鏑木清方記念美術館 (7月13日)

 鎌倉小町に来た目的の一つがここ。

鎌倉市鏑木清方記念美術館 (閲覧:2023年7月20日

 

 昨年、東京国立近代美術館で開かれた「鏑木清方展」を観に行き、この美術館所蔵の作品が多数出展されていたので、一度行ってみたいと思っていたところ。鏑木清方が最後に住んだ旧宅を美術館に改築したものだという。

 まず小町から鶴岡八幡宮方面に歩いていき、右手に細い道へそれると住宅地の中にたたずんでいる。ここに日本画の巨匠はお住まいになられていたのですね。

 

 

 そして細い路地のような石畳のアプローチを通っていく。

 

 そして美術館の入り口に。

 

 本当に古い日本家屋という雰囲気。着物を着た鏑木清方が下駄で散歩に出かける風情が目に浮かぶような。

 鏑木清方がこの地に越してきたのは1946年。鎌倉に住んでいた岩波茂雄が亡くなったのも1946年だから、二人に交流はあったかどうか判らない。娘婿の小林勇もずっと鎌倉に住んでいたし、素人ながら絵を描いていたから、日本画の巨匠の家を訪れるなんてこともあっただろうか。小林勇のエッセイで鏑木清方について触れたものは読んだ記憶がないが。

 鎌倉は作家、芸術家が多数住んでいたから、それぞれに交流はあったのかもしれないが、外で会っても軽く会釈する程度なんていうのが日常だったのかどうか。

 試しに調べるとウィキペディアに鎌倉文士の一覧とかもある。

鎌倉文士 - Wikipedia (閲覧:2023年7月20日

 でも眺めていると、田村隆一がないとかいろいろ注文つけたくもなるが、まあそれはまた別の話か。

 

 

 開催されていた企画展は「季節の彩り 清方が描いた美人挿絵」。雑誌挿絵や『苦楽』の表紙絵などが中心で、直筆の日本画、掛軸、屏風などはあまりなかった印象。この美術館の目玉ともいうべき《朝涼》も複製画が展示してあった。

 この美術館所蔵の有名なものは、この《朝涼》、《曲亭馬琴》、《深沙大王》、《一葉の墓》、《教誨》、《嫁ぐ人》、《孤児院》、《秋宵》などがあるが、今回はいずれにもお目にかかれなかった。まあこういうのは一期一会的だし、何度も通って運が良ければあげた絵のどれかに出会うこともできるかもしれない。まあそれは美術館通いの僥倖の一つかもしれない。

 それを思うと、去年のMOMATの大回顧展は何度も通って、展示作品のほとんどすべてを観ることができたのはラッキーだったかもしれない。

 最後に所蔵品がほぼ収録された図録を購入したけど、これA4判よりも少し大きくて264ページもあるかなり立派なもの。それでいて値段が1320円と格安で驚いた。いまどきこのボリュームで都内の美術館の企画展だったら3000円とか普通にあると思った。しかも実物画と下絵が重なるように工夫された編集などがされている。

 冒頭のあいさつによると文化庁の「平成26年度地域と共働した美術館・歴史博物館想像活動支援事業」に採択された「鎌倉の美術館 外国人のための環境整備事業」の一環として日本語・英語の二か国語併記で刊行されたとある。多分、公費がかなり入って制作されたのだろうか。そうでないとこのボリュームでこの値段での出版は難しいと思う。

 

 ぶっちゃけこの図録が購入できるだけで、この美術館は訪れる価値がある。運が良ければ所蔵される名品にお目にかかることができるかもしれないし。