HANA-BI

HANA-BI [DVD]

HANA-BI [DVD]

  • 発売日: 2007/10/26
  • メディア: DVD
以前にCSの日本映画専用チャンネルが無料放送をやっていた時に録画したものをなんとなく深夜に一人で観た。と、それ以前に北野たけし監督作品で、ヴェネチアで金獅子賞を取った、ある意味彼の最高傑作であるという作品をずっとスルーしてきたのである。いつかは観なきゃいかんかな〜、でもあんまり面白くないんだよなたけしの映画って、みたいな葛藤・・・・・、そんなものでもなく、とにかく食指が動かなかったということに尽きるか。
観た感想は一言でいうと、普通かな。セリフを極端に廃し省略に省略を重ねる演出。さらにセリフは聞き取りにくく、ある種の効果音のごとくでもある。このへんは『あの夏、いちばん静かな海』なんかにも通じる部分でもあるかな。この人、無声映画でも撮ったらいいのかもとか思ったりもして。
そしていつもの暴力、暴力、暴力。ヤクザ、ヤクザ、ヤクザ。前にも書いたかもしれないが、北野映画東映ヤクザ映画、あるいは深作欣二のオマージュとして成立している部分が多大だとは思う。ただし東映映画や深作映画のもつ粗雑、猥雑なバイタリティや汗臭い生的なものが欠落し、みょうにソフィスティケートされてもいる。メタヤクザ映画みたいな雰囲気である。このへんが欧州、たぶんフランスとかで持て囃されるのかなとも思ったりもする。
しかし映像美や技巧的な演出とかどれをとっても、なんとなくいつかどこかで、誰かがみたいな感じもしないでもない。新しさ、独自性とかとなると、あくまでも個人の感想ではあるが、あんまりないかな〜とも思う。
この映画は幾つかの縦軸がある。不治の病に冒された妻との残り少ない日々を過ごす主人公である元刑事の日々。犯人に撃たれ下半身不随となり絵を描くことで心の空白を埋めようとするその同僚の日々。そして回想でありながら、同時的に描かれる彼らの刑事としての現役時代の日々。それらが何の説明もなく、交互に描かれることによって映画が進行していくというロジックである。
元刑事と妻との交流は切なく儚げである。下半身不随の同僚の日々もまた大いなる孤独につつまれている。そのへんをえらく美しい映像とともに描くところがある意味この映画の真骨頂なのかもしれない。
それに対してヤクザ映画としてのこの映画の描写はえらくアッケランカンとしている。暴力とそれによる死も、みょうにリアリティがなく唐突である。そのへんを面白く感じるかどうかが、たぶんこの映画を好きになれるかどうかの分かれ目みたいなことなのかもしれないな。
で、私はというと、やっぱり北野映画はちょっと駄目かもしれないな。もう暴力とその手が全般的にやや苦手になりつつあるしね。たぶん残り少ない人生の中にあって、観るべき映画、聴くべき音楽、読むべき書物が溢れかえっているのである。このへんは端折ってもいいだろうと、たぶんそういう範疇に属する映画だというのが正直現時点での結論。