天心記念五浦美術館~成川美術館コレクション展 (6月18日)

令和4年4月27日(水)~6月26日(日)

開館25周年記念展 Ⅰ
箱根・芦ノ湖 成川美術館コレクション展 
~花愛でるこころ、恋の詩(うた)とともに~

茨城県天心記念五浦美術館> 展覧会>企画展

 天心記念五浦美術館では箱根にある成川美術館のコレクション展を開かれていた。成川美術館は名前は聞いたことがあるのだが、まだ一度も行ったことがない。きけば4000点あまりの日本画コレクションを所蔵しているのだとか。箱根には何度も行っているのに、ここにはとんと縁がなかった。もっともいつもポーラ美術館ばかり行ってるのと、日本画を観るようになったのがここ数年来ということもあるのかもしれない。

成川美術館

 今回の企画展では「花」をテーマにした名品を紹介するというもので、ほとんどが戦後に活躍している作家のものだったか。

「地上風韻」(山本丘人) 1975年

 山本丘人は1900年生まれで松岡映丘に師事し、昭和初期から活躍している。多分出品している作家の中では一番年長じゃないかと思っている。この美しい作品も75歳のときのもの。

 

トスカーナ風景」(堀文子) 1990年

 堀文子(1918-2019)は主に戦後活躍した画家。1948年に福田豊四郎、山本丘人らが結成した創造美術を中心に活躍。1987年、70歳を前にイタリアにアトリエを構え制作拠点にしたという。もともと花の画家として評価を受けていたというが、この絵の後景の景色はなんというかちょっとルネサンス期の風景画のような趣がある。

 

「春の庭」(堀文子) 1975年

「睡蓮の池 桜」(平松礼二) 2012年

 平松礼二(1941-)は湯河原町立美術館で観たんだと思う。竹内栖鳳の作品を多数所蔵しているこの美術館には、平松礼二館としてこの人の作品を多数常設展示している。技巧と色彩感覚に優れ、装飾的な作品には目を奪われるものがある。またこの人は長く『文芸春秋』の表紙画を担当していたことでも知られている。

 

「花の道」(田渕俊夫) 1995年

 田渕俊夫(1941-)を最初に観たのは、多分高崎市タワー美術館で開かれた名都美術館コレクション展だっただろうか。

「黎明朧桜」(牧進) 2003年

 牧進(1936-も田渕俊夫と同じく高崎市タワー美術館で観たのだと思う。とは長野の水野美術館などでも。たしか川端龍子内弟子だったが、龍子の死去後はフリーで活躍している画家だとか。また川端康成の知遇を得、川端文学をモチーフにした作品も多数制作しているとか。たしか作品のキャプションに二人の川端からの影響みたいなことが書いてあったように記憶している。

「島の女-祭りの朝-」(森田りえ子) 1993年

「想」(森田りえ子) 2004年

 森田りえ子(1955-)は神戸市に生まれ、1980年京都市立芸術大学日本画専攻科修了と、まさしく同時代的に活躍する作家。草薙奈津子の『日本画の歴史 現代篇』の最終章「女性画家の台頭と活躍の」の中でかなりのページをさいて取り上げているので、一部引用する。

そんな彼女の作品には若い女の子がいっぱい出てきます。《KLAWAII(Ⅰ~Ⅲ)》(2009年)などです。森田りえ子は彼女らに取材するために東京の原宿竹下通りに出かけ、可愛いグッズをたくさん買い込み、森田りえ子好みの可愛い女の子を創りあげ、そして作品にしてしまうのです。こういう好奇心・積極性は森田りえ子の強みであると思います。金閣寺天井画にも挑戦しています。どんどん世界がひろがっているのです。(『日本画の歴史 現代篇』P172)

京都の画家森田りえ子の作品の根底にあるのは、円山応挙に始まる確かな技術による写実がです。神戸出身なだけあって、垢抜けた都会人の爽やかさも備えています。

(同 P173)

「草炎-鶏頭」「草炎-蓼」(中野嘉之) 1994年

 図録によると「中野嘉之は、自然現象の中に潜む「気」の表現をテーマに、壮大な心象風景を描くことで知られているが、その一方で動植物をモチーフとして、幻想を帯びた作品を描いている」とある。自分的にはこの作品は、速水御舟の「炎舞」にインスパイアされたものかなと思った。

 昨年、高崎市タワー美術館で戦後に活躍した日本画家の作品を多数観た。その流れでこうやって新たな作品を目にすることで、自分の絵を観る眼差しもなんとなくというかすこしずつ広がってきたような気がする。次回、箱根に行くときには成川美術館に足を運んでみようと思う。