MOMASに行ってきた。ここに来るのは実に4年ぶりのことだ。
ここは同じ県内ということで家から比較的行きやすい美術館でもあり、前回観たディエゴ・リベラの時代、その前の日本のキュビスム、ピカソ・インパクト、原田直次郎の回顧展など魅力的な企画展も行われている。ただし北浦和公園の中にあり、ここは子育て世代にとっては手軽に子どもを遊ばせることが出来る場所ということもあり、休日は子ども連れが沢山来ている。それ自体はなにも問題はないのだけど、併設駐車場がない。なので近隣の有料駐車場を利用するのだけど、小さな駐車場が多くしかも狭い道路(一方通行が多い)を通って探すことになる。
さらにいえば駐車場から美術館までのアクセスも少しあるし、北浦和公園が自転車を入れないためだろうか、メインの入り口以外乗り入れ禁止の柵がある。これ車椅子で通るのに難儀するので、メインの入り口まで回る。ようは車椅子でのアクセスがあんまりよくない。駐車場、アクセスみたいなことでなんとなく敬遠してしまうことが多い。
ふらっと美術館に行くかとなった時に、例えば富士美とMOMASが頭に浮かぶとなんとなく富士美をチョイスしてしまうみたいな感じである。
とはいえしばらく行ってないということもあり、今回収蔵品の蔵出しみたいな企画展が開かれているというので行ってみようと思っていた。前週にも行ったのだけど、いきなりの雷、強風ありの雨で断念なんてこともあったのだけど。
2021.3.23 - 5.16 コレクション 4つの水紋 - 埼玉県立近代美術館
新収蔵作家 ポール・シニャック
新たに収蔵した作品で1985年の作品という。まだ筆触分割を科学的に行うという点描派には進んでいない。モネの絵に感銘を受けて画家を志したシニャックが印象派の技法に基づいて描いた作品といえる。モネやピサロの影響が濃い。
この作品ととともMOMASの目玉ともいうべき『ジヴェルニーの積みわら』やピサロの『エラニーの牛追い』も並列展示されている。おそらくシニャックの作品もMOMASの目玉作品の一つとなっていくのだろうと思う。
また光の点描という切り口から埼玉出身の画家としてMOMASが多数作品を収蔵している田中保の作品が5点、難波田龍起の作品なども展示されていて、いずれも好きな画家だけに楽しい空間になっている。
光、豊かな色彩感覚で抽象度の高い作品を描いたこの画家の作品を同じタイプでファンタジー溢れる作品を描いた瑛九と比較してみれるのも今回の企画展のいいところだ。
さらにヨットを所有し地中海沿岸に住み海をこよなく愛したシニャックとの関連から「水辺の情景」という海や水を題材にした作品を展示している。そこでは日本画の横山大観、菱田春草らも展示されている。ただし保護ケースの中で展示されているのだが、ガラスの映り込みが大きく、大観は対面にある難波田龍起の絵が映り込んでしまうし、まず観る者の姿が映ってしまうなど、いささか鑑賞を妨げる部分もあった。
その他では埼玉に生きた南画の女流画家奥原晴湖にスポットライトをあてていた。この画家は幕末から明治期初頭に水墨山水画で一世を風靡した南画の大家で、後半生は埼玉の熊谷市で過ごしたという。その時期には南画の水墨画から画風を変え細密な描写による作品を多数描いているという。
この人は若い頃には渡辺崋山にも私淑していたという。明治期は南画自体が衰退したこと、なんでもそれにはフェノロサや岡倉天心らによる排斥みたいな動きもあったという話もあるので、南画の画家はその後の歴史の中では消えてしまったような感じだが、奥原晴湖の画力は素晴らしいものがあり、新たにスポットライトがあたってもいいのではないかとも感じた。
4つの水紋にはさらに切り口として「絵画/言葉/文字」やMOMASの売りの一つでも「椅子の美術館」、屋外展示を含めた「公園のなかから 重村三雄」などが展開されている。それぞれ興味深い作品が多数あった。
さらに1階の常設展では2020年度のMOMASコレクション第4期の展示が続いていて、これは18日までということでちょっとラッキーだった。
2021年度のMOMASコレクションは4月24日からとのことだ。
2021.4.24-7.11 MOMASコレクション第1期 - 埼玉県立近代美術館
美術館のある北浦和公園も園内は噴水あり、所々にオブジェありで寛げる場所だ。何気に公園の外れには黒川紀章のカプセルが置いてあった。