ロビー・ロバートソンが死んだ

 ロビー・ロバートソンが死んだ。昨日の朝日の朝刊に訃報記事が載っていた。

ロバートソン氏死去 「ザ・バンド」ギタリスト:朝日新聞デジタル

  20世紀のギター・レジェンドの一人かもしれない。ザ・バンドのフロントライン。そして生き残っていた二人のうちの一人。これで残ったのは一番年上のガース・ハドソン一人になってしまった。ハドソンが最後の一人になるなんて、誰が想像しただろうか。

 ロビー・ロバートソンは確かカナダ系のミュージシャンだったか。当時的にいえば、カナダ出自というとニール・ヤングジョニ・ミッチェル、そしてロビー・ロバートソンという感じだっただろうか。ザ・バンドの解散コンサートを記録した映画『ラスト・ワルツ』にもジョニとニール・ヤングが出演している。そういう意味では古くからの音楽仲間だったんだろう。あの映画でもロビー・ロバートソンのギターのカッコ良さは際立っていた。とにかくワイルドな危ない雰囲気を漂わせるギタリストだった。

 ロビーとザ・バンドのことについては、2年前に観た『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』が詳しい。あの映画はロビーの伝記を元にしていたので、終始ロビーの視点から描かれていた。ザ・バンドはある時期からか、ロビーと残りの4人組という図式になっていった。ロビーレスのザ・バンドは再結成されて断続的にツアーを続けていた。リンゴ・スターのオールスターズのツアーにヘルムとダンゴが加わったことも記憶している。

 でもロビー・ロバートソンはやはりザ・バンドのギタリストなんだと思ったりもする。ザ・バンドの音楽の多くがロビーによって形成されていたことも含めて。

 『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』を観たときの感想をあえて採録してみる。あの2年前に思ったことはいまもそのまま変わっていないし、なんとなくザ・バンドへの哀惜を込めていたような気もする。そして予兆的にロビーへの哀悼みたいな部分もあるような感じもするから。

 ロビー・ロバートソン、ご冥福を。

 

 ザ・バンドを扱ったドキュメンタリーだが、ベースになっているのがロビー・ロバートソンの回想録『ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春』をベースにしている。なのでこの映画はロビー・ロバートソンによるロビー・ロバートソンのためのロビー・ロバートソンのザ・バンドという映画である。

 確かにロビー・ロバートソンがザ・バンドの中心メンバーであることは認めるが、それにしても他のメンバーの描き方が酷い。ガース・ハドソン、リチャード・エマニュエル、リック・ダンコはその他大勢扱い。唯一リヴォン・ヘルムは才能あるスターとして描かれるが、薬中で晩節を汚すみたいな描かれ方だ。とにかくロビー・ロバートソン以外は全員ジャンキーみたいに描かれている。これはちょっとないなと。

 実際のバンドの軌跡はどうかというと、ロビーがライブ活動の停止と解散の方向を主張し、それに対してリヴォン・ヘルムはライブの続行を主張。「ラスト・ワルツ」の解散ライブ以降もロビー以外のメンバーはザ・バンドの活動を続けた。しかしそのへんのことはこの映画には描かれない。

 別に他のメンバーの肩を持つ訳ではないが、ザ・バンドがロビー・ロバートソンの一枚看板だった訳ではないし、ボーカルという点でいえばリヴォン・ヘルムの存在が大きかったと思う。個人的にはリック・ダンコが好きだったし。

 もっとも後期のアルバムでは曲作りはほとんどすべてがロビー・ロバトソンだった訳で、ロビーからすれば他のメンバー薬でラリっているときに自分一人が曲作り、アルバム作りに苦闘していたという言い分もある訳である。そのへんがこの映画でも多く語らられている。

 1990年代のどこかで、リック・ダンコとリヴォン・ヘルムはリンゴ・スター・オールスターズのメンバーとして来日した時に観ている。懐かしい「ラスト・ワルツ」からの名曲、確か「ウェイト」をやっていたか。リンゴの他にもジョー・ウォルシュニルス・ロフグレンドクター・ジョン、クレランス・クレモンズ、ビリー・プレストンという錚々たるメンバーだった。ああいう音楽を聴いていると、リヴォン・ヘルムがバンドのライブ活動を続けたかった理由も判るし、ロビーなしでも良かったのではないかと思ったりもする。実際のところロビーレス・バンドはけっこう長きに渡って断続的に活動していた訳だし。

ロビー・ロバートソンが才能溢れミュージシャンであり、希代のギタリストであることは認める。でもザ・バンドはけっしてロビー・ロバートソン・アンド・ザ・バンドではなかったと思う。そういう思いもあるので、今回のドキュメンタリーはあまり楽しめなかったかもしれない。

ロビー・ロバートソン   1943~     78歳

リヴォン・ヘルム     1940-2012  71歳没

リック・ダンコ                      1942-1999      56歳没

ガース・ハドソン                   1937~            84歳

リチャード・エマニュエル     1943-1986     42歳没

 死人に口なしではないし、ロビー・ロバートソンの一人勝ちという訳でもない。ビートルズの遺産はポールが一人占めしている感もなきにしもだが、それでもジョンやジョージはレジェンドとして燦然と輝いている。ロビー・ロバートソンはけっして嫌いじゃないけど、やっぱり彼はポール・マッカートニーとは違うし、ザ・バンドはメンバー5人のグループ・サウンドだったと思ったりもする。

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