東京都現代美術館のコレクション展は「被膜虚実 特集展示横尾忠則―水のように・ 生誕100年 サム・フランシス」。これは3階で行われている。ホックニーを観た後で、B階で行われている。「あ、共感とかじゃなくて」も一応目を通したので、実は全然時間がなくて、3階に上がったのは閉館30分前くらい。もう全然時間がなかった。そこにサム・フランシスと横尾忠則である。
MOTコレクション | 展覧会 | 東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO (閲覧:2023年9月2日)
エレベーターであがるといきなりサム・フランシス出現。
《無題》無題(SFP85-58)、(SFP85-95)、(SFP85-109)、(SFEP85-110)
1985 アクリル・カンヴァス 寄託(アサヒグループジャパン株式会社所蔵
サム・フランシス - Wikipedia (閲覧:2023年9月2日)
サム・フランシスを初めて観たのは、大塚国際美術館の陶板複製画か、あるいは大原美術館だったか。大塚だったら《ホワイト・ライン》、大原は《メキシコ》あたり。作品解説にあったけど、サム・フランシスはパイロットで飛行事故で入院した時に、絵を描き始めたという。なにかそういう啓示的な形でああいう絵を描くようになったかと、ちょっと興味を覚えたのが最初。
その後は上野の西洋美術館や川村美術館なんかで観たような記憶がある。抽象表現主義はなんていうのか、取っつきやすいかそうでないかくらいにしか受容基準がないけど、ポロックやサム・フランシスはなんとなく自分的には受け入れやすいような。
特にサム・フランシスはマーク・ロスコみたいに、なんていうか大きな壁というか、荘厳、崇高みたいな、ちょっと人を受け付けないみたいな部分がなくて、なんていうか割とファンタジーっぽい感じもしないでもない。難波田龍起や瑛九みたいな感じと割と似通ったみたいな。
改めてウィキペディアを読むと、意外と日本との関わりは大きいみたいで、出光興産の創業者出光佐三がコレクションしていたとか、さらにいえば佐三の娘真子はサム・フランシスの四番目の奥さんだったとか。
出光真子は自身もアーティストで、フランシスとの間にもうけた子どももアーティストとして活躍している。彼女の伝記『ホワット・ア・うーまんめいど』は岩波書店から出ているという。いわれてみるとこの本、読みはしないけど、ペラペラとページ捲ってみた記憶がないでもないな。
しかし諸々知らないことが多すぎるというか、知らないまま人生送ってきたんだなと改めて悔恨の日々みたいな感じ。40代だったらビデオ・アーティスト出光真子の伝記とか、けっこう面白く読めたかもしれないのにね。
横尾忠則の作品はもう凄すぎて、凄すぎて。これはもう時間が全然足らなかった。次回来ることがあれば、まずは3Fで横尾忠則とサム・フランシスの洗礼を受けてからホックニーを流してもいいかもしれない。
寒山拾得がモチーフになっているらしいのだけど、自分的にはこれ忌野清志郎と中井戸麗一にしか見えない。2021年の作品だからRCは関係ないとは思うけれど。
これは受胎告知がモチーフか。ガブリエルがマシンガン持っているところとかが面白いと思うべきか。名画をモチーフに武器持ってというと、森村泰昌の「晩鐘」のパロディみたいのあったけど、あれは持っているのはマグナムとかそういうのだったか。
1980年、ニューヨーク近代美術館で開催されたピカソ展は、横尾忠則に大きな衝撃を与えたのだという。それから20年の時を経てこの作品が制作されたという。滝とさかさまの子どもたちのコラージュ。ホックニー展でも、ホックニーによるピカソ受容の作品が多数展示してあったが、それを思い返しても横尾のピカソはなかなかなインパクトだ。しかしなぜ若き日のピカソなんだろう。
そしてとにかく凄すぎる横尾忠則。
駆け足で巡ってしまったけれど、繰り返しになるけどもっと余裕もって観たい。サム・フランシス、横尾忠則以外にも魅力的な現代作家の作品が多数あった。
初めて知る作家さん。解説文にもアニメのキャラクターとか作家もアニメやゲーム好きという説明文があった。いわれてみると、ちょっとヒットした映画『サマ・ウォーズ』的な雰囲気もあるような、ないような。
やっぱり福田美蘭。いろいろ楽しませてくれるなとも。
とりあえず東京都現代美術館は楽しかった。外観、中身もそこそこというか、相当金もかかっただろうし今はなかなかこの規模のミュージアムは難しいかもしれない。1995年3月に開館というので、建設を決めたのは鈴木俊一都知事の時代。なんだかんだいってもいい時代だったんだなと思ったりもする。
その後はアサヒビールや鹿島が管理運営し、読売の氏家が館長を務めていたとかで、読売との関係も深いみたい。いわれてみるとホックニー展の主催も読売新聞のよう。なお現在の館長は住友商事の元社長とか。
大企業のひも付きというのも、もろもろ考えさせる部分はないでもない。でも今の経済情勢では日本の有数の大企業がバックにいるというのはある意味文化についていえば、有難いことかもしれない。新興企業や利益と配当を重視する新自由主義的な経営者が跋扈する企業とかだと、外資に売っぱらうとかよくない方向に行くだろう。大阪あたりだったら、こういう美術館はもっと早い段階で民間に売り飛ばしていたかもしれない。
東京都現代美術館 - Wikipedia (閲覧:2023年9月2日)