14回目の大塚国際美術館

 久々、大塚国際美術館にやってきた。どのくらい久々かというと、その前に来たのが2018年の11月のこと。子どもが神戸で開かれる声優のイベントに行くというので、それに便乗するというか、連れていってやるという名目で淡路に来た時以来である。

 試みにこれまで何回この陶板複製名画の美術館に来たのかを記憶や記録をもとにひっくり返すと、これまでに13回来館していることになる。最初に行ったのが2008年のゴールデンウィークだ。観光地によくある美術館の一つのノリで出かけて、その壮大さと展示作品の質量に驚いたことを記録していた。

 その後の来館記録をつけてみるとこんな風になる。

 1.2008年5月 淡路・姫路旅行

 2.2009年1月 淡路・奈良・大阪旅行(新世界・通天閣

 3.2010年1月 淡路旅行

 4.2010年5月 淡路・倉敷旅行 (大原美術館

 5.2011年1月 淡路旅行

 6.2011年5月 淡路~神戸~京都旅行

 7.2013年5月 淡路旅行

 8.2015年1月 淡路旅行

 9.2015年5月 淡路旅行

10.2016年5月 淡路・名古屋旅行(名古屋ボストン美術館

11.2017年5月 淡路・京都・名古屋旅行

12.2018年4月 淡路・倉敷旅行(大原美術館

13.2018年11月  淡路・神戸旅行 

  だいたいにおいてゴールデンウィークか正月に行っていることになる。間が空いているのは多分子どもの受験とかで旅行に行けない都合があったのだろう。またこれも何度か書いているが、なぜ淡路かといえば健保の契約しているホテルで安く泊まれるというのが一番の理由。さらにいえば以前は淡路というと関東圏からはあまりにも遠いということもあり、正月やゴールデンウィークでも簡単に宿が取れたのだけれど、次第に抽選でも当たらなくなってきている。おそらくだけど定年延長とかがあって2012年くらいに65歳で団塊世代がリタイアする時期、多分そのあたりからだったんじゃないかと密かに思っている。

 14回目ということで、多分十分にリピーターなんだと思うけど、やっていることはいつも同じで、いつも同じような回り方をするし、だいたい同じような作品を時間かけて観ている。そしていつも同じように時間がなくなって、最後の現代美術は駆け足になる。

 どうしても自分の趣向性から近代絵画中心になってしまうので、出来るだけルネッサンスあたりに時間をかけてみようと心掛けている。そしてここ何回かはおざなりになる古代や中世美術をひととおり観ようとそれなりに時間をかける。するとまたいつものように最上階にある現代絵画が時間とれなくなる。今回もまた同じ轍を踏む感じで、ピカソやダリなんか閉館間際に2~3分、文字通り走るようにして観た。

 その広さは延床面積29,412平方メートルで日本の美術館では六本木の国立新美術館(29,412平方メートル)に次ぐという。土台1日で回るのは難しいということなんだと思う。理想的にはウィークディに2日くらいかけるのが一番いいのだろうけど、地元民でもなければ難しい。

 それと思うのは、以前、10年近く前は連休中であっても割と観客数は少なかったと思うのだが、ここ5年くらいは土日休日だとかなり混むようになってきている。美術館の営業努力も多分にあると思う。自分はよく知らないが、米津玄師が紅白でのライブ映像をここで撮ったことで話題になったという。入場料3300円は観光地の美術館としても相当に高いのだが、質量等から口コミでこの美術館の話題は広がったいるのだと思う。

 この美術館についてはパンフレットにも掲載されているが初代館長であり、一代で大塚グループを大企業に育て上げた大塚正士氏の文章「一握りの砂」が載っている。この文章がけっこう感動的で読ませる。

 所詮は複製絵画であり、オリジナルとは比べ物にならないかもしれない。しかし大塚氏が書いているようにここで観たものをいつか本物の絵を観てくれればいいという、まさにそのとおりなのだと思う。

 ここの入場料は前述したとおり3300円と高いが小中高生は550円と安価に抑えている。校外学習など教育の場として活用してもらうことが考慮されているのだろう。実際、ウィークデイだったこともあり団体での中高生が多数来ていた。

 自分自身、ここで複製画を観ることから絵画鑑賞に目覚めた部分も多分ある。ここで観たものを海外で実物にという訳にはいかないが、ここで観たものが海外からやってくるという企画展には盛んに通った。大塚国際美術館に展示されている作品は1100点弱と聞いているのだが、多分自分はその1割弱くらいはオリジナルに接していると思う。大塚で観たあの絵がやってくるということで楽しみにしながら行った企画展も数多いし、逆にルーブル名品展とかオルセー展のようなもので、この絵大塚で観たみたいに記憶がよみがえるものも多数あった。

 以前から思っていることだが、陶板複製画は劣化がなく1000年近い耐用年数があるという。絵画は修復を行っても永遠に残すことができないだけに、陶板複製画として保存することは歴史的アーカイブとして必要なことだと思う。さらにいえば洋画に比べて日本画はさらに保存が難しいときく。実際、国立近代美術館でも頻繁に展示替えを行っているのは、日本画は常設展示が難しいためということもあるようだ。そうであるなら、日本画の陶板複製画はもっと普及してもいいのではないかと、そんなことを思う。

 大塚の陶板複製画も一番最初に試作したのは尾形光琳の『燕子花』だという。あの大型の陶板は障屏画にぴったりだと思う。後世に残すためにもぜひ日本画の陶板複製画をと思う。実際に陶板を制作している大塚オーミ陶業のサイトにこんな企画があり制作した日本画が期間限定で大塚国際美術館で展示されるという。

「多彩な表現展」-陶板でめぐる日本美の世界-:2020年12月29日から大塚国際美術館で開催|ニュース|大塚オーミ陶業株式会社

「多彩な表現展―陶板でめぐる日本美の世界―」2020年12月29日から大塚国際美術館で開催 | 大塚オーミ陶業のプレスリリース | 共同通信PRワイヤー

 12月29日から2月21日までの限定展示なのでちょっと行くのは難しいかと思う。また展示されるのは11点ということだ。こういう試みがもっと広がればいいと思う。出来れば国が助成して大塚国際美術館の日本美術版ができないかと思ったりする。マスク配布に何百億も使うのであれば、そのくらいの費用なんとかなるのではと皮肉の一つもいいたくなる。

 また今は少子化が進んでおり、学校の統廃合による廃校が増えているという。廃校をリニューアルして地域の美術館にすることは難しいだろうか。作品を陶板複製画にすれば、世界の、日本の名画を気軽に楽しむことが出来る。各地域の廃校利用の美術館がそれぞれ特色のある複製画を置くことで地域の活性化にもつながるのではないかと、そんなことを思ったりもする。箱物ではない文化施設を既存施設の再利用で補っていく。そういうことも必要なんじゃないかと、まあこのへんはかなり適当な思いつきではある。

 大塚国際美術館は撮影が自由である。今回も楽しんだものを幾つか。

 お約束のシスティーナとスクロヴェーニ。

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システィーナ礼拝堂
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スクロヴェーニ礼拝堂

 割と真面目に観た中世系統展示とマンガチックなキリスト。

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 モネの大睡蓮

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 一休みの色気より食い気。

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 年賀状に使いたい絵柄。

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 割と風俗画、通俗画っぽいティツィーアノ。

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 上野西洋美術館でおなじみのフュースリー。この人はだいたいにおいて、幽霊、亡霊、小鬼みたいなものを題材にすることが多く、夢、象徴性みたいなものの走りなのかもしれない。18世紀から19世紀にかけてドイツで活躍したスイス人。なんでも教養があり、数各語をあやつるインテリだったのだとか。

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 ウィリアム・ブレイクとかと共時的に呼応している部分があるようなないような。上野西洋美術館でいつも目にするのはこの絵で、けっこうインパクトがあるので何となく覚えていたのだが、大塚国際で彼の絵を何度も観ていたのかと改めて思った。

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「グイード・カヴァルカンティの亡霊に出会うテオドーレ」(フュースリー)