蔡國強(ツァイグオチャン)展にも行く (8月10日)

 国立新美術館では、テート美術館展とは別に蔡國強の回顧展も開かれている。SNSなどでも観た人の好評価があげられていたので多少とも興味はあり。まあついでということではないのだけどこちらも観た。

蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる | 企画展 | 国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO (閲覧:2023年8月13日)

 

 

 実はというと蔡國強のことを知ったのは本当につい最近。たしか去年の秋くらいに、受けている通信教育の科目で「アジア・アフリカの新しい潮流」についての科目があり、そこで現代の中国のアートの担い手の一人として知った。まあ本当にニワカもニワカである。

 蔡國強、まず名前が読めない、覚えられない。昔的には多分「サイコッキョウ」でいいのだろうが、これが中国語の発音だと「ツァイグオチャン」、英語だと「CAI GUO-QIANG」である。もう年寄りなので、「サイコッキョウ」とは読むけれど、「ツァイグオチャン」が出てこない。チラシなりをいつも見返している。多分、ずっと覚えられないような気がする。

 まあそれはそれとして、蔡國強はというと自分の乏しい知識では、火薬を使った環境芸術、スケールの大きくメッセージ性のある花火、爆発ものという印象である。まあより平たい知識でいえば、「爆発の人」、「花火師」みたいな感じか。

 作品も広島の原爆ドームを背景にして打ち上げた一千発の黒色花火《黒い花火:広島のためのプロジェクト》やアメリカの各地で小さな白煙によるキノコ雲を上げる《キノコ雲のある世紀》など、核を強烈に問題意識化した作品=パフォーマンスを繰り広げている。また東日本大震災への鎮魂として打ち上げた「いわき白天花火《満天の桜が咲く日》」も話題になった。

 今回の回顧展でもその模様はビデオで紹介されていた。こんなやつだ。


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 まあこの屋外での大掛かりなパフォーマンスは別にして、今回の回顧展では初期の代表作である<原初火球>シリーズや様々なインスタレーションがあり、どこかファンタジー性があり楽しい企画展だった。

 蔡國強の爆破芸術は、絵具に火薬を混ぜて画面上で爆発させるというものだが、その過程もビデオで紹介されていた。作品はまず曼荼羅をを絵具と火薬を混ぜて描く。その絵の上にガラス板を置き、導火線を使ってを火を放ち爆発させる。するとガラス面に爆破と絵具が移る。というのが爆破芸術だ。

 そして出来上がるのがこれである。

 

 その中、爆破の痕跡を8曲一隻の屏風にしたものなども。

 

 

 

 さらにインスタレーションはもうファンタジーそのもの。

 

 

 そしてこんな絵も。

 

 言語化しにくいタイプの作家、作品ではあるけれど、エネルギッシュな表現は確かに伝わるし、とにかく面白い。さすがに会場での爆破パフォーマンスは出来ないだろうが、美術館前の空間でちょっと出来ないかなと思ったりもするけれど、さすがに東京のど真ん中では難しいでしょうね。防衛省アメリカ大使館とかもあるし諸々あるだろうとは想像に難くない。

 蔡國強は1957年生まれで1986年に日本に移住、現在はニューヨーク在住。まさに現代の最先端で活躍しているアーティストといえる。国籍はまだ中国にあるのか、アメリカ人となっているのか判らないけれど、中国本国の影響下を感じさせないタイプだ。もっとも北京オリンピックの開会式の花火によるパフォーマンスなども手掛けているので、バランス感覚に優れた人なのかもしれない。

 作品やパフォーマンス個々への理解はちょっと今の自分には手に余るといか、言語化は難しい。でもたしかに面白いとは思う。<面白い>=<美的経験>という意味では、共鳴する部分はある。年齢的には1つ下なので同世代。アジアを代表する同世代の作家ということで受容していく、そういう理解かなあ、現時点では。