ハローワークに行く

 昨日、今日とハローワークに行って来た。

 9月の末に仕事を辞めて初めて来た。本当ならすぐに行かなくていけないのだろうが、今一つ乗り気にならなかった。なんていうか必然性というか。

 仕事を辞めた場合、例えば定年退職や途中退職ということなら当然雇用保険受給の手続きがあるから、すぐにでも手続きの必要がある。でも、自分の場合は雇用保険がおりない。中小零細とはいえ10年も役員をやっていたので、雇用保険の対象から外れている。なので行ってもしょうがないかなというある種の諦観。

 12月からは満額ではないので僅かな金額だけど年金も出た。多少の、本当に僅かではあるけれど蓄えもある。そうなると積極的に求職活動を行うことには躊躇いもある。勤めていたところからは、なんらかの形で残ってみたいな話もあるにはあったけど、基本断った。なぜかって、残るくらいなら辞めなかったし、辞めるには辞める理由がある。

 去年、辞めた時の年齢は64歳、「When I'm Sixty Four」である。本来なら暖炉の前で孫に囲まれ、ワイン飲みながら、奥さんにセーター編んでもらうはずである。仕事なんかしてる場合ではないではないか。というのはまったく意味がない、今考えたことだけど、大学卒業してから40年間、ずっと仕事をしてきた。6回会社を変わったけど、いわゆる失業期間というのがなかったので、ハローワークのお世話になったことがない。金曜日に仕事を辞めてから翌月曜日から次の会社に行くみたいなことを続けてきた。

 仕事は基本嫌いじゃないし、労働の価値は質より時間がモットーみたいでとにかく働き詰めに働いてきた。最初に勤めた会社がいささかブラック系で、3月~5月は毎月100時間残業が普通だった。その残業代は7月だかにまとめてもらうみたいな仕組みで、後で聞いたら4~6月に残業代多くもらうと社会保険料とかに影響されるみたいな話だった。

 若い時にそういうのに慣れると仕事の居残りは当たり前になる。次の会社、その次の会社とかではほとんどゼロからの仕事の立ち上げみたいなことやっていたので、とにかく仕事はいくらでもあった。その頃に仕事にパソコンを活用するみたいなことも始めた。MS-DOSMultiplan、Lotus1-2-3、桐なんていうOSやソフトの時代だ。

 30代で出版社の営業部長なんかをやらされた時には、週に1~2度徹夜なんて時期もあった。毎日外回りして、帰社後に残務整理、報告書作成や予算執行などなど。それでも仕事自体は楽しかった。

 30代の後半で結婚して移った会社に結局最後までいた。共稼ぎ、子育てをしながらの仕事は楽しくもありシンドクもあった。50になるかならないかの時に妻が病気となり、仕事、家事、育児、介護とすべてがやってきた。毎日、仕事に行き、ろくでもない会議とかに出て、それから子どもを学童まで迎えに行き、病院に行くなんて日々を続けた。

 仕事とプライベートの諸々を両立させる秘訣は職住近接にあるというのが持論である。妻が倒れた時は家を建てたばかりで、夫婦それぞれがローンするということで毎月の払いは15~6万あったか。医書系出版社に勤めていた妻のほうが給与も多かったので、とたんに大ピンチになった。会社は田舎にあったので、その近所に中古の家を買い、建てたばかりの家は売却してなんとかピンチを脱した。

 通勤は徒歩5分、昼休みには帰宅して妻がデイケアとかに行かないときは面倒みたり家事をしたり。子ども関係の学事も仕事を抜け出していくみたいなことも出来た。そういったことで仕事にも影響はあったが、通勤時間がないので夜7時8時まで仕事をしても問題なかったし、なんなら土日に空いた時間に会社に行くなんてことも普通に出来た。

 仕事はじょじょに管理系の仕事が増えてきた。人を使う仕事、予算の執行、親会社や取引先との折衝などなど。基本現場系というか、汗かいてなんぼだったので、デスクワーク、会議、部下への指示や日々小さなことから大きなことまで判断していくというのは、苦手というか胃の痛くなることばかりだった。胃薬は毎日必ず飲んでいるし、40代後半から会社辞めるまでに多分胃カメラは10回くらいやっている。

 幹部社員を叱責することは日常茶飯だったかもしれない。周囲からすればただのパワハラオヤジかもしれないが、叱責する側も実はすり減っている。一人の時に「仕事辞めたい」が口癖になっていた。まあ全部自分の主観だから、こればっかりは怒られた相手からすれば、「ふざんけんなよ」みたいなこともあるだろう。でも、仕事の手順を考え、業務改善の具体的な方向性も示しても、それがまったく行われない、進捗しないとなるとどうしてもモノ言わなくてならなくなる。ペーパー類も多分、下から上がってくるものの10倍くらいは作ってきた。

 そんなこんなもあり、仕事辞めたときにはもう出来れば人に使われるのも、人を使うのもこりごりみたいな気持ちもあった。実際のところ、仕事を辞めてからは胃の痛みもほとんどない。まあ来週胃カメラ呑む予定なのだが、でっかい時限爆弾があるかもしれないけど。

 仕事を辞めてやることがなくなり脱力、モチベーションダダ下がりオヤジとなるかというと、実はそんなことはなかったりもする。辞めたと同時に近くに住んでいた兄の病状が急速に悪化し、その介護や病院への付き添い、ケアマネらとの交渉とかかなりシンドイ日々が続いた。暮れに兄は急逝したが、そうなると兄の遺品整理やら、住まわせていた団地の売却とかそんなことにも奔走した。

 同じ頃に子どもが家を出ることになり、その部屋探しや新生活の準備とかそういうこともあった。2月から3月にかけて引っ越し先の千葉まで10回くらい往復した。

 年と共に仕事をこなす能力の劣化、処理スピードが落ちている。仕事をしている時は毎日帰りがけに翌日すべきことを書き出す。時期によるが、給与計算であったり、週次、月次の会計関係の集計、会議のレジュメ、社労士や税理士との打ち合わせ事項のまとめなどなど。まあTODOリストみたいなものだ。それをこなすことに傍線引いていく。

 そういうのが仕事を辞めてからはなんか一日ワンアイテムみたいになってしまった。そして全体として手を付けない、後回しにする。確定申告のまとめ1月から明日やろう明日やろうといいながら放置して、結局2月の中旬にやった。実際やり始めるとせいぜい1~2日もあれば出来ちゃうのにだ。

 まあそういう意味ではダラダラとしているのだろう。数少ない友人で現役に人はみんな、「仕事見つけろ、働け」と言ってくる。よせばいいのに補助金か何かの関係でハローワーク行ったついでに職業訓練だのなんのと資料を持ってきて「こういうのはどうだ」という。嫌味な奴らだ。

 今は求人情報は自宅のPCでも見ることができる。様々な条件とかをつけて保存みたいなことはマイページを作ると出来るようだ。そういうこともあって先週自宅PCで求人登録の仮登録はしたので昨日は本登録のためにハローワークに初めていった。最初に受付票をもらい待つこと15分くらいで窓口へ。担当は若い男性だったが、ひょっとするとこの人も非正規臨時職員かもしれない。最初にやっぱり「去年9月に辞められてから、今まで何をされていたのですか」という質問。まあ通り一辺倒な説明をする。求人についてはやはり年齢的には警備員や清掃員などが多いですという説明。まあこのへんは予想どおりである。

 いろいろ話をしながら、マイページの本登録の手続きをしてくれた。その後、職業訓練の話になると、もう一度受付を通してから職業訓練の相談ということになるが、混んでいるので2~3時間は待つことになるという。そこでいったん出直すみたいなことで、今日改めて職業訓練の相談にきた。

 対応してくれたのは中年、40代後半か50代くらいの女性。ひょっとしたらもう少しいっているかもしれない。まずは念押しのように職業訓練はあくまで求職活動の一環だということ、漠然とこれをやってみたいみたいな動機ではダメだと言われる。さらにまず求人情報をきちんとみて求職活動を行うことが前提みたいな話を長々とされる。

 そこで、求人情報をみても職業訓練に合致するような求人はあまりないのが実情だし、そういう言われ方は単にハードルあげてるだけではみたいなことをやんわりと言う。あくまでやんわりと。すると当然のごとくそういうことはありませんという。

 とりあえず興味のありそうなことということで、IT応用みたいな講座とかについて聞いた。手順としては「職業訓練相談票」を記入して持ってくるようにと言う。その内容はこんな感じである。

★希望職種に対して不足しており、訓練校で習得したいと思う知識・資格・スキル等 を記入してください(できる限り具体的に)

★訓練終了後は希望職種で、どのような仕事(仕事内容)をしていきたいか記入してください(できる限り具体的に)

★なぜその仕事がしたいと思ったか、きっかけ等を簡単に記入してください

 話では、この 「職業訓練相談票」の段階でいろいろと突っ込みが入り、二度三度と突っ返されるようだ。それから実際に職業訓練校への願書を作成するのだとか。その間にも職業訓練校に個別にアポを取り見学などを行うのが望ましいのだとか。

 まあなんだかんだとハードルをあげているとしか思えない。ましてもう少しで65になるジイサンに公費で訓練などもっての外みたいな感じもするし、それ以前に冷やかしならお断りみたいな感じでもある。

 とはいえ、こっちも仕事へのモチベーションが高くないこと、差し迫ってないことなど、負い目というか引け目の部分もあるにはある。コロナで仕事を失った現役世代、若い世代がシンドイ目にあるのに、リタイアしたばかりのジジイが割り込むみたいなのは確かにオカシイかもしれない。自分が現役世代なら、「ジジイ、どいてろ」みたいな感覚になっても仕方がないかも。

 まあ老人の独り言「一寸の虫にも五分の魂」的にいえば、パソコンを使った単純作業も出来るし、多分データを使った資料帳票作成にもおそらく普通の人よりは長けているという点では利点はあるかなとも。若い人はITのスキルはあってもやっぱり仕事のスキルはなかなかこれからという人が多い。自分のように30年くらいPCを使って事務仕事やってきた人間はそのへんの応用は割と利く、しかも最低賃金くらいで働くことができる。まあそういうことだ。ということで、しばらく断続的にハローワーク通いが続くかもしれない。

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