神奈川県立近代美術館-葉山館  (12月23日)

 平塚市美術館で悲しくもソフトに門前払いされちゃったので、仕方なく次なる目的地を探すことにする。せっかく神奈川まで遠征して来たので、すごすご手ぶらで帰るのもなんだし。ということで駐車場でスマホ検索、お隣の茅ヶ崎市美術館は「浜田知明」展。知らない人だし、常設展示がどうなのかもよく判らないのでパス。そういえば鎌倉には鏑木清方の美術館があったなと思い出す。ただしあそこは確か小町から狭い道いくようなとこにあるという話。しかもカミさんの車椅子を押してだとちょっとアクセスしずらいかなとか思った。まあウィークデイだから駐車場は探せばすぐに入れるだろうけど、おそらく駐車場から美術館まではけっこう距離ありそうな感じ。

 鎌倉は埼玉に越してからほとんど行ってない。多分、ここ20数年で1回か2回。でももともと横浜に住んでいたので、それこそ子ども時代は自転車で遊びにいけるくらいのところだった。さらにいうと30代の後半の一時期、鎌倉の会社に勤めていたこともある。なのでけっこうあのへんの土地勘はある。まあその会社は残念ながら縁が薄かったのか、半年くらいで辞めてしまったけれど。

 もう一つ、候補として浮かんだのが神奈川県立近代美術館の葉山館。近代美術館は鎌倉にもあるけど、やっぱり駐車場とかアクセスが今一つなので没。葉山館はきちんと駐車場も整備してあるらしいのでちょっと興味がある。以前、萬鉄五郎の展覧会とかをやっていて行きたいと思ったところでもある。

 HPを見ると開催中の展覧会は、「矢萩喜従郎展」と「アンリ・マティスの挿絵本」だという。

葉山館 | 神奈川県立近代美術館

 矢作喜従郎という人はまったく知らないが、マティスの挿絵本、おそらく『ジャズ』あたりかと思い、まあ軽く『ジャズ』観て帰るのもいいかと思い葉山館をチョイスする。

 平塚から葉山まではナビの予測で1時間くらい。まあ冬だしウィークデイなので海沿いの134号線もそれほど混んでいないのだろう。茅ヶ崎江ノ島から七里ガ浜、稲村ケ崎を通り由比ガ浜材木座海岸を抜けてという湘南ドライブもいいかということにした。

 逗子から葉山に入り日影茶屋の前を通るところでは横にいる妻に、ここは昔大杉栄が情婦に刺されたところだとか、それを元に瀬戸内寂聴が小説書いてとか、適当にウンチクをのべるが妻はほとんど興味がないみたい。

 そしてようやくというか美術館に到着。

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 美術館のすぐ裏が遊歩道になっていて、下まで降りるとすぐに海というロケーションでなかなか雰囲気がある。

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 さてと周囲の環境はおいといて展覧会の方だが、大々的なのは矢萩喜従郎の方。4室ある展示室のうち3室がこっち。しかもその展示室が天井が高く開放感がある。

 

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矢萩喜從郎 新しく世界に関与する方法 | 神奈川県立近代美術館

矢萩喜従郎 - Wikipedia

 展示は多分矢萩喜従郎のキャリアに沿って作品が展示されている。まずは写真、そしてアート的造形、さらにポスター、建築、家具などなど。とにかく活動範囲が広い。ひとことで言い表せないくらいに作品の幅が広いのだが、自分の了解可能な部分でいえばアート・デザイナーという括りになるのだろうか。

 自分がなんとなく理解できる範囲でいうと、この人のポスター作品にはある種圧倒される。どれも斬新でまったくマンネリズムみたいなものがないように感じられた。

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 矢作喜従郎の展示を終えるとマティスの挿絵になるのだが、こちらは1室のみでこじんまりとしたもの。『ジャズ』以外にはリトグラフによる版画集『シャルル・ドレルアン詩集』などが展示してあった。これらはいずれも山口蓬春文庫とキャプションがあり、山口蓬春から寄贈されたものだとか。

 山口蓬春は松岡映丘に師事していた日本画家だが、戦後はモダニズム的な雰囲気の作品を多数描いており、マティスやブラックの影響も受けているという。山口蓬春は葉山に長く住み、近代美術館の近くに山口蓬春記念館もあるという。ひょっとするとこちらの方が楽しめたかもしれないとはちと思ったりもする。まあ次回葉山に来ることがあったら、記念館に真っ先に行ってみたいとも思った。