再びROGER NICHOLS Small Circle of Friends

Small Circle of Friends

Small Circle of Friends

  • アーティスト:Nichols, Roger
  • 発売日: 2005/03/08
  • メディア: CD
暮にも書いたのだが、その後もずっと聴いているアルバムなのである。
ロジャー・ニコルズ ROGER NICHOLS&THE SMALL CIRCLE OF FRIENDS - トムジィの日常雑記
家ではCDプレイヤーに入れっぱなしで時間があるとかける。それほど時間もないけど。都内とかにお出かけの際には、iPodでずっとこれっばっかり。車ではiPodにも入れているが、ハーディスクナヴィにも落としている。そのうち娘とかでもロジャー・ニコルズって、聴けばすぐわかるようになるかもしれない。今のところ娘はビートルズに関してはほぼ総ての曲をとりあえず聴けば「ビートルズ」って答える。
聴けば聴くほど良いアルバムであることを実感する。アルバムとなるとけっこう良い作品でも、傑作は数曲で多少捨て曲みたいなものもある。所謂、玉石混淆である。なのだがこのアルバムに限ってはまったくハズレ無しである。まあしいていえば最後の曲「ST.BERNIE THE SNO-DOG」が唯一ご愛嬌ナンバーだろうか。なんたってヨーデルと犬の吠え声である。

1. Don't Take Your Time
2. With A Little Help From My Friends
3. Don't Go Breaking My Heart
4. I Can See Only You
5. Snow Queen
6. Love So Fine
7. Kinda Wasted Without You
8. Just Beyond Your Smile
9. I'll Be Back
10. Cocoanut Grove 2:33
11. Didn't Want To Have To Do It
12. Can I Go
13. Our Day Will Come
14. Love Song, Love Song
15. Just Beyond Your Smile (Single Version)
16. I'll Be Back (Single Version)
17. Let's Ride
18. The Drifter
19. Trust
20. St. Bernie the Sno-Dog

1968年作のアルバムなので時代的な限界もある。全曲が2分台で3分を超えるのは5曲目「SNOW QUEEN」のみである。ビートルズでも3分超は「ヘイ・ジュード」「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」あたりからである。ポップ・ミュージックは3分以下が当たり前という時代だったのである。でも寸足らず、物足りなさを感じるかというと、これがけっこう完結している作品が多い。このアルバムでもそういう印象である。
1曲目の「Don't Take Your Time」。当時としては珍しい管弦楽のピチカート奏法の独特のイントロから疾風怒濤のようなアップテンポであっという間に終わる。恋する男の気持、なかなか意思表示してくれない相手に切々と訴えかけるみたいな歌詞か、意味合いは「じらさないで」とか「恋を急いで」みたいな感じか。この曲のことをこんな風に紹介する方もいる。
Don’t Take Your Time / Roger Nichols - ☆★My Willful Diary★☆

2曲目はいわずと知れたビートルズのヒットナンバー。ジョー・コッカー他カバーされることの多い曲だが、1968年というとほとんど同時代的にカバーしたことになる。ほんわかした感じはSMALL CIRCLEの代表曲の一つ「THE DRIFTER」と少し似通った感じもする。
3曲目「DON'T GO BREAKING MY HEART」。美しいバラード曲はバート・バカラック作。AMレコードのソフト・チューンの王道をいっている感じがする。この曲名をググるエルトン・ジョンとキキ・ディの大ヒットデュエット曲ばかりが検索される。あの曲も良く聴いたけど、タイトルなんて覚えていなかったから、けっこう意外な感じがする。でもこの業界では、同名曲なんていうのはザラにあるんだね。

Roger Nichols & the Small Circle of Friends - 03 - Don't Go Breaking My Heart (by EarpJohn)
5曲目「SNOW QUEEN」は前回も書いた。キャロル・キングの当時としては少し実験的な曲。ジャズテイストあふれる変拍子を取り入れている。
6曲目の「LOVE SO FINE」。このアルバムの中でも白眉となるようなポップ・チューンである。いかにも1960年代的な明るい、アップテンポの曲。アルバムの解説ではピチカート・ファイブ的みたいなことが書いてあったが、小西康陽はこのあたりをネタにしたというかインスパイアされたんだろうとは想像できる。この曲を聴いているとなにか無性にレナウンのイエイエのCMとかシルヴィ・バルタンとかを思い描く。60年代のそういう雰囲気に満ちた曲である。

Roger Nichols & the Small Circle of Friends - 06 - Love So Fine (by EarpJohn)
世の中には奇特な方、あるいは愛好の士とでもいうのだろうか、この曲の様々なバージョンを紹介しているブログとかもある。眺めているととても愉しい。
Youtubeでは他にもAMレコードの御大ハーブ・アルバートのインストナンバーなんかもアップされていてこても嬉しいところだ。
スモール・サークルはロジャー・ニコルズとマレイ・マクレオド、メリンダ・マクレオドの兄弟による三人組ユニットなんだが、ほとんどロジャー・ニコルズの作曲と中性的なヴォーカルにばかりスポットがあたる。個人的にはこのユニット、このサウンドを際立たせているのは、実はメリンダ・マクレオドのヴォーカルなんじゃないかとそんな気がしている。彼女のちょっと素人っぽい、ときになげやり感もあり、それでいてこのサウンドにマッチしたグルーブ感あふれるヴォーカルなしにこのアルバム、ユニット、サウンドは成立していないんじゃないかと、まあ勝手に思い込みである。
聴いている時に感じるイメージはなんていうか、60年代の健康的で溌剌とした女子高生、女子大生とかの感じだな。もちろん白人で中産階級のおきゃんな女の子、ファッション的にはトレーナーにミニのフレアである。もうこのへんになるとただの妄想だな。68年はベトナム戦争末期でアメリカ的にはそろそろ繁栄終了に突入時代なんだが、このアルバムの、メリンダ・マクレオドのヴォーカルにはなんとなくアメリカの繁栄の最後の煌きとか幻想みたいなものさえ感じられる。ひょっとしてこの時代にあってもすでに懐古的ナコンセプトみたいなものもあるんだろうか。
そういえばこのアルバムの中には、黒人音楽のアーシー、ブルージーなイメージがほとんど見当たらない。ソウル、R&B的なものとは無縁な印象だ。時代的にはすでにモータウンサウンド全盛時代なのに。
「LOVE SO FIN」の軽快な曲調、ラストにメリンダの長い息継ぎなしのソロが続くと、良き白人文化への愛惜みたいな感傷すら個人的には感じる。

7曲目「KINDA WASTED WITHOUT YOU」はちょっとビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」とか個人的に想像させるナンバー。8曲目」「JUST BEYOND YOUR SMILE」は一転、アコースティック・ギターをフィーチャーしたフォーク・ロックナンバー。なんとなくバッファロースプリングスティーンとかを連想する。イントロのギターはスィーヴン・スティルスだといっても私は信じるかもしれない。
9曲目はこのアルバムで2曲目のビートルズカバー曲、「I'LL BE BACK」。やはりアコースティック・ギターをフィーチャーして美しいコラース・ナンバーに仕上げている。
次の「COCOANUT GROVE」、11曲目「DIDN'T WANT TO HAVE TO DO IT」も美しいコラースナンバー。たぶんラヴィン・スプーンフルの曲だったと思う。
13曲目からはボーナス・トラックになるのだが、その最初の曲「OUR DAY WILL COME」。たぶんこのアルバムの中でも一番好きな曲。それどころか我が人生のフェアヴァリット・チューンの十指に入るかもしれないくらい好きになってしまった曲である。曲調、アレンジ、歌詞、もうなにからなにまで好きになってしまった。特にピアノとストリングスがえらく秀逸。そこにメリンダをメインしたコーラスがからんでいく。

Roger Nichols & the Small Circle of Friends-Our day will come
最近だと一昨年だったかドラッグと酒で夭折した歌姫エイミー・ワインハウスのバージョンが有名だけど、元々はルビー・アンド・ロマンティックスのスマッシュ・ヒット・ナンバー。1963年3月23日に1週、ビルヴォードのナンバー1を記録している。
この1963年という年はポップ・シーンにとってとっても重要な年だったんじゃないかと個人的には思っている。「ヘイ・ポーラ」や「ブルー・ヴェルヴェット」も1位になっているし、なんといっても我が坂本九が「スキヤキ」で日本人として最初で最後(今のところ)の全米ヒット1位を記録した年なのだから。そして翌年の1964年からはビートルズによる怒涛の快進撃が始まる年だから。
話が脱線した。「OUR DAY WILL COME」である。この曲は本当に素晴らしい。ウィキペディアにもこの曲の項目だってあるし、もう随分と沢山のアーティストがこの曲をとりあげている。
Our Day Will Come - Wikipedia
さらにこんなブログとかでも紹介されていて大変嬉しかったりもする。
むぎ茶の昭和懐メロ&CMソング大特集: OUR DAY WILL COME (前編:1960年代ヴァージョンいろいろ)
むぎ茶の昭和懐メロ&CMソング大特集: OUR DAY WILL COME (後編:1970年代ヴァージョンいろいろ)
むぎ茶の昭和懐メロ&CMソング大特集: OUR DAY WILL COME (続編:インストゥルメンタル・ヴァージョンいろいろ)
個人的には、もうこのロジャー・ニコルズ&スモール・サークル・オブ・フレンズのものがもう群を抜いて好きなのだが、オルガンをフィーチャーしたジュリー・ロンドンとかカーペンターズのものも捨てがたいものがあったりもする。
エイミー・ワインハウスのレゲエ・バージョンをいいんだけど、あの髪型とタトゥーがちょっとヒクというかなんていうか。この人歌手としてはもう本当に天才というか、まさにディーヴァ的なんだが、もう見た目が真性ジャンキーそのものなんで、ちょっと。出てきた当初から凄い人が出てきたな〜とは思っていたけど、ちょっとこの人あぶないという印象持っていたら、案の定あっけなく死んじゃった。実働自体は3年くらいなんじゃないのだろうか。そのへんはかってのジャニスを彷彿させるというか、まんまというか。でも生き方含めて全般的にエイミー・ワインハウスは雑というか、だらしなさ度は群を抜いているような気がするな。
再び「OUR DAY WILL COME」について、基本的には歌詞も含めてけっこうお気軽なラブ・ソングなんだけど、表題の「OUR DAY WILL COME」にいろんな含蓄がつまっているのだと思う。

Our day will come (Our day will come)
And we'll have everything
We'll share the joy
Falling in love can bring
No one can tell me
That I'm too young to know
I love you so
And you love me
Our day will come (Our day will come)
If we just wait a while
No tears for us
Think love and wear a smile
Our dreams are meant to be
Because we'll always stay
In love this way
Our day will come
Our dreams are meant to be
Because we'll always stay
In love this way
Our day will come
Our day will come

まあ普通にいえば「時がきたわ」とか「私たちの時がきた」みたいなんだろうけど、例えば「我々の時代がくる」とか硬くいえば「時機到来」みたいな感じか。なんかそういう前向きな感じがいいんだろうし、エイミー・ワインハウスとかはなんとなく反語的なイメージで歌っているような気もしないでもないけど。「時が来るわ(でも本当は来ないに決まっているんだけどさ)」みたいな感じ。
その他のバージョンでは、スパイラル・ステアケースもマジー・ビートもなかなか捨てがたくいい感じに聴ける。 シェールもまだ若い時分なのにけっこう姉御肌全開でいい味だしていると思う。ウィキペディアのカバー・アーティストの中にソニー・スティットもいるんだけど、ちょっと気になる感じだ。ワン・ホーンでバリバリ吹いているんだろうか。
Youtubeで見つけたのだが、ダリル・ホールがアコースティック・バージョンでいい感じに演奏しているのがある。これがまた泣かせる。基本、マジー・ビートタッチなんだがアット・ホームな暖かい感じでいい。ロジャー・ニコルズのことを書いていたのだが、結局「OUR DAY WILL COME」でダリル・ホールでまとまりなく終了である。