『ゲロッパ!』

  アマゾンプライムで観た。井筒和幸監督作品はほとんど観ていない。朝鮮高校生の青春を描いた『パッチギ!』も今年の初めに観たんだったか。この『ゲロッパ!』も作品は知ってたけど観ず仕舞に来た。JB、ジェームス・ブラウンをパロディ化した映画ということくらいは知っていたけど、あまりにベタ過ぎるというか。しかし2003年の作品、もう古い映画の部類に入ってしまうんだが、これそんなに前だったのか。しかも『パッチギ!』よりも前の制作。

ゲロッパ! - Wikipedia

 収監前に生き別れた娘に会いたい、ずっと好きだったジェームス・ブラウンのコンサートに行きたいというヤクザの親分を巡るドタバタ映画。ジェットコースター・ムービー風にテンポよくお話は進む・・・、といいたいのだが、もうぶっちゃけこの映画は無理、ワヤである。そもそもJB好きなヤクザがどこにいるのか。それもコテコテの関西系ヤクザで、しかも親分とその一の子分二人してJBの歌やダンスを諳んじているなんて。

 などとそこそこのリアリティを求めてはいけない映画なんだとは思う。そもそもが「GET UP」が「ゲロッパ」に空耳するっていう、多分そこから物語を無理くり作り出した映画でしょ、これは。「GET UP」=「ゲロッパ」、それがすべてなのである。多分、そこのとこに面白味を感じない人にはちょっと難しいかもしれないし、ただのドタバタヤクザ喜劇、吉本新喜劇の映画版みたいなものでしょう。

  じゃあまったくもってダメかというと、実はけっこう楽しめたのである。なぜか。使われているJBを中心としたソウル・ミュージックが心地よかったからということ。60年代から70年代にかけてのソウル・ミュージック、クラブではないディスコ時代によく聴いた曲ばかりだからである。

 ネットでサントラ盤とかを探したら割と簡単にヒットしたのだが、映画に挿入されていたのはこういう曲。もうこれだけでOKでしょう。

1. セックス・マシーン:ジェームス・ブラウン
2. イッツ・ア・マンズ・ワールド:ジェームス・ブラウン
3. ガット・トゥ・ビー・リアル:シェリル・リン
4. ソウル・トレイン・テーマ(TV Version):ソウル・トレイン・ギャング
5. ジャスト・テル・ミー:Reggae Disco Rockers
6. ベスト・オブ・マイ・ラヴ:エモーションズ
7. シャイン・オン:ジョージ・デューク
8. ダンス・ダンス・ダンス:シック
9. リーチ・アウト・アイル・ビー・ゼア:フォー・トップス
10.マザー・ポップコーンジェームス・ブラウン
11.夢の中で:ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ
12.Ain't No Mountain High Enough:インナー・ライフ・フィーチャリング・ジョセリン・ブラウン
13.マイ・ガール:ザ・テンプテーションズ
14.マイ・ラヴ・イズ・ウェイティング(燃える情熱):マーヴィン・ゲイ
15.アンドロメダJazztronik
16.クローズ・マイ・アイズ:ベイビーフェイス
17.GET UP!:SOULHEAD

  昔、誰かが映像やテキストはどんなに頑張っても音楽には勝てないみたいなことを書いていたような気がするんだが、それってけっこう真理かもしれないなと思ったりもする。音楽はなによりもイメージを喚起するし、いつまでも心に残る。映画や絵画、小説はなかなか音楽ほどには残らないようにも思う。まあ異論反論多々あるとは思うけど。

 あとこの映画はもう役者のチョイスがけっこう嬉しい。主役の西田敏行やその一の子分役の岸部一徳が芸達者なのは周知のとおりだけど、チンピラ役に今や政治家となった山本太郎桐谷健太。この二人が面白いんだな。山本太郎はれいわ新撰組で一部にカリスマ的な人気のある政治家になったけど、役者としてもいい味があった。この時代、チンピラヤクザやらしたら右に出るものいないんじゃないかっていうくらいだ。

 さらには木下ほうか、長塚圭史田中哲司ラサール石井などなど。さらに友情出演的に根岸季衣寺島しのぶ藤山直美らも花を添えている。彼らの演技を見ているだけで楽しくなる。

 ふだんあまり映画に点数とかつけないのだが、とりあえずベタな映画なので、映画自体は30点、でも音楽がいいので70点くらいつけちゃうような、まあそういう映画である。

 ただしせっかくJBを素材にした映画なのだから、JBのネタとかをもう少し取り込んで欲しいとは思った。ジェームス・ブラウンはソウルの大御所である意味スーパー・スターなのでそのライブ・パフォーマンスはけっこう有名である。自分はJBのケープ・ルーティンが大好きである。JBがヘトヘトになるまで絶叫してステージにうずくまる。するとマネージャーが現れて、JBにケープをかけて楽屋に連れて行こうとする。でもJBは途中でケープを振り外して再びマイクを持ち歌い出すというあれだ。

 しかし改めて見てみるとJBのパフォーマンスもいいけど、バックバンドのレベルの高さと思ったりもする。ベースやリズムギター、ホーンセクションなどなど。


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 これのパロディはエディー・マーフィーの得意なネタでサターデー・ナイト・ライブでもよくやっていた。YouTubeで見れるのはホットタブのスケッチだ。


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 エディー・マーフィーのJBネタではこの他にJBの「アニー」という爆笑ネタもあるのだが、こっちの方はYouTubeでは見つからなかった。著作権とかもろもろあるのだろうか。ネットでは探したがそのうち消えるかもしれない。

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