泉屋博古館「オタケ・インパクト」(12月11日)

 友人に誘われて泉屋博古館で開催されていた「オタケ・インパクト 越堂・竹坡・国観、尾竹三兄弟の日本画アナキズム」を観てきた。

 泉屋博古館はその名前は知っていたけど、訪れたのは初めて。もともと京都にある住友家の美術コレクションを展示する美術館で、2002年に分館として住友が再開発した泉ガーデンタワーの一角に開館したものだと。

 

 

 尾竹三兄弟については、正直なところ尾竹竹坡しか知らなかった。以前、東近美で竹波の掛軸画で西洋思潮を取り入れた未来派キュビスム的作品を観て、こういう人もいたのかと思ったくらい。なので日本画でモダンな作品を描く人くらいの印象しかなかった。

 そのとき観た作品をいずれも観ることができたが、なんでも大正末期に西洋画の新思潮の一つである未来派に接近して、八火槐を結成してその第一回展の出品作79点のうち59点を竹坡が出品。その中に未来派風、フォーヴィズム風、キュビスム風など様々な画風の作品を描いたという。

 それらの新思潮風の作品以外のオーソドックスな日本画を観ていると、尾竹竹坡という人は画力抜群の人という感じだ。ただなんとなくなんでも描けてしまう器用貧乏みたいなところがあるかもしれないとも思った。

 尾竹三兄弟は、長兄尾竹越堂、次兄尾竹竹坡、三男が尾竹国観という。

尾竹越堂 - Wikipedia

尾竹竹坡 - Wikipedia

尾竹越堂 - Wikipedia

 

 新潟県出身で若くして絵を始め、富山の売薬版画や新聞の挿絵などを描いていたという。売薬版画とは富山の薬売りのパッケージの絵みたいなものだろうか。その後、上京して越堂、竹坡は川端玉章に入門、その後二人は小堀靹音にやまと絵を習った。さらに竹坡は梶田半古にも学んでいる。二人に遅れたが三男国観も上京してやはり小堀靹音に入門。以後、越堂、国観は歴史画を中心に画業を続けた。竹波は様々なジャンルに挑戦をする。

 三人は文展でも入選を重ねたが、岡倉天心横山大観ら主流派とぶつかり、三人は7回文展で全員が落選する。そのことに憤りを覚えた竹坡は美術行政を改めるためとして衆議院選挙に立候補するも落選。多額の借金を背負ったという。そういう点も含め、かなり癖の強い性格、人物だったようだ。

 昭和期には三人とも帝展に出品したが人気はいま一つ、画業も精彩を欠いたという。美術史のなかでも忘れられた画家だったようだが、2007年に美術史『美術誌『Bien(美庵)』2月号の巻頭特集「きみは、尾竹三兄弟を知っているか?」で注目され、再評価されるようになったという。以後、何度か三兄弟にスポットライトをあてる企画展があり、また三兄弟が住友家15代当主である住友吉左エ門友純と親交を結んでいたことから、今回住友所縁の泉屋博古館で回顧展が開かれることになったということらしい。

特別展 オタケ・インパクト 越堂・竹坡・国観、尾竹三兄弟の日本画アナキズム | 展覧会 | 泉屋博古館東京 <六本木>

 この企画展は15日までなので、ギリギリ間に合ったという感じでもあった。

 

 企画展でそれぞれの絵を観ると、やはりその画力の確かさを改めて感じる。とにかく絵が上手い。ただし、なんとなくだが奥深さみたいなものが欠ける。特に越堂、国観の歴史画についていうと、どこか表層的というか深みがないというか。たとえば安田靭彦や前田青邨の歴史画についてよくいわれるような精神性みたいなものが感じられない。ただただ有識故実に即したきれいな歴史画みたいな感じだろうか。

 さらにいうと、いずれの絵も群像画というか、沢山の人物を配置しているのだが、構図的に今一つというか散漫な印象を感じるものが多かった。

 

 尾竹三兄弟は、岡倉天心横山大観などいわゆる学校派(東京美術学校)と対立したということがいわれているが、おそらく三人の絵には技術面に優れているが深みに欠けると思われたのかもしれない。

 

 正直なところあまり後に残らないような部分もなきにしも。とにかく見事な作品が多いのではあるのだけど。竹坡の様々な西洋思潮への挑戦も、いろいろ習作的にやってみたのだなとは思う。でもそれでどうなったか、さらなる日本画的発展はあったかというと、多分それはない。未来派への接近として主催した八火会も3回で終わり、彼がその後も抽象画などを進めていったということはないらしい。とりあえず新機軸で耳目を集めたが、あまり売れなかったので終了みたいなことだったのだろうか。

 

 今回、三兄弟の絵、特に越堂や国観の歴史画を観て、もう少し歴史画、近代のやまと絵をきちんと観てもいいかなとは思った。今年はこれも知らなかった画家だが、邨田丹陵の歴史画なども目にした。小堀靹音を中心にした歴史画の企画展とかやらないかとちょっとだけ思ったりもした。

 

《絵踏》 尾竹国観 1908年 絹本着色 1面 泉屋博古館東京所蔵

 

《漁樵問答》 尾竹越堂 1916年 絹本金地着色 六曲一双 個人蔵

 

《九冠鳥》 尾竹竹坡 1912年 絹本金地着色 六曲一双 個人蔵