タイガー立石展の後、いつものように常設展に行く。もっともその前に館内のレストラン(ペペロネ)でちょっと一息、色気より食い気に走るカミさんに付き合う。ここはイタリアンの割と本格的なレストランのようだけど、たいていケーキセットとか軽食を食べている。いつかここでしこたまワイン、チーズ、生ハムとか食したいと思っているが、多分果たされることはないかも。帰りの運転どうするみたいなところがね。ケーキはけっこう美味しくて、自分の頼んだチョコケーキもかなりカミさんに味見されてしまった。
そして常設展である。
2021.10.23-2022.2.6 MOMASコレクション第3期 - 埼玉県立近代美術館
MOMASの目玉的西洋画がいつものようにある。
モネの『積みわら』は何点くらいあるのだろう。ウィキペディアには30点が掲載されているが、それ以上という話もあるようだ。
クロード・モネ つみわら | ギャラリーフェイク・ギャラリー
国内ではポーラ美術館、大原美術館、そしてここMOMASの3点が有名だ。個人的には人物を配した大原美術館と三つの積みわらを描いたポーラの二つが一番好きだ。とはいえ夕日に映えるMOMASのこの絵も素敵だと思っている。
引用したサイトの記事にもあったが『積みわら』はほとんどが著名な美術館にあり、市場に出回ることはないようだが。たまにオークションに出ると80億とか120億という天文学的な価格になるという。自治体財政の改善するためだとか、民営化とか訳のわからん理由で、埼玉県が売却とかしなければいいと思うけど。たとえば大阪維新みたいな新自由主義を売りにしているところが自治体握ると、割と平気で売却とかしかねないかもと思ったりもする。
ピカソのキュビズム的作品だが、なんとなく親和的というか優しい感じ。あと色彩が豊かでポップな印象がある。身近でピカソが観ることができるのがありがたいうえに、けっこう好きな部類の作品。
後景の街の雰囲気はいつものシャガールだけど、手前の大きくクローズアップされた二つの花束は、ちょっとシャガール的ではないような感じもする。これもある種、近像型構図とでもいえるか。花束の表現はどことなくセザンヌを想起させような多視点である。セザンヌに割と近い表現の花束があったような気がする。MOMATの『大きな花束』がなんとなく似通った雰囲気がある。
シャガールがセザンヌの影響を受けたという話はあまり聞かないけど、近代絵画の父とも称されるセザンヌである。若い頃のシャガールがその作品を意識して、その技法を研究したことはあったかもしれないなと思ったりもする。
この作品については以前に書いたことがあるが、デルヴォーの作品の中でも気に入っている。MOMASでも何度か観ているが、直近では会津磐梯の諸橋近代美術館で観た。一目観て、「おっMOMASのやつ」って思った。
ジャングルの中で訥々に天幕のある寝台に寝そべる裸婦、左にはこれも唐突な汽車。全体の雰囲気はどこかアンリ・ルソーへのオマージュのようなものを感じさせる。なんとも不思議な光景だ。
シュルレアリスム、ベルギー出身ということで、マグリットと並び称させるデルヴォーだが、デルヴォーの幻想的な雰囲気はマグリットとは真逆な感じがしないでもない。マグリットのあの人を食ったような諧謔趣味、眩惑趣味は、あれはあれで凄まじいイメージ、想像力だとは思う。それに比べるとデルヴォーのイメージはもっとストレートな感じもする。まあどっちが好きかは、個人の趣向の範疇かもしれないけど。
この絵も初めてではないと思う。斎藤豊作は埼玉出身の画家で、いわばご当地画家の人だ。明治期に渡仏してラファエル・コランに師事したという。黒田清輝の後の世代のようで、帰国後は石井柏亭らと二科会を創立、その後再度渡仏してそのまま定住したが、作品発表機会には恵まれなかったという。
この絵のキャプションには新印象派的な点描技法と解説されている。点描というよりもどこかフォーヴィズ的な色彩感覚優れた作品のようにも思える。点描が大きなアンリ・エドモン=クロスに近いような気もする。
今回の常設展では「かぐわしき女性像」というミニ企画で日本画の美人画が数点展示してある。鏑木清方、伊東深水、埼玉所縁の小村雪岱などだ。
その中では鏑木清方の大作『慶長風俗』が目をひいたが、個人的には伊東深水のこの作品が気に入った。
蚊帳越しの足、女性の後ろ寝姿、艶っぽいがエロくはない。ちょっと心に残る作品。
そのほかでは鏑木清方の弟子である柿内青葉に師事したという埼玉出身の女流画家細田竹の『あかり』が出展されていた。ちょっと心に残る作品なのだが、ネットでも調べた限りでも細田竹の情報はほとんどない。作品収蔵もMOMASが数点もっているだけのようだ。こういう画家の情報はMOMASが積極的に発信してほしいと、そんなことを思った。