ミケランジェロと理想の身体

 久々、国立西洋美術館へ来た。

 ここは、自分にとってはもっともベースとなる美術館と思っているし、昨年一昨年は多分年に6回くらいは来ているところなんだが、今年はなんとなく足運ぶ回数が減じている。前回来たのは3月くらいなので、もう半年くらい来ていない。

 今回も目当てはいつものように常設展なんだが、企画展としてミケランジェロをやっていたと記憶していたので、こちらを先に観ることにする。

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michelangelo2018.jp

http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/pdf/2018michelangelo.pdf

 正直なところをいえば彫刻についてはまったくわからない。なので西洋美術館に来ても有名なロダンのそれには一瞥くれるくらいである。箱根の彫刻の森とかも何度か行ったことはあるにはあるが、正直面白みを含めて理解できない。総合芸術としては立体表現なので絵画よりも上位にあるかもしれないのだろうが、なまじ立体性というリアル感が具象性として想像力や作者の志向性を減じているようなそんな気がもしてしまうのだろう。

 ミケランジェロについてもダビデ像ピエタよりもどうしてもシスティーナ礼拝堂の天井画を思い描いてしまう。ミケランジェロルネッサンス最大の総合芸術家だとしても、どうもその彫像作品から受けるそれはなんとなく工芸作家、職人のごとくという印象を抱いてしまう。まあ言い過ぎ、素人の妄言の類だろう。

 今回、この企画展の目玉はミケランジェロの実作が2つ来ていること。一つは「ダヴィデ=アポロ」、もう一つが「若き洗礼者ヨハネ」。

 

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ダヴィデ=アポロ

 

 「ダヴィデ=アポロ」は未完成のまま放置されてしまった作品だという。確かに後部には切り出したままの大理石のそのままの状態になっている。「ダヴィデ」か「アポロ」か特定できないのは、後部に背負っているのがダヴィデの投石器アポロの矢筒かをミケランジェロが掘り出すことなく放置してしまっているからとか。まあようするに未完成作品なのである。とはいえミケランジェロの真作である。これはもう有り難く享受する以外にはないのだろう。

 

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若き洗礼者ヨハネ

 もう一作「若き洗礼者ヨハネ」はなぜか頭部が大理石にしてはみょうに黒ずんでいる。これはこの作品がスペイン内戦に巻き込まれ、戦火の中大きな損害を受け、残ったのは14の石片で全体の40%足らずだったという。そこから修復、復元されたものがこの作品なのである。

 そうやってみるとどことなくブラックジャックのようにも思える。と思っていたら、公式サイトにブラックジャック虫プロ?)とのコラボにより、漫画による解説もできていた。抜群の企画力ではないかと思う。