西洋美術館常設展で気になった作品を幾つか。
本館から新館に移る回廊を渡ってすぐの部屋、以前だとマネ、ルノワール、シスレー、セザンヌなど18世紀から19世紀の作品が展示してあるスペースに1点大理石の彫刻があった。
マリー・バシュキルツェフの胸像|シャルル=ルネ・ド・ポール・ド・サン・マルソー |所蔵作品検索|国立西洋美術館
マリー・バシュキルツェフ、聞きなれない名前だが、ウクライナ出身の女流芸術家だという。ソ連のウクライナ侵攻ということでこの作品を展示、あわせて1階の受付近くにはウクライナ支援の募金箱も設置してあった。
ウクライナ出身、画家、彫刻家、日記作家、結核のため25歳で夭折したという。裕福な貴族の家に生まれ、幼くして父と母が別居、彼女は母と共にヨーロッパを旅行して回り、最終的にはパリに移り住んだ。自然主義、農民画家として人気のあったジュール・バスティアン=ルパージュに絵を習い、18歳からの7年間に数百点の作品を制作した。しかし、第二次世界大戦中にナチス・ドイツにより退廃芸術とされて、ほとんどの作品が破壊されたという。
作品『ウクライナ出身の伝説的女流芸術家、マリ・バシュキルツェフの肖像』 : 画家・棚倉 樽のアートギャラリー
【作品一覧】マリー・バシュキルツェフ | ネット美術館「アートまとめん」
彼女の作品で唯一見覚えがあるのは、パリの貧民街の子どもたちを描いた「出会い」という作品だ。確か大塚国際美術館で陶板複製画を何度か見ている。
同じ部屋にアンリ・ファンタン=ラトゥールの作品が展示されている。静物画の名手の作品として何度も目にした作品だ。
そのお隣にはこの作品が。
そしてその左側にはこの作品が。
ほとんど同じようなタッチの作品。キャプションだけでは関係性が判らないので、自分で検索してみる。
アンリ・ファンタン=ラトゥールの奥さんでした。とすると三点目の「花」は夫婦合作ということになるのか。というか、ヴィクトリア・デュプールがラトゥールの奥さんだというのは、西洋絵画の世界では常識なんだろうか。
自分のような俄かの趣味美術館巡りみたいな人間だと、こういうの戸惑ってしまう。こういう疑問も今はスマホの検索で解決がつくけど、美術館によってはスマホの使用を禁止しているところもある。たしか埼玉県立近代美術館ではスマホで作品について調べていたら、監視員に注意されたこともあった。
美術館は作品を展示するだけでなく、美術教育の場でもある。なので、最低限の情報はきちんとキャプションと共に掲示して欲しいと思う。ラトゥール、デュプール、二人の合作を並列して展示するのは、まあそういう意味なんでしょという。そうならば展示意図を明示すべきだと思う。
同じことは本館でもアンゲリカ・カウフマンとマリー=ガブリエル・カペの作品を並列展示してた。あれは18世紀に活躍した女流画家ということなんだろう。
西洋美術館にしろ近代美術館にしろ、けっこう展示に工夫されていること多いのだが、いかんせんその意図が明示されないことがけっこう多かったりする。意地悪くとれば、高尚な独立行政法人たる美術館は、高見から「君たちこの展示意図わかりますか」みたいな感じでボーンと投げつけているような感じである。もう少し親切に教えて欲しいものだとちょっと思ったりした。
最近は通信教育で西洋美術とかを一から学習してるせいか、西洋建築とか例の列柱とかにどうにも興味がいってしまう。なので廃墟のユベール・ロベールもそのへんばかり気になってしまったり。
↑ これはコリント式ですか。
↑ これはイオニア式、多分。
鑑賞のポイントはそこじゃないだろうと突っ込まれそうだが、もうこのへんが気になって、気になって。まあ意識するようになると、西洋建築はギリシア・ローマのオーダーが氾濫していて、今までまったく意識がいってなかったことが判るというか、目がいくようになる。こういうのも楽しみの一つだったりして。
前回訪れた時も気になった作品で一応収蔵品らしい。
2019年の購入のものだ。購入金額は約6億4千万とか。
<国立西洋美術館 美術作品購入一覧(令和元年度)〉>
西洋絵画の値段は高騰してるということなんだろうが、こういう名画の購入にお金が使われることは全然問題ないとは思う。しかし根が下世話な人間なんで、例えばだけど西洋美術館の収蔵品の時価を計算したらどうなんだろうとか、ちょっとおバカな想像をしてしまう。多分、天文学的なものになるんだろうけど。