ジョー・ウォルシュという名前でどれだけの人が反応するか。まあ音楽好き、ロック聴いていた中高年層限定だろうか。
ジョー・ウォルシュはイーグルスに途中加入したギタリスト。あの売れに売れた「ホテル・カリフォルニア」でダブルネック・ギターのドン・フェルダーとともに有名なツインギター・ソロを披露するバンダナ巻いたギタリストだ。
イーグルスの解散前後もソロ活動していたけど、印象的だったのはMTV時代の80年代に発表した「Space Age Whiz Kids」あたりか。かってピンボールに興じていた不良のオッサンが、ゲームセンターでビデオゲームを楽しむ子どもたちの間で混乱するというストーリーや曲が、ある意味時代についていけない中年の悲哀を描いていた。もっともジョー・ウォルシュは変なオヤジそのものなんだが、
I feel a little bit mixed up, maybe I'm obsolete.
「すこし混乱してる、多分俺は時代遅れなんだ」
これはいつの時代もオヤジたちが日々感じることだ。たぶん30代くらいからずっとそうだったかもしれない。
その後、ジョー・ウォルシュはイーグルス再結成にも参加している。ソロ活動を行いながら、リンゴ・スターのRingo Starr and His All-Starr Bandの初期メンバーでもあった。たしか1989年に武道館ライブしたときに聴きに行ったのをよく覚えている。あのときのメンバーは豪華で、ザ・バンドからレヴォン・ヘルムとリック・ダンコ、ザ・バンドのラスト・ワルツ・セッションに参加したドクター・ジョン、イーグルスからのジョー・ウォルシュ、さらにE・ストリート・バンドからクレランス・クレモンズとニルス・ロフグリン、さらにもう一人のビートルズ・メンバーであるビリー・プレストンという凄いメンバーだった。
ザ・バンドとは、ラスト・ワルツ・セッションにリンゴも参加していたという繋がりがある。でもジョー・ウォルシュとリンゴというのがよくわからない。これは21世紀になってからだけど、ジョー・ウォルシュが結婚したマージョリー・バックは、リンゴの妻であるバーバラ・バックの妹だとか。その時点では、ジョー・ウォルシュがリンゴの義理の弟になっていた訳だ。でも90年前後というと、どうなんだろうね。もっともイーグルスのメンバーになる以前から、ジョー・ウォルシュは一流ミュージシャンだったので、リンゴとは何らかのつながりがあったのかもしれない。
自分的にはイーグルスで一番好きな曲の一つが「Life in the Fast Lane」だったりもするので、割とよく聴いていた。
あとは彼がソロ時代にやっている「Rocky Mountain Way」もかなり好きな曲でブルージーな傑作だと思っていたりする。この曲で彼はトーキング・モジュレーターを使っていて、ある種ジョー・ウォルシュの代名詞となっている。
これはイーグルスのライブだけどほぼ完ぺきな演奏で、えらく盛り上がっている。ジョー・ウォルシュはボトルネックギターの名手でもあるみたいだけど、彼は中指にボトルネックはめているみたい。
ボトルネックだと現代ではデレク・トラックスが一番有名かもしれないけど、彼はたしか薬指だったか。たしかデュアン・オールマンも薬指だったと記憶している。最初にボトルネックギターを意識したのは、多分70年代にライ・クーダーを聴いて頃だと思うけど、彼は小指にはめていたような。
そして中指派というと思い浮かぶのは女流ギタリストのボニー・レイットあたりか。まあ今では当たり前のようにボトルネックのスライド・ギターを聴くようになったけど、大昔の70年代はコピーするのでもまずスライドバーをどう入手するかというあたりから必要だった。当時は楽器店でもあまり見かけなかったような。そしてギター雑誌にはボトルネックのスライドバーの作り方なんかも紹介されていたような。
記憶をたどると薬の瓶とかウィスキー瓶を使って、お湯をかけたりしながら、スパっと切る方法とか紹介されていたような。まあやりませんでしたけどね。なんかそれっぽいものを代用したような気もするけど、もとよりそんなにギター弾けなかったから、ちょっと試しただけだったか。当時のギター小僧からすると、ライ・クーダーなんて神様みたいな感じがした。
話はジョー・ウォルシュに戻る。ジョーが使っているトーキング・モジュレーターは、ギターの音を専用のスピーカーからビニールチューブを通して演奏者の口の中に共鳴させて、それをボーカル用マイクで拾う。「ワウワウワウ」という独特な響きが印象的。これを最初に聴いたのはというと、多分ピーター・フランプトンの「Show me the way」だったような気がする。
ピーター・フランプトンはそのルックスとかから、なんかアイドル的な売れ方した。ちょうどエリック・カルメンと同じような感じで、ミーハー的な感じで売り出されていたけど、もともとハンブル・パイのメンダーだったし、若手ながら実力派だったような気がしている。けっこう好きでした。
脱線に次ぐ脱線だけど、ジョー・ウォルシュの「Rocky Mountain Way」を最初に聴いたのは、本人ではなく別の人。スティーヴン・スティルシュのカバーのほう。
実はイーグルスは同時代的には聴いていなかったし、自分はどちらかというとCSN&Y派みたいなところもあった。なのでイーグルスをきちんと聴き始めたのはけっこう後になってから。なので実は「Rocky Mountain Way」もスティルスの曲と思っていた時期もあったりしてたり。まあ70年代後半から80年代なんて、いまほど情報も少なかったし、そんなものだ。
しかしこの「Stephen Stills live」はたしか友人の家で聴いて、けっこう痺れた。そのあとしばらく借りて聴きこんでいた。A面がバンドでのElectric side、B面がAcoustic sideで、B面にはロバート・ジョンソンの「Cross Road」はあるは、ニルソンの「噂の男- Everybody's Talkin' at Me」はあるわで、最高だった。「噂の男」やるときに、スティルスが「友だちのニルソンの曲やるよ」と紹介して曲に入る。たぶん、当時的にもニルソンやジョー・ウォルシュとスティーヴン・スティルスは音楽仲間、友人関係にあったんだろうと思ったりもした。
そしてようやくというかまたジョー・ウォルシュに戻るけど、なんとなくアマゾンのCDとかを眺めていて、ジョー・ウォルシュのベスト盤が何枚かあったので衝動的にポチった。
1. "Funk #49" ( James Gang)
2. "Tend My Garden" ( James Gang)
3. "The Bomber" ( James Gang)
4. "Walk Away" ( James Gang)
5. "Midnight Man"
6. "Mother Says"
7. "Turn to Stone"
8. "Meadows"
9. "Rocky Mountain Way"
10. "Help Me Thru the Night"
11. "Life's Been Good"
12. "All Night Long"
13. "The Confessor"
14. "A Life of Illusion"
15. "Ordinary Average Guy"
ジェイムス・ギャング時代の曲が4曲。あとは1971年にジェイムス・ギャングを抜けてソロになってからの曲。そうジョー・ウォルシュは60年代後半から活動を開始している。えらく息の長いミュージシャンであることがわかる。ジェイムス・ギャングの演奏はいかにも60年代のハードロックっていう感じ。クリームやツェッペリン、ジミヘンもこんな感じでやっていたんだな。当時のように音響装置が今ほど発達していない時代にスリー・ピースでやるというのは、やっぱりテクニックに優れていないと難しかったのだろうなと思ったりもする。
それを思うとクリームやジミ・ヘンドリクス・アンド・エクスペリエンスがいかに優れたミュージシャンたちだったかと改めて思ったりもする。そしてジェイムス・ギャングもまったく遜色ないクオリティがある。2曲目の「Tend My Garden」なんかはキャッチーな曲だと思ったりもする。ちょっと早すぎたのかなと。3曲目の「The Bomber」はバリバリのハードロックで、ちょっとツェッペリンぽい。1969年に録音され70年にリリースされていることを思えば、その先駆性が凄いと思う。
途中のギターソロではラベルの「ボレロ」のあのフレーズが挿入される。これも当時的には斬新だと思うのだが、ラベルの遺産管理団体から訴訟を起こすとされ、その部分もカットして再発したのだとか。
James Gang Rides Again - Wikipedia
さらに11曲目「Life's Been Good」や14曲目「 A Life of Illusion」は当時的にもそこそこスマッシュヒットしたような記憶がある。この手の曲を聴くと、ジョー・ウォルシュは単なるロック野郎、パフォーマーというだけでなく、ソングライティングやアレンジャーとしても非凡な才能を持っている。2011年の「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト」において第54位だということだけど、イーグルスに途中加入したギタリストとかそういうことではなく、もっとトータルなロック・ミュージシャンとして評価されていいのでないかと思えてきた。
ジョー・ウォルシュは1947年生まれの77歳。後期高齢者である。まだまだ元気なようでステージでパフォーマンスをみせているようだ。2024年にジョー・ウォルシュというのもなんなんだという部分もあるが、せいぜい長生きして欲しいと思ったりもする。そしてこれからもずっと聴いていくんだろうなと、そんな気もしている。