東京富士美術館〜山本二三展

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 久々、東京富士美術館へ来た。ここは夏休み時期は割と子ども向けの展示をやる。その企画展によってはちょっと避けるみたいなこともないでもないんだが、去年のリンドグレーンのピッピ展、その前はプリンセス展とかだったか、まあけっこう通っている。まあ車だと30分くらいで比較的近いということもあるからだ。

 そして今回の企画展は山本二三展である。

 アニメファンには申し訳ないけど、山本二三って誰みたいな感じ。正直知らない。解説を読むと宮崎駿高畑勲らと共に活躍してきたアニメーターなのだとか。主に背景画や美術監督として日本アニメのクォリティを支えてきた人なのだと。

 彼が手がけた作品群を見るともうなるほど、なるほどと思う部分もある。ジブリ作品の中でも芸術性が高いとされる「ラピュタ」や「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ほたるの墓」などの背景、美術監督を務めている。

 そのアニメ作品の場面、風景等が原画(アニメ的にいうのか?)として展示されている。それらは本当に細部にわたる精密さ、リアリズムと審美性が溢れている。

 思えば日本アニメをクォリティを高めたのは、手塚治虫ジブリ宮崎駿高畑勲等等である。ただの動く紙芝居に等しかったアニメをストーリィ性、作画技術、動きやカットごとの美しさなどなど、映画としての完成度を高めていく過程が70年代から90年くらいまで続いていたのだと思う。

 ディズニー映画に親しんできた者からすると、子どもの頃でも国産の東映アニメとかの動きのなさとかにはやっぱり限界を感じていた。劇場で一人で観た『ジャングル・ブック』の背景の美しさに、やっぱりディズニーはすごいと感じたのは多分小学生の高学年だったか。

 そう日本アニメは20世紀は草創期であり、じょじょに品質を高めていく時期だったのだろう。最近の新海アニメなどはそうした歴史の上に成り立っているのだろうと思う。

 山本二三に戻る。彼が高畑勲と組んだのは1981年の『じゃりン子チエ』だという。実はこの劇場版アニメは観ていない。コミックの方はずっと愛読していた。まだ本棚に全巻揃っている。試みに第1巻を出してみると昭和54年5月初版とある。1979年のことだ。そして最終巻67巻はというと1997年12月。やれやれもう完結して22年の月日が経つのだ。そして1997年は子どもが生まれた年でもあり、自分は多分41とかそういう歳の頃だ。

 月日の経つのは早いということ。『じゃりン子チエ』を読み出したのは確か井上ひさしが朝日で文芸時評を書いていて、その中でこの大阪の下町を舞台にした人情ギャグ漫画を取り上げたからだったように覚えている。

 話は脱線である。山本二三の『じゃりン子チエ』の背景画はきわめて映画的である。書き割り調を配し、リアルな街並みを仰角、俯瞰とテクニックを駆使して美しく描いている。アニメとしてキャラクターを動かすために、あえて背景をリアルに、かつ奥行きをみせているような背景画を描いている。

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 なので今度TSUTAYAあたりで『じゃりン子チエ』のアニメを探してこようと思う。それにしても原作コミックが終了してもう22年になるのかと思うと泣ける。足かけ18年の連載(アクションだったか)、それを毎号買い、コミックを毎回買い続けていたのだ。大学の4年から41歳になるまで。なにか泣けてもくるし、思わず笑ってしまうことでもある。なんとなく山本二三が消えてしまった感がある。