大塚国際美術館

大塚国際美術館|徳島県鳴門市にある陶板名画美術館
大塚国際美術館 - Wikipedia
観光地に林立するミュージアムの一つだろうくらいに高をくくっていた部分もあるにはある。陶板複製画の美術館だし、まあ〜たいしたことあるまいとそんな感じだった。で、せっかく橋を渡って四国まで足を延ばしたわけだし、鳴門まで来たのだから話のネタみたいな感じでいってみたわけなのだが。
まず入場料が馬鹿高い。大人一人税込み3150円である。もちろん妻の障害者手帳の恩恵で本人と介助者の私は半額になった。正直割引だから入場したみたいな部分もある。正規の値段では少々ひいてしまい断念したかもしれない。でもとりあえず入ってみたわけだ。
障害者用の駐車場ということで建物の反対側に回って業務用の地下駐車場から入った。だいたいにおいてこの建物、正面玄関から入ってすぐにエスカレータで階上に上がる。その部分が実はB3=地下3階なのである。そこからB2、B1、1F、2Fと上がっていく。イメージとしては山一つをくりぬいて作ったという印象だ。そう、とにかくデカイ、限りなくでっかくて広いのだここは。
それで地下駐車場から業務用エレベーターでB3の展示スペースに行く。見学順路は通路床に矢印があるのだが、最初に通されるのがこの美術館で最も有名な環境展示スペース、システィーナ・ホールである。そして原寸で描かれたミケランジェロの壁画、天井画とご対面する。

システィーナ礼拝堂 - Wikipedia
システィーナ礼拝堂(しすてぃーなれいはいどう、Cappella Sistina)はサン・ピエトロ大聖堂に隣接し、バチカン宮殿内に建てられた礼拝堂。ミケランジェロが描いた創世記などの大天井画、最後の審判の壁画で有名。教皇を選出するコンクラーヴェの会場としても知られている。


感動である。圧巻である。とにかくビックリである。驚天動地的な心象風景である。凄すぎる。陶板複製画であるとはいえ、原寸でここまで見事に再現されてしまうのである。それからはもうずっと驚きの連続である。同じ環境展示であるスクロヴェーニ礼拝堂。古代、中世の壁画群。
B2、B1のバロックルネッサンス、近代絵画。1F、2Fの現代絵画。とにかく著名な絵画はすべて網羅されている。オリジナルは当然劣化されているのだろうが、この陶板複製画はみなオリジナルの美しさをそのまま描き出している。妙に綺麗すぎるため、オリジナルの古びた部分との対比でややもすれば重厚差に欠ける恨みもないではない。でも複製画とはいえここまで系統だって揃っていれば、美術史体験としてすばらしいことではないかと思う。
3150円はけして高くない。いやかえって安いのではないかとさえ思える。今回ほど娘を連れてここにこれたことを嬉しく思ったことはない。娘に美術の、絵画の素晴らしさを体験する素晴らしい機会が作れたことを素直に喜びたい。全てを理解しろなどとは思わない。数枚でもいい、お気に入りの名画ができればいいと思ったりもした。
しかしこの美術館の広さは尋常じゃないぞ。パンフレットによると延床面積29,412平方メートルは日本でも最大級の広さだという。これがどのくらい広いかというと、例えばルーブル美術館73,000平方メートル、国立西洋美術館17,227平方メートルと比べてみればいい。ようは上野の西洋美術館よりも広く、ルーブルの半分の規模ということだ。国内では昨年六本木にできた国立新美術館49,830平方メートルに次ぐものだという。
私の人生で最も感動したのはニューヨークのメトロポリタン・ミュージアムだが、ここの広さは185,800平方メートルと別格ではある。ここを日程の都合で半日で消化したのはある意味一生の不覚の一つでもあるのだが、今回の大塚国際もまた4〜5時間しか滞在できなかったのは悲しいことだった。いや〜残念。
とにかく複製の利点はいろいろな形で引き出されていると思った。例えばダ・ヴィンチの最後の晩餐である。これを原寸で壁面両側に展示している。修復前と修復後のそれぞれ複製をだ。なんとも感心させられるではないか。
もともとは大塚製薬の関連会社である大塚オーミ陶業の特殊技術を喧伝するという性格もあったと聞く。そこにより高度な文化的使命、そういう性格を帯びさせたのは、陶板画の半永久的な保存性だ。パンフレットの中にはオリジナル原画は風化、劣化によりいずれは失われてしまうものだが、陶板画は1000年、2000年というほぼ永久的なスパンでもその美しさが失われることがないという。
1000年単位での文化の保存継承という使命。そして複製とはいえ西洋絵画の名作を網羅することで、ここで名画のの美しさ、魅力を感じた人々がいつか海外で出向いてオリジナルに対面する、そういう契機にもなれるのである。本来、市場主義と文化性はたいてい相容れないものになるのだけど、大塚国際美術館は企業自らの技術という商品力と文化性の幸福な融合という稀有な例なのではないかと思う。
最後に私の大好きな1枚でもあるジャクソン・ポロックの「秋のリズム」をバックに記念撮影なんかもしてみたりもした。そう、気軽に記念撮影とかも出来てしまうのも嬉しいではないか。オノボリサン上等である。

ちなみにこの絵はメトロポリタンでオリジナルとも対面している。わが美しきニューヨークでの思い出の一つでもあるわけだ。
それにしても大塚国際美術館バンザイ!、である。個人的にはもう礼賛の嵐でもある。機会があったらぜひ行ってみるべき美術館、特に子ども連でぜひ行かれることをお勧めする。