僕達急行 A列車で行こう

僕達急行 A列車で行こう [DVD]

僕達急行 A列車で行こう [DVD]

  • 発売日: 2012/09/14
  • メディア: DVD
森田芳光監督の遺作。鉄道オタク、所謂鉄ちゃんを主人公にした映画。
DVDの予告編とかでなんとなく気になっていてTSUTAYAで借りてきて観る。
感想としては、まあまあ良かった。肩に力の入っていない、ユルユルのB級、プログラム・ピクチャーの香り満載の映画であるが、これは多分監督の意図するものかもしれない。ネットとかの評価を見ると意外と高評価を得ている。森田監督の遺作ということもあってか、なんとなく観る側も少し暖かい眼差しになるのかも。
お話は松山ケンイチ瑛太という二大若手俳優が鉄道オタクに扮し、その趣味が幸いしてなんとなく仕事とかがうまくいってみたいな感じか。あんまり抑揚もないし、お話的にはたんたんと進んでしまう。出てくる人物もみな基本的に善人ばかりだし、リアリズム的な観点からすればつっこみ満載かもしれないし、とにかくご都合主義の一言でかたずけられてしまうかも。
でも個人的にはこの映画、たぶん嫌いではない。この映画にはいいところが、それも重要なポイントが二つあるから。それはというと、
誰も死なない。男と女が寝ない
から。
かって村上春樹はデビュー作『風の歌を聴け』にこんなことを書いた。

鼠の小説には優れた点が二つある。まずセックス・シーンの無いことと、それから一人も人が死なないことだ。放って置いても人は死ぬし、女と寝る。そういうものだ。

この言葉には、ある種の芸術作品に対するある種の普遍的といえるかどうかはわからないけれど、一つの審美観が含まれていると思う。そして私はそういうものの観かたみたいなものが嫌いではない。
大それた言い方かもしれないけれど、その手の世界観からすれば、「僕達急行」はまんざら悪くは無い映画だといえないこともないと、たぶんそんな風にまどろっこしくではあるが、思う。