蓮台寺のしだれ桃の里から車だと10分程度で上原美術館に行く。ここは昨年初めて行ってから通算三回目になる。山の中、達磨大師堂、向陽寺とこの美術館、他に何もない。いつもながら、よくこんな所にこれだけの美術館を作ったものだと感心してしまう。大正製薬恐るべしとでもいうべきか。
出来ればもう少しアクセスしやすいところにあればいいのにとは思う。ただでさえ下田という伊豆半島最南端であり、しかもそこからさらに車で山の中に入るような感じだので。とはいえその収蔵品は素晴らしいものがあるので、伊東の保養所もなかなか取れないということもあるけれど、年に1~2度来れたらいいと思っている。
今回はというと上原コレクション名品選ということで近代館では「花かおる絵画」展、仏教館では「祈りの文字 祈りのかたち」展が開かれている。いずれも期間は1月22日~4月17日までということになっている。
近代館の「花かおる絵画」では、所蔵品の中から花を題材にした作品をメインに洋画、日本画取り混ぜて展示してある。すでにこれまで2度訪れているので、お馴染みのものもあれば新しく観るものなども。また洋画と日本画を並列して展示するのもけっこう面白いとは思った。それこそルノワール、小倉遊亀、横山大観が並列してあるのなどはちょっとワクワクする。
新収蔵品で初公開の作品だとか。鉢形は地元埼玉の北部大里郡寄居町である。調べると安井曾太郎は戦争中この地に疎開していたのだとか。鉢形というと鉢形城址公園などのことを聞いたことがあるがいったことはない。こんな風景があるのだろうか。もっとも70年以上も前のある種の原風景である。これも調べると鉢形城址公園には樹齢150年を超える高さ18メートルのエドヒガンの大木が一本あり、これが有名なのだという。今年は多分難しいけれど、いつか行ってみたいと思う。その時にはこの絵のことを思い出してみたいものだ。
ピサロは多分前にも観たことあると思うがモネは多分初めてだ。いずれもまさに印象派という作品だ。ピサロの作品については上原美術館のHPの解説には以下のような記述がある。
本作は1886年の第8回印象派展に出品された作品です。当時の批評家はこの作品を、「近くで見るとカンヴァスはさまざまな色をした釘の頭の集まりのよう」だが、「適正な距離から見ると遠近法が生まれ、面は深さを持ち、空は適度な軽快さで処理されて、広大な空間とぼんやりした地平線の印象が生み出されている」と評しています。
「近くで観るとさまざまな色をした釘の頭の集まり」というまさしく印象派の技法である。それが「適格な距離から見ると遠近法が生まれ・・・・」もまさに印象派の作品が距離を置いて鑑賞することで視覚混合が生まれることを明確に説明している。まさに印象派作品は正しい鑑賞法ということだ。
同様にモネの作品も「適格な距離から見る」ことでその効果が生まれる。この二つの作品はまさに印象派的な作品であり、並列して展示されることで互いの美しさ、光に輝き移ろう風景を切り取ったその効果が実感できる。
この二点と並列してあるのがボナールの作品である。
ナビ派からより色彩感覚を増して抽象度を高めたような作品を多数描いたボナールにして、この作品はどこか印象派的表現に回帰するようなところがある。この作品はモネやピサロと並んでいても褪せることなく、逆に色彩感覚に優れているような印象も感じる。印象派的な雰囲気にフォーヴ的な明るく華やかな色彩性を加味したような雰囲気か。
この作品も最初に上原美術館を訪れた時に観ている。いい絵だなと思った。そして自分的にはピエール・ボナールの作品の中でも割と好きな作品の一つのようにも思えてきた。ある意味、この絵に会うために上原美術館を訪れてもいいかと思ったりもする。
今回観た中でもっともインパクトがあったのはこの作品。この画像は同じリトグラフでネットで拾ったものだが、なんていうのだろうある種の凄みを感じさせる。色彩の魔術師マティスが構図とデッサン力だけでこれだけインパクトの強い作品を見せつける。やはりマティスは天才的な画家だと思う。この引き締まった身体、割れた腹筋をもつモデルは誰だったんだろうとこれも興味がある。
その他興味を覚えたのは以下作品。
最初に上原美術館は伊豆の最南端でアクセスしにくいとは書いた。しかしその収蔵品は素晴らしいものがある。それを思うと年に数回であれ訪れたいと思う。絵の好きな方、美術館巡りを趣味としている方には絶対にお勧めである。日にちに余裕があればぜひ訪れてもらいたいと思う。あわせて仏教館の仏像も圧巻である。