1.5キロくらい。平坦な道ならぜんぜん普通だし、下りだから楽なはずだが寒さと強風でけっこう難儀した気分。駅までの途中のカフェや甘味系のやっている店は、ほとんどが満員。みんな寒くてとにかく店に入るということなんだろうか。どこも満員で車椅子で入るには難儀しそうだったけど、日光駅のロータリーを回ってから甘味の店を見つけて入ることにする。そこはもともとかき氷屋さんなのだが、この時期はお汁粉セットなどがメインみたい。暖かい店内で暖かいお汁粉でほっと一息する。

 店を出てからどうするか、日光駅でタクシーつかまえて帰ることを考えたが、妻がせっかくだからもう少し散歩しようという言葉で歩いて帰ることにする。でもこれ絶対間違っていた。

 来た道を帰るとまた観光客の間を縫っていくことになる。上りでしんどいうえに人が多いとそれもストレスになるかなと思い、日光警察署の前を通って霧降大橋を渡り大谷川沿いの道を行くことにする。確かにこっちの道は車は通るけど人はまったくといっていいほど誰も歩いていない。しかし遮るものがないので山から川を渡るようにして強風が押し寄せてくる。北西からの風で滅茶苦茶強くて寒い。最初川沿いの側の舗道を歩いていたのだが、すぐに山側の方に移動する。でも風は強い。

 時折風が舞うのか落葉が凄いスピードでくるくると踊っている。これってマイルドな竜巻かと思うくらいな勢いである。そしてダラダラと緩い坂道がえんえんと続く。テレビの「バスサンド」でゆるい坂が続くときに、「こういうの膝にくるんだよ」と富澤が嘆くのをよく見るけど、まさにそんな感じだ。車椅子を押していると膝よりも脹脛や太ももが張ってくる。途中で何度か屈伸して伸ばしたけど、足つりそうな感じである。

 途中で、日光を車椅子を押して歩くのは絶対やってはいけないというのを実感した。しかも65過ぎのジイさんである。普通、ちょっと考えればわかりそうなことだけど、こういうのを身体で痛い思いをしないと学習しないアホなので致し方ない。車椅子なので自分よりも前で風を受ける妻もかなりシンドイとは思うけど、歩きを提案したのは妻なのでこれはしょうがないなとあまり同情はしない。押してる自分もシンドイから。

 強風、寒さ、坂道、車椅子を押しての行軍。なんだか心象風景的には八甲田山死の行軍みたいな感じである。まじに遭難するんじゃないかとも思った。途中で数台タクシーが通りかかるのを見た。おそらく東照宮方面から戻ってきたものだけど、おもわず手を上げようか思ったくらいだ。

 道を半分くらい行ったところで右手に日光小学校が見える。校門のすぐ脇のところに二宮の像がある。薪を背負いながら読書する二宮尊徳像である。最近見ないなと思ったりもする。戦争中は金属は国に拠出されたとか、戦後は本を読みながら歩くのは危険とか、様々な理由で勤勉奨励のこの銅像は撤去されたらしい。今なら本の代わりにスマホをみたいなことになるのか。社畜な良い子はノートパソコンが入ったリュックを背負いながらスマホで検索を続けました。メデタシ、メデタシ。

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 それからしばらく上るとほぼ体力的に限界近くなった。道路が神橋から来る道に突き当たる手前に土産物屋がある。そこに入って妻をそこに残して一人で宿まで車を取りに行くことにした。距離にしたら200~300メートルだけどここからの坂が一番キツイのでとても無理との判断。実際、一人でもけっこう坂道シンドかったのでこれは車椅子を押して上るのは絶対無理だったと思う。車のキーを持って出たいたので、駐車場からすぐに車を出して土産物屋に戻る。車に乗ってからは1分もかかってないかも。

 それから漬物とかちょっとした土産を買い妻を拾って宿に戻った。

 日光では車椅子を押しての観光は多分もうやらない。少なくとも宿から駅へ向かうのは無理。