近所のおでん屋で食す

 最寄駅の近くに新しくおでん屋ができた。開店時にカミさんと二人で店の前に通りかかったので、今度来てみるかみたいな話をしていた。

 今日はというと、子どもが京都に小旅行に行っているので、家で飯作るのもなんだんで、駅の方まで来て寄ってみるかということになる。

 なんとなく家庭料理っぽくて、おでんも最近流行りの出汁の効いた薄味仕立てではなく、醤油味のややどす黒系である。しかもハンペンも大根も、なにもかもが味が見事に染み込んでいる。染み込み過ぎてヨレヨレな印象である。

 これはなんというか、いわゆる一つの関東炊きである。昔の家庭で食べたおでんの二日目みたいな印象である。自分も大昔、子どもの頃に祖母が作ってくれたおでんはだいたいこんな感じだった。なんとも懐かしい味である。

 カミさんはというと、最近のおでんに慣らされてしまったのだろうか、ちょっと出汁が効いていないねみたいなことを言っていた。でも、自分はというと懐かしい気分に浸っていたので、けっこうイケると思った。

 考えてみると昔の煮物とかはそれほど出汁とか効いてなかったような気がする。というかあまり記憶はない。自分が小学生の頃はというと、味噌汁だの煮物はきちんと鰹節だったりした。まだ削り節が一般的じゃなかったし、あの渋い箱の鰹節削り器も家にはあった。カンナみたいになっていて、削った鰹節は引き出しの中に溜まるやつだ。

 今思えばたいへん贅沢なんだが、それでもあまり出汁というのを意識したことはなかった。ただし味の素やハイミーの人工的な味付けはなんとなくわかったような気もする。まあいいか、とりあえず昭和的な家庭風おでんということでたまに食いたくなるようなおでん屋である。できれば潰れずに続いて欲しいとは思う。

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